ビタミンCについて③
本日のテーマは、前回ビタミンCの食事摂取について説明しましたが、食事以外にも取り入れる方法があります。それは、「内服薬 サプリメント」「塗布剤」「点滴」などです。それぞれについて解説します。
本日はさらに、なぜ高濃度ビタミンC点滴なのかということにも触れつつ、ビタミンCってこんな効果も期待できるということを論文を紹介しつつ解説します。
内服薬・サプリメント
ビタミンC内服薬には、アスコルビン酸としてハイシー、シナールがあります。サプリメントのほとんどのマルチビタミンにはビタミンCが含まれています。また、ビタミンCは単独または他の栄養素と組み合わせたサプリメントとして入手することもできます。サプリメント中のビタミンCは、通常アスコルビン酸の形で含まれていますが、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、その他のアスコルビン酸無機塩、バイオフラボノイド配合アスコルビン酸など、その他の形態でのサプリメントもあります。どの形のビタミンCが、他と比べて優れているかについては研究で明らかになっていません。
塗布剤
ほんとうにいろいろな美容液が販売されています。でも本当に効果あるんでしょうか?
皮膚からの摂取について
ビタミンCは肌に塗布することでも効果を発揮します。実証研究として、ヒトの皮膚モデルを使用した実験ではありますが、紫外線を浴びる前後にビタミンCを肌に塗ることで、表皮にビタミンCが取り込まれ、紫外線照射による細胞障害が抑制されたという報告があります。(日本ビタミン学会「ビタミン」, 95(12), 2021, 532-534)
ビタミンC配合の美容液や化粧水がよく出ているのはこういうわけですね。
注射・点滴について
日本で厚生労働省の認可薬剤としてビタシミン、クリストファンというものがあります。いずれも一日に2mLあたり500mgのバイアルを2gを最大量として投与ということになっています。
高濃度ビタミンC点滴について
内服薬やサプリメントでは、だいたい1錠や1包につき最大でも1gです。
ビタミンCは、腎臓での排泄が主ですので、尿として排泄されます。腎機能の良好な方は、常にビタミンCが体外へ出ていくというイメージを持ってもらえれば、慢性的にビタミンCが不足しがちになることは予想できます。(実際は、濃度勾配などでそんなに急には低下しませんが)さらに、先日申し上げた効果を維持しようとすると高い濃度を維持する必要があります。そこで、高濃度ビタミンC点滴療法が米国カンザス州のDr.Hugh Riordan(1932-2005)/Riordan Clinicを中心に行われ、現在では世界中で広く行われています。血管の静脈内に大量の高濃度ビタミンCを点滴することにより、体の中から様々な効果を得る目的で行われる点滴治療の一種です。サプリメントなどの内服とは比べ物にならない高濃度なビタミンCが摂取でき、老化の原因とされる活性酸素を減少させ、高い抗酸化作用が期待できます。
当院では、基本的に美容・アンチエイジング目的で1回25gのビタミンCを点滴します。国産の点滴用ビタミンC製剤は品質保持のために防腐剤が添加されていますが、高濃度ビタミンCで使用する製剤は防腐剤の入っていないMylan社製ビタミンC製剤を使用しています。新鮮で最高品質の状態で工場から厳重な保冷コンテナで空輸しています。
ビタミンC点滴での期待できる効果として
メラニン合成抑制 :シミ・肝斑の改善、美白効果
ビタミンCにはチロシナーゼという酵素の働きを阻害し、メラニン(シミ・そばかすの原因)の沈着を防ぐ作用があります
Arch Pharm Res 2011;34(5):811-820
J Periodontol 2009;80(2):317-323
コラーゲン合成促進 : シワ・たるみの改善
ビタミンCには、肌の張りを維持するコラーゲンの生成を促す作用があります。これにはシワを改善させる効果があり、抗酸化作用で活性酸素を分解することでニキビの炎症を抑える効果も報告されています。
抗アレルギー作用 : アトピー性皮膚炎の改善、アレルギー性鼻炎の改善
アレルギー発症には「ヒスタミン」という物質が関わっていることが知られています。ビタミンCには直接ヒスタミン分子構造を破壊することにより血中ヒスタミン濃度を減少させ、鼻炎や花粉症などに代表されるアレルギー症状を軽減する作用があります。
Subcell Biochem 1996;25:189-213
ビタミンCの持つ抗ヒスタミン作用により、アレルギー疾患改善効果が期待されています。ビタミンC摂取により、5000人近くにのぼる子供のアレルギー性鼻炎が改善したという報告がなされています
Allergy Asthma Immunol Res 2013;5:81-87
コラーゲン合成促進 : 骨折・骨粗しょう症予防効果
ビタミンCには酸化ストレスを軽減することによる骨量減少作用に加え、破骨細胞(骨を壊す細胞)と骨芽細胞(骨を造る細胞)のバランス調整、コラーゲン合成、カルシウムの吸収を促進し、骨折予防作用があります
また、1万人を対象にした大規模研究では、ビタミンC摂取量が少ないグループに比べて、多いグループでは股関節骨折リスクが27%と低いことが分かりました。ビタミンCを1日50mg多く摂取すると、股関節骨折リスクが5%も低下するという報告です。
Osteoporosis International 2018;29(1):79-87
免疫機能強化 : 風邪治療、風邪予防
風邪とビタミンCの研究は歴史が古く、1970年代ライナス・ポーリングによって初めて、ビタミンCが風邪の治療や予防に有用である可能性について報告がなされました。
Proc Natl Acad Sci USA 1971;68:2678-2681
研究は今も続いており、最近では、大量のビタミンCを摂取することで、風邪による症状(発熱やせき)を短縮できるという報告が発表されました。
Nutrients 2017;9(4):339
ビタミンCには細菌やウイルス排除効果のある「リンパ球」、免疫系および炎症の調節などの働きをする「インターフェロン」等を活性化し、免疫力を高める作用があります
Immune Network 2013;13(2):70-74
ストレス抑制効果・自律神経安定効果:疲労回復、ストレス解消、快眠作用、精神安定作用(抗イライラ感)
ビタミンCは脳内ホルモンを調整します。これは、自律神経を調節する作用があります。
Free Radical Biology and Medicine 2009;46(6):719-730
ビタミンC摂取による自律神経調整作用(ストレス軽減作用含めて)が多数報告されています。また、最近になってビタミンCがうつ病予防にも有効であるといった論文が報告されました。
Nutrition Journal 2013;12:31
抗ガン作用 : ガン予防
胆管がんになった川島なお美さんがしていたことを思い出し、実際論文を検証してビタミンCには抗がん作用があることを医師になってから知りました。また、アメリカのカンザス州立大医療センターの研究によると、ビタミンCを高濃度で体内に入れた患者の75%以上に癌縮小効果を認めたとの報告もあります。
なぜ抗がん作用があるのかというと簡単にいいますと
ビタミンC点滴と断糖療法でガンが治る仕組みは
①糖質を限りなくカットし、ガン細胞を飢餓状態にする
②そこに高濃度のビタミンCを点滴するとビタミンCとブドウ糖の化学構造がそっくりな為、ガン細胞がビタミンCを積極的に取り込む
③ビタミンCから発生するアスコルビン酸ラジカルがガンを攻撃
④ガンが消える
というメカニズム。糖質を限りなくカットするというのがなかなか厳しいです。
最近この癌特異的障害作用のより詳しいメカニズムが権威ある雑誌「Science」や「Cancer Cell」に掲載され、医学界で注目が集まっています。
Science 2015;350:1391-1396
Cancer Cell 2017;31(4):487-500
当クリニックの院長に膵癌に対する術前放射線・化学療法とともにビタミンC点滴を投与していました。データとして腫瘍マーカーが放射線・化学療法だけでは低下しなかったのものがビタミンC点滴を始めた1か月後に低下を認めました。(放射線・化学療法の効果が出てきたというのも考えられますが)手術後もビタミンC点滴を再発予防の一環として継続しています。
だいぶ話が長くなってしまいました。ビタミンCはアンチエイジングや美容以外にも、病気予防や老化に伴う変化の予防など、様々な医学的効果が報告されており、再び注目が集まっています。一方で、日本人のビタミンC平均摂取量は推奨値に到達していません。心当たりのある人は、まず、食生活を改善する・サプリメントで補うなどして、必要摂取量の摂取を目指しましょう。
今日はこれで。
では、また。