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【本】2020年8月のまとめ
暑すぎる夏は、クーラーのきいた部屋で読書をするのが至福ですね。
さて、今月の本のまとめです。
1.「今夜すべてのバーで」中島らも
アル中の男が入院したことをきっかけに自身の生き方を見つめなおす物語。フィクションですが、アル中で入院ってのはらもさんの体験談。らもさんってきっと絶対優しい人だったんだろうなぁとこの作品を読んでじんわりと感じました。痺れるセリフがちりばめられている本でした。
2.「ダイナー」平山夢明
殺し屋しか食べに来ないダイナーを舞台に、元天才殺し屋で料理長のボンベロとそこで働くことになった一般人オオバカナコ、そして個性的な殺し屋たちが繰り広げるサバイバル系エンタメ小説。けっこう楽しめたので映画も観ました。映画は・・・・・蜷川実花の自己主張が強かったですね、映像美がウリという感じがしました。そして小説とキャラクターのイメージが合っていなかったです。さすがに子供の殺し屋役を大人が演じるのは違和感がありました。遠近法みたいな撮り方はギャグかと思いました。そして小説のグロさが映画には無かったです。そこがちょっと寂しかったです。
3.「強制不妊-旧優生保護法を問う-」毎日新聞取材班
1948年から1996年まで日本に存在していた優生保護法。その時代日本では女性の強制不妊が合法的に行われていた。障害を持った女性などは、嘘の理由で病院に連れていかれ、知らぬ間に不妊にさせられた。子供を産めない体になるって、どんなに悲しいことだろう。
4.「永久も半ばを過ぎて」中島らも
地味な写植者と詐欺師がタッグを組んで、幽霊が書いたという胡散臭い小説で一攫千金を狙う!ポップなストーリーと、らもさんならではの胸にぐっとくるセリフがもりだくさんで大満足。ちょっと長いけど、ぐっときたところ引用します。
「孤独というのは妄想だ。孤独という言葉を知ってから人は孤独になったんだ。同じように、幸福という言葉を知って初めて人間は不幸になったのだ。人は自分の心に名前がないことに耐えられないのだ。そして、孤独や不幸の看板に縋りつく。私はそんなに簡単なのはご免だ。不定型のまま、こんとんとして、名をつけられずにいたい。私の心に名前をつけないでほしい。どうしてもというなら、私には一万語くらいの名前が必要だ。」
5.「となりの難民」織田朝日
入国管理局の無慈悲な実態とそれに抵抗する難民たちの残酷な事実を綴る。紛争や迫害のため外国から日本に逃れてくる難民たちは、日本で安全に暮らすために難民申請をする必要がある。しかし、入国管理局が難民と認定するのは年間約1万人の申請に対して40人程度。認められなかった人々は収容施設に入れられ刑務所のような生活を送り、いつ出てこれるかすらも分からない。新疆ウイグル自治区みたいなことがここ日本で行われているという衝撃。ショックだ。
6.「日本で生きるクルド人」鴇沢 哲雄
難民申請者のなかでも多いのがトルコ人。クルド人はトルコでの迫害を受けて日本へやってくるが、申請が認められず収容施設で死に至る人もいる。入国管理局を統括するのが法務省であるが、法務省は「テロ対策」という名目でトルコと協力的な姿勢を見せなければならないという役割も担っている。そのため法務省はトルコに迫害が存在していることをみとめず、難民認定もしない。いつでも犠牲になるのは弱者だ。
7.「人は、なぜ他人を許せないのか」中野信子
ネットなどで他人を中傷する人にはぜひ読んでいただきたいと同時に、芸能人の不倫報道や不祥事などを見て腹がたってしまう人も。人はどうして赤の他人に対してまで自分の「正義」を押し付けたくなってしまうのだろうか。
人を攻撃することで快楽を得るという人間の性は、宗教対立や政治思想の対立、人種差別などすべての元凶だと思った。
8.「エディプスの恋人」筒井康隆
人の心が読める女の子七瀬と、超自然的な力を操る男のちょっと変わった恋愛もの、と思いきや中盤からまさかのホラーへ。すごく違和感のある世界観で頭の処理がついていかず、眠くなってしまいました。どうやら三部作の最後の本であったようで、あまり物語に入り込めませんでした・・・。
9.「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」
英題は「Why Is Sex Fun」です。興味そそられません?
でも、内容は人間の性の不思議さを紐解いていくような内容でした。Funというか邦題のWeird(奇妙な)のほうが合っているように思います。なぜ人間の性は周囲から隠されているのか、なぜ排卵期は隠されているのか、なぜ男性は授乳しないのか、など当たり前だと思って考えもしないようなことについて他の生物の性と比較しながら検証しています。
10.「掏摸」中村文則
天才スリ師がとある悪の組織に巻き込まれて命を狙われるというスリリングな作品。終始じめっとした暗い世界観ですが、私はそこが好きです。中村文則はもっと読んでみたい作家のひとりです。
まとめ
今月を一言で表すなら、中島らも! でしょう。
先月初めて彼の作品を読んでから一気にファンになってしまいました。
アマゾンで中島らも作品を大人買いしました。他の本と並行してちまちま読み進めています。
孤独を感じたときや寂しいときなどに読むと、元気をもらえます。このままの自分でいいんだ、と思えます。本当に不思議なパワーを秘めた作家です。