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日本は、7人に1人の子供が相対的貧困という明確な格差社会であり、上級国民としての男性優位社会という「まともではない」社会である。

それにしても、憤懣やるかたない。

昨日録画していた相対的貧困に関するドキュメンタリーを再度みたが、とにかく憤懣やるかたない。

子どもの7人に1人が相対的貧困。

相対的貧困とは「その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態」

それが7人に1人というのは衝撃的だ。

少し想像してみてほしい。

20名クラスの教室に、3人くらいが貧困だということ。

多くが、ひとり親、特に女性のひとりおや世帯だ。

3度の食事すらままならない。制服や教科書代すら困難。

母親はパートをいくつも掛け持ち。自分の食事を削り、睡眠を削ってでもなんとか子どものためと踏ん張っている。

■日本は、先進国中最悪の格差社会

話を前に、一言断っておきたい。

以下はあくまで一般論である。例えば「女性は○○」と表記したとしても、全員がそうだというわけではない。一般論的、総体的にみたとき、だ。従って、該当しないような価値観やケースがあるということは十分承知の上で、話をわかりやすくするために一般化していることをお断りしておきたい。

さて、1億総中流的なイメージが跋扈したときがあった。

バブル崩壊前の、ほんの一時期だ。

今はどうなっているか?

相対的貧困率は、先進国でも最高レベルに悪い。

資本主義は、金融資本主義と化し、余りにあまった金が投資先を求めて世界中をさまよっている。最高税率は引き下げられ、金持ちほど優遇される。

アベノミクスは、トリクルダウンという、社会の上層部が潤うことで、下部も自然に潤うことを想定していた。

それは見事に失敗している。

増えたのは、非正規雇用。

そして、子ども関連の予算も、先進国で最低レベルだ。

どうしてこうなるのか?

話は、実は簡単だ。

決定的に男性優位の格差社会だからだ。

上級国民という言葉がある。

実際はどうだろう。

上の上国民と上の中国民。

そして中級が少なく、下級国民が存在する格差社会だ。

男性は総合職として圧倒的に高い給与水準で、しかも雇用も守られる。女性は非正規や一般職として段違いに低い給与水準で、しかも雇用は不安定だ。

極端な表現をとれば、女性を「搾取される階級」に追い込んでいるのだ。

確かに今の若い世代、ベンチャー企業などをみれば男女に差はなくなりつつある。まったく差がないことも珍しくない。

しかし、総体的にみるとまだまだ男女格差は大きい。

総合職(男性中心)と一般職(女性中心)で区別する企業は、特に古株の大企業ではまだまだ存在している。

ところが、やっている仕事はほぼ変わらないことが多い。

それではまずいので総合職は管理者あるいは責任的な立場を形式的にとっているが、実態は「総合職も一般職も、大してやっていることは変わらないのに、段違いに給与格差が大きい」状態だ。

あるいは「非使用者」のように扱う企業もある。

一般職(女性)だけが、謎に制服を着させられ、お茶くみやらコピーをさせる。

しかし男女の仕事の能力や適性に差はあるのだろうか?

これは断言してもいいが、差はない。
差があるのは、個々人だ。性別ではない。

女性は「家庭にいるのが幸せだ」という謎の観念すら建前で、実態は、女性を「被使用者」的に、そして「搾取される階級」的に扱い、その分余計にあまったお金は、主に大企業の男性総合職が吸い上げている。

確かに極端な表現だ。

しかし、これを全面否定できるだろうか?

少々個人的感想が過ぎると思われるなら、『日本社会のしくみ』小熊英二(講談社学術新書)を読んでほしい。客観的に、そして冷静に事態を示してくれるはずだ。

■専業主婦というリスク

7人に1人の子供が貧困。

そして多くが、女性のひとり親世帯というのは、日本の格差構造が生み出している。

なぜそうなるのか?

簡単にいえば、女性はアクシデントに対して決定的に弱い立場だからだ。

貧困世帯の多くは、元専業主婦だ。

専業主婦だったときはよい。しかし、離婚やDV、配偶者の病気や死亡などアクシデントに見舞われると、たちまち日本社会の「下部構造」に放り込まれるのだ。

1つめのケースは、やむを得ず専業主婦を選択した場合である。

夫は深夜までの長時間残業。土日は疲れ切っていて寝てばかり。

こうした中、育児をするためには、妻が仕事を辞めて専業主婦にならざるを得ないケース。

そもそも男性は仕事をバリバリするもの。女性は家庭にいるのが幸せという謎の観念によって、こうした環境に追い込まれる。

2つめのケースは、リスクをあまり考えず専業主婦を選択してしまった場合だ。

前述の通り、日本社会は、女性に対して決定的に格差的だ。だからアクシデントがあると、たちまち下部構造に放り込まれるリスクがある。

よほどの資産家か実家の両親が頼れるとか何か資本的バックアップが強固でない限り、「普通の人が専業主婦でいること」はあまりにリスクが高い社会だ。

ところが、このリスクについてあまり深く考えず、専業主婦を選択してしまうケースだ。

そしてアクシデントにより下部構造へ放り込まれた瞬間、もう正規雇用の道は閉ざされていることに気がつく。「ひとり親で女性」というだけで面接すらいけない。

仕方なく、パート・アルバイト、契約社員など非正規につかざるを得ない。

誤解してはならないのは、こうした女性たちは、働く意志が弱いわけでも、仕事の能力が低いわけでもないということだ。

男性優位社会。女性より男性の方が仕事ができるという謎の観念。

こうした格差意識によって、雇用者や社会の側が、女性たちを「搾取される階級」に追い込んでいるのだ。

貧困層の就労率は先進国の中で高い水準にあるが、その給与水準は最低という奇天烈な数字が雄弁に示している。

国はよく「自立支援のための機会はある」という。確かに制度はある。しかし、パートをいくつも掛け持ちしている中、研修すら受ける時間がなかったり、例え受けたとしても、正規雇用として一顧だにされない社会構造があることを無視している。

ドキュメンタリーで、ひとり親の女性が、「自分が情けなくて、悔しさと不安だ」と涙をこぼしていた。

この女性が、ここまで自分を追い込む必要は、本当はどこにもない。

国や社会が格差社会を是としていることこそ「情けなく、悔しく、不安」というべきだ。

■日本の経済の閉塞感は、少子高齢化ではない

日本は、世界で唯一20年以上デフレが続く。

景気も悪く、さらにコロナが追い打ちをかける。

そして少子高齢化。

なんとなく長期的には日本経済は衰退していくのだろう。

そういうイメージが、無防備に受け入れられているが、実際はそうではない。

本当の意味で、労働価値や生産性に応じた給与にすれば、不当に高給を得ている男性は、ごろごろ出てくるだろう。逆に、段違いに給与を上げなくてはいけない女性は、たくさんでるだろう。

もし男女の差別がなく、女性も同じように職業を選択し、正当な給与を得、雇用を継続できるとどうなるか?

実にその経済効果は40兆円だという試算もある(『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』(文春新書)

日本は、成熟した経済社会として、低成長がやむを得ない、不可避な事象にあるのではない。

相変わらず「男性=仕事、女性=家庭」という一律的な観念を押しつけ、女性を非使用者階級とする格差構造を内包したまま、それを一向に改革しようとしていないからだ。

それは政治家だけではない。大企業を中心とする経営者も同じだ。いや、もっといえば、管理職にある男性の多くもそうだといってもよいかもしれない。

いわば政治経済の上部構造で不当に利益を得ている「男性たち」が、口先では「挑戦だ」「イノベーションだ」といいながら、実際には、何も改革していないことが、日本経済に閉塞感をもたらしている真の原因なのだ。

そして、その結果、3度の食事もままならず、辛そうにしている母親を気遣い、ご飯のおかわりを我慢して、さらには進学すらも諦めざるを得ない子どもが「7人に1人」もいるなど、どこをどうみても「まともな社会」だとは思えない。

憤懣やるかたない事態である。

本当に、憤懣やるかたない。







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