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NIKEの失速に見るD2Cの難しさ

はじめに
 NIKEといえばエアジョーダンシリーズなどの大人気シリーズとコロナ禍に重なって高評価だったD2C戦略で、小売デジタル戦略の雄といったイメージだったのですが、このところその評価が急落しています。時価総額はこの3年でほぼ半減、先月にはジョン・ドナホーCEOが電撃退任しました。

何が原因でここまで評価が急落したのか考えます。

D2C戦略の怖さ
 NIKEの戦略的な失敗の一つは、極端な言い方をしてしまえばD2C(Direct to Consumer)戦略の強化です。2017年以降、小売店を通さずに公式ECサイトや直営店で直接販売する方針に転換しました。これは、小売店での自社製品の安売り防止効果の他、顧客と正にダイレクトにつながる効果、コアなファンとより強くつながる効果などを狙った施策だったわけですし、小売店を通さないことで顧客にNIKEの伝えたいイメージを直接伝える効果もあったはずなのですが、時間が経つにつれデメリットが顕在化してきました。

 小売店の店頭からNIKEのシューズが消えたことで、一般消費者の目に触れる機会が激減。その間に他ブランドが成長し、消費者の選択肢がそちらに移ってしまうという逆効果が生まれてしまったのです。また、スニーカーブームの沈静化や、それに伴う投機的な需要の減少も影響しています。

 勿論、コロナ禍が終わり実店舗に消費者が戻ったことも今回の施策には逆風となりました。

現在のNIKEのシフトチェンジ
 NIKEは現在、製品ポートフォリオのシフトチェンジを図っています。特に人気ブランドである「エアフォースワン」「エアジョーダン」「ダンク」の供給を減らすことで、希少価値を再び高めようとしていますが、図らずもこれがD2Cチャネルでの売上減少を引き起こし、特にEコマースでは20%の売上減となっています。

 NIKEは今後、スポーツに特化した製品に再注力し、特にランニングシューズの強化を図るようです。技術革新により新製品の売上は増加していますが、依然として他の製品の落ち込みを補うまでには至っていません。次期CEOとしてエリオット・ヒル氏が就任予定のようですが、戦略の転換が目に見えるまではまだ時間がかかるでしょう。投機筋も今後数年は低迷から抜け出せないだろうと読んでいるようです。

まとめ
 D2Cはデジタルの進化と共によりダイレクトに顧客と繋がり、多くのビジネスがこの分野で成功していますが、そこには消費者をファンにする施策が欠かせません。

 メーカーと消費者は「売る、買う」といった関係からより近づき、「共に愛着を持てる製品を作りあげる」関係性に変わりつつあると思います。それはインフルエンサーやアンバサダーといった著名人によるものではなく、消費者一人一人に対する地道なアプローチによってなされるものでしょう。NIKEには熱狂的なファンが沢山ついていますが、小売店でNIKEを手にとるような一般消費者をもっと取り込む必要がありそうです。

 今後NIKEが消費者にどうアプローチし、効果を上げていくか。注目したいと思います。

オマケ
 今回のイラスト、気に入ってます。GPT4oが一発で描いてくれました!

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