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謎多き芸人の小説を読んでみた。

ジャルジャル福徳の本「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」は、ミステリアス芸人の新たな一面を惜しみなく披露してくれた。

私は芸人さんの本を読むのが好きだ。オードリーの若林さんや又吉直樹さんの著書はもちろんのこと、最近だとかまいたちの山内さんやAマッソ加納さん、ハライチ岩井さんの本なども読んだ。普段から面白いことを考えて言語化している人たちだから、本が面白くないはずがない。

彼らはTVでもよく見かける売れっ子芸人たちで、人となりもなんとなく伝わってくるところがある。若林さんは人見知りで、岩井さんは根暗など。だから彼らの本を読むときは、人見知りエピソードや根暗エピソードなどをなんとなく期待してしまう。

そこへ来ると、ジャルジャルってのは本当に謎多き芸人で、何を考えているのか全く分からない。彼らはコント師で、コント師ってのは人間性が表に出にくい。(って、サンドウィッチマンが言っていたような気がする・・・。)知名度も人気もトップクラスの芸人だけど、ネタ番組以外のバラエティー番組で見かけることはあまりない。毎日更新しているYouTubeはほぼコントで、「THE職人」と言う感じで、彼らの素の部分ってのはなかなか見れない。

そういった理由から、この本を読んで少しでも福徳の頭の中をのぞくことが出来るのではないかと期待した。

読んでみて、福徳が陰キャだったということを知れたのが一番の収穫だ。私は福徳の顔や雰囲気が好きで、あの感じなら絶対にモテそうだと思っていたし、イケイケな学生生活を送っていても不思議ではなかった。

でもこの小説の主人公、大学生の「僕」はそれとは正反対の学生生活を送っている。群れて行動する学生に対して嫌悪感を示し、自分はユニークな発想を持っていると尖りつつ、友達がいない奴だと思われることを最も恐れる異常な自意識の強さ。きっとこの主人公には福徳自身の姿が投影されているはずだ。イケイケなイメージだった福徳がこれに似通った学生時代を過ごしてきたと思うととても意外性があったが、「な~んだ、こっちの世界の人間だったのか~」と勝手に仲間意識を覚えてしまった。

良いなぁと思ったのは、主人公の唯一の友人に対して、「きっと女性経験がなさそうだからと気を使って女の子の話題はなんとなく避ける」という気を遣うところ。

私は福徳がこのような考え方を持っていることに驚いた。たぶんある程度モテてきた人ならそういう気の遣い方は出来ないのではないかと思う。なんなら女性関係の多さでマウント取ってきたりしそうだ。私も彼氏彼女の類の話はとにかく苦手で絶対に自分からは振らないし、振られてもなんとか別の話題にしようと必死に頭を回転させる。だから、そういう話題が苦手な人が居るっていうことを、福徳が知っていることがとても嬉しかった。

やっぱり、普段素を見せない人の本を読むのはドキドキする。

本当に裸を見ているような感覚で、なんだか少し恥ずかしくもある。ベールに包まれている芸人が書いた本としては、脳内をかなりさらけ出していると思う。一言一言が「ああ、こんな言葉使うんだなぁ」ってトキめいたし、犬のフリして好きな娘に近づくとかおもしろな部分もあった。孤独感や自意識などなかなかイタい感じの主人公で、普段の福徳のスマートな感じとはかけ離れていたギャップも含め、楽しめた。ネタなどからは微塵も感じない福徳の新たな一面が垣間見れた気がして嬉しかった。

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