待望だった
#名前の由来 というお題。
私の本名はキラキラネームでも古風でもない。イマドキじゃないけど古くもない。
ただ由来というか決まるまでの過程がとっちらかってる。
私は1月生まれだ。予定日より数日早いが1月中なのには変わり無い。
妊娠がわかり、男だか女だかもつかない、そもそもヒトの姿をする前の私になるソレを母は睦月と呼んでいたらしい。まぁ、理由は至って単純。十月十日後は年を越しての1月なのだから。
というより母はそのまま睦月でも良かったらしい。睦月の由来は親族やらなんやらが新年で集まる「むつびつき」から来てるらしい。まぁなんの縁か糸か絆か。とにかく結ばれるならおめでたいとか。
妊娠が分かり、父に報告したところ父は名前なんかより子供ができたことを喜んでいた。実にありがたいことだ。
そんな睦月(仮)は母上の胎内で大きくなり、俗に言う安定期に入った。
親戚たちにはそこで報告し、名付け合戦が始まるのであった。
私の両親は長男&長女同士なのだ。特に長男。つまり父方が特に気合いが入っていた。なぜなら男がうちの父しか居ない女系家族なのだ。うちの家を、墓を、土地の相続を。と意気込んでいた。だが、母の家系も女系という超絶女系血筋。男を願う父方と孫ならなんでも良い母方。「お互いの実家がとてつもなく離れてて良かった」と20年たっても母がたまにぼやく位だから相当なのだろう。父方の親戚は揃いも揃ってこれでもかと男の子の名前を候補にあげ、母方は「夫婦で決めなさい」と。
両親も名付けには悩んだらしい。字数や音の組み合わせではなく、もし女の子だったとき、親戚が揉めないようにするために。母がかかってた産婦人科の先生は性別を教えてくれず、更に悩みの種となっていたらしい。
結局、性別も分からないし男の子でも女の子でも使える名前にしよう。漢字はあとで決めてとりあえず読み(音)だけでも決めようとなりどちらの性別にも居る名前で落ち着いたのだ。それが年末のことだった。
十月十日を前にして破水。からのスピード出産。
「元気なお子さんですよー」とはならなかったらしい。へその緒が首に絡んでいた。あげく逆子。産まれて泣けない私。ダメだったと母が先に泣いてしまった。取り上げてくれた先生がへその緒を切ってくれたのでもれなく産声をあげた。
一緒に同居する父の母。つまり祖母は新生児室のガラス越しに私を見て「無事に産まれて良かったじゃない」と。あっさり。破水したり首に絡んだへその緒なんかで性別なんかどうでもよくなったらしい。そりゃそうだ。
「え?女の子なの?」
父方の親戚は女の子だということにひどくがっかりし、数年後に法事で爆弾発言をしてくれるのであった。
漢字は読みに合わせて名付け辞典などで縁起がいいとか、画数が良いとかので決まり役所に出生届が出されたのであった。
だから由来はあまり無い。
強いて言えば男でも女でも通用する名前。そこに縁起と字画が宜しい漢字を読みに合わせて当てた。というところだろう
小学生の時に由来を調べて発表する授業があった。由来がないから困ったのは言うまでもない。仕方なく漢字の意味や縁起の良いことを話しておいた気がする。たぶん。とうろ覚えなのはたぶん楽しいとかの記憶じゃないから
私が産まれてから四年後。第二子となる妹が産まれた。母は「女系だから男なんか無理よ」と端から女の子らしい名前を考えていたそうだ。
「産まれてしまえば男でも女でも良いのよ」