新潟アルビレックスランニングクラブについて
■はじめに
2020年で新潟アルビレックスランニングクラブ(以下、新潟アルビレクスRC)はクラブ設立から16年目に入ります。当初は「成り立つわけがない」と言われた陸上競技クラブが黒字経営を続け、オリンピック選手をはじめ国内トップ選手を輩出し、企業スポーツが主流の「実業団」の中で「全日本実業団陸上競技選手権 団体総合優勝」や「全日本実業団女子駅伝出場(4年連続)」のエピソードについては、ほとんど知られていません。
いままでクラブ経営については、情報発信をして参りませんでしたが、今日の厳しい社会情勢の中、微力ながら、みなさんのスポーツビジネスの一助になればとの想いで書かせて頂きます。
■クラブ設立について
新潟アルビレックスRCは2005年4月に設立された陸上競技のクラブです。同時に日本で唯一の陸上競技クラブ運営会社として「株式会社新潟アルビレックスランニングクラブ」も設立されました。当初はサッカーJリーグの「アルビレックス新潟」が陸上競技クラブを設立した。と間違われましたが、アルビレックスの場合、サッカー、バスケットをはじめ各競技ごとに全て別法人で運営しております。https://www.nsg.gr.jp/blog/machi/
クラブ名に「アルビレックス」の称号を使わせてもらうにあたり、当時、池田弘さん(現NSGグループ会長/アルビレックス新潟会長)からは「スポーツを通じて地域を元気にする」理念と「クラブが地域にとってかけがえのない組織になる」地域密着型をきちんと実践するようご指導賜りました。
参考資料(高知県)
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/141801/files/2017110100160/file_20171113155941_1.pdf
■株式会社新潟アルビレックスランニングクラブについて
上記のとおり2005年4月に日本で初めて陸上クラブの運営会社(資本金3,000万円)として設立されました。ただクラブ経営において企業スポーツ(実業団)しか存在しない業界なので、多くの方々には「そんな会社が本当に成り立つのか?」と揶揄されてのスタートでした。
実際、「日本で初めて」という響きは良いものの、逆にいうと「真似するモデルがない」という現実にすぐ直面しました。
■「理想に憧れて、現実に苦しむ」
会社を設立後、運営モデルをアルビレックス新潟(サッカー)を参考に進めました。具体的には個人のサポーター(後援会)の拡大とスポンサーの獲得です。
当時、サッカーのアルビレックス新潟は後援会は個人(1万円)の方が1万人以上存在し、年間1億円以上の支援をクラブにしていました。そこでランニングクラブでも事業計画をクラブ員(年間1万円)を初年度1,000名→2年目3,000名→3年目5,000名で計画いたしました。
ところが家族や知人、関係者にお願いしてまわり、何とか入会してもらったのが300名程度で「お金を払ってクラブを応援しよう」と純粋に入会してくれた方は、ほぼ皆無でした。
スポンサーの獲得においてはクラブの露出、認知度がないのに加え、陸上競技のユニホームへの表記はルール上、1社のみ(今年から変更になりました。https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/rule/2020/p423_428.pdf)でチーム名「新潟アルビレックスRC」を入れてしまうとスポンサー名は入れない状態でした。
いまだから言えるのですが、実は株式会社新潟アルビレックスランニングクラブの第1期決算は売上高17,347千円の経常利益▲9,225千円(初公開)という先行きが全く見えない不安のスタートでした。その後、2期目、3期目も赤字が続き、倒産も視野に入りかけた頃には否が応でも考え方の方向転換を余儀なくされました。※現在は売上高4億円で経営しております。
・そもそも国内の陸上競技は
①リーグ組織がない。(マーケティングをするパートナーがいない)
②興行が成立する競技会がほぼない。(入場料、スポンサー、注目度など)
③クラブが興行をする文化がない。(企業スポーツなのでクラブそのものが稼ぐ必要がない)
④クラブを物心両面で応援してくれるスポンサー、サポーター(ファン)が生まれにくい。
⑤クラブの価値はインナー向けで保有企業が判断する
などの現状の中、「スポーツの価値を高める」上で、企業スポーツ(実業団)の文化(考え方)が主流の陸上競技界では、成り立つかもわからない陸上クラブの戯れ言に耳を傾けてくれる人は当然いるわけもなく、私がまずやるべきことは「日本陸上界の仕組みを変える」こと(理想)ではなく、「日本で初めての陸上クラブの運営会社を成り立たせる」こと(現実)に注力することになりました。
■実業団というルールの中で
クラブ設立前から頭を悩ませたのが「運営モデル」で、上記にも記したように大きなネックになったのが、トップ選手が属する団体は「日本実業団連合(実業団)」であり、「大企業が選手を社員としてチームを保有する」のが常識、それ以外はありえない。という老舗チームの団体で、「法人格を有していないクラブチームの登録は不可」とのことで、我々のようなニュータイプに合わせてルール改正を検討してくれるような団体ではございませんでした。笑(現在は日本実業団連合の理事をさせて頂いております。)
その中で「実業団のルールは守りながらも、1企業でクラブを支えるのではなく地域(企業、行政、個人など)に支えられながら陸上クラブ経営をするモデル」を構築する必要があり、クリアしなければならない課題がいくつもありました。
その中でもいくつか例を挙げると
①登録名(チーム名)=会社名ではならない
→資本金3000万円で株式会社を設立
会社名を「株式会社新潟アルビレックスランニングクラブ」にする。
②所属の選手は登録チームと雇用関係がなければいけない
→トップ選手はすべて弊社で雇用し、競技にのみ専念するプロ選手と9時から14時までは地元企業に出向もしくは業務委託で勤務しながら競技を続けるセミプロ選手のカテゴリーを設ける。
【運営モデル】
このモデルだと既存の実業団ルールは遵守しながらも、地元企業もスポンサーとは別の形でクラブを支援してもらえるだけではなく、選手も社会人としてのキャリアも積めるので双方にとってメリットのある形になりました。
(こんなことをする会社が現れると思っていなかった実業団には説明して理解してもらうまでに時間を結構要しました。)
■クラブ経営を通じて学んだこと
必ず世の中には「自分たちの範疇ではどうにもならないこと(理想)」と「自分たちがやらなければならないこと(現実)」が存在すると思います。
今回「理想に憧れて、現実に苦しむ」という表現を使わせてもらいましたが、理想を現実にするためにも、まずはいま置かれているクラブの現状を把握し、いまやるべき事を取り組んでいくことが大事だと考えています。
新型ウィルスの影響により「スポーツどころではない」この状況がまさに「自分たちの範疇ではどうにもならないこと」であり、その中で「いまクラブが地域社会の一員としてできること」「いまクラブがやるべきこと」を実践する2020年シーズンになりました。
アル美健康プロジェクト紹介
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000056780.html
みなさんと安心安全に楽しくスポーツに関われる世界を取り戻せるよう、この困難をともに乗り越えましょう!
次回は、陸上競技のクラブ運営会社がなぜ成功したのかを具体的な事例と数字を合わせて紹介していきたいと思います。では!
新潟アルビレックスランニングクラブ
代表取締役社長 大野 公彦
https://www.albirex-rc.com
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