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責任を押し付け合う組織に明日はない

 会社で何か問題が発生した際に、どの部門・どの担当者の責任なのかを追及するケースは多々あります。その問題の原因を追究すること自体は正しいのですが、犯人探しと吊し上げが目的となってしまうと組織の雰囲気が途端に悪化してしまいます。

 このような「責任の押し付け合いが蔓延る組織」は発展しないと断言できます。メンバーのモチベーション低下に繋がるだけでなく、組織の生産性低下や崩壊にさえ繋がります。

責任追及が組織の士気を悪化させる

 以下の例を通じて説明します。 

 例えば二人で荷物を運ぶ仕事があるとします。

 もし運ぶ途中に荷物に傷がついた場合、その傷がついた方を持った人の責任にすることにしました。

 ですがある時、荷物を持っている途中に片方の人がバランスを崩してもう一方の側に傷をつけてしまいました。
 これはさすがにバランス崩した方の責任でしょう、となって例外ルールが生まれます。

 さらに別の日に「後ろ向きで運ぶとどうしても荷物への注意が散漫になってしまう。前を向いている方が傷をつけないよう誘導する責任があるはずだ」と一方が主張し、後ろ向きで運んだ際に付いた傷は前を向いている人も一部責任を負うこととしました。

 このようなやりとりを重ねた結果、傷の責任元を決める膨大なルールが出来上がり、荷物に傷が付く度に犯人特定と責任の追及が行われるようになってしまいました。この間、荷物の運搬はストップしてしまうため生産性がどんどん悪化していきました。彼らは荷物に傷をつけること以上に責任を負うことを恐れて仕事をするようになり、雰囲気も悪くなってしまいました。

 この例のようなことが様々な会社や組織で起こっています。では彼らの何がいけなかったのでしょう。

組織の目的を忘れてはいけない

 それは「組織全体の目的を忘れて目先の問題にこだわりすぎた」ことと「不必要な責任追及をしたこと」です。

 先ほどの例で言うと、彼らの目的は「荷物を運ぶ」ことです。にも関わらず、荷物を運ぶことを蔑ろにして「荷物に傷を付けない」ことに過剰に拘ってしまっています。多少の傷であれば問題ないかもしれない。あるいは傷を付けてしまったとしても直すなり保険に入って補償してもらう等様々な対処方法があり、「傷を付けない」ことが必ずしも必須ではありません。物事に優先順位をつけることを忘れてはいけません。

 次に、組織内の責任追及は良い方向に動くことはほとんどありません。とある部門に責任転嫁したところで何も解決しませんし、その部門単独で再発防止策を立てたとしても効果は限定的です。組織全体が問題を起こした当事者として課題解決に取り組まないと、本質的な問題解決になりません。

 にも関わらず、この部門間での責任転嫁は多くの組織がやってしまいます。特に会社という組織は部門や社員を評価しなければならず、責任区分を明確にすることによって部門/社員間で比較しやすくなるからです。

 確かに適切な評価を下して相応の報酬を社員に渡すことは重要ですが、そのために組織の生産性が下がってしまえば本末転倒です。責任の押し付け合いを招くような人事評価制度を見直し、組織の目的と部門/社員の目的の方向性が一致するような観点で再構築すべきです。

まとめ

 以上のように、責任を内部で押し付け合う組織は本来の目的を蔑ろにして、低生産性に苦しんでじわじわと組織の崩壊へ進んでいきます。そのような組織にしないようにするために、まずは全部門、全メンバーに当事者意識を持たせて組織の目的を共有することが第一です。そのような風土作りを進めるのも大事ですし、各メンバーの意識改革も併せて進める必要があります。

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