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コロナ禍のイタリア留学 《8》 イタリアのおいしい食材と、心の豊かさ
イタリアの野菜・果物
イタリアはとにかく野菜がおいしい。
日本のより固くて歯ごたえがあり、水分が少ない。
その分、味と香りが濃くてしっかり主張するので野菜だけでごちそうになる。
最初は調理するときも固くて切りにくいし火もなかなか通らないので戸惑ったこともあったが、そのおいしさを知ってからは日本にいるときより断然たくさん野菜を食べるようになった。
私がとくに好きでよく食べたのはズッキーニと、ラペというアブラナ科の葉物であった。
ズッキーニはすごい大きくて、角切りをパスタに入れても千切りをオムレツに入れても歯応えを楽しめる。ラペは春先に出回る野菜で、大根やカブや菜の花の茎葉と同じような感じだがもっと緑の味が濃くてパリパリしてて、食べると元気になる感じがする。
実際の調理は、自炊編でお伝えするのでお楽しみに!
また果物もハッとするほどおいしくて、夏にはメロンやスイカ、あんずなど、いろんな種類が並ぶ。これまた味が濃くておいしい。最近の日本の果物はただ甘いだけになってしまったが、ちゃんとそれぞれの苦味や青臭さなどの香りが感じられて、「あ、果物からビタミンが摂れるってこういうことか!」と感動した。
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パスタの国の小麦粉
イタリアの小麦のおいしさについてはもう、言うまでもない。
香りもグルテンの強さも日本のマイルドなそれとは全然違って、しっかり味がある。野菜と同じように、そもそも粉に含まれている水分が少ないように感じた。
日本の小麦はもともとパンを作るのには適さなかったためうどんになったという話を聞いたことがあるが、風土の違いでこんなにも変わるんだと驚いた。
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ちなみに、日本で買える海外の輸入小麦は「ポストハーベスト」といって輸出する際に殺菌剤や防カビ剤を撒くので、健康に悪いのはもちろん、もはや本来の味ではないと思う。やはりその土地のものは現地で食べるのが正解である。
しかしパンに関しては、イタリアのそれはみっちりずっしりと重く、あまり私の好みには合わなかった。
フランスのパン屋さんに並んでいるパリパリのクロワッサンやペストリーはない。食パンも売っていないので、イギリスのモーニングで欠かせないカリカリの薄焼きトーストもできない。
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イタリアの小麦はやはりパスタが一番だと思う。
もはやパスタになるために生まれてきた小麦と言っても過言ではない。
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乳製品もミルク感たっぷり
さらにイタリアは、乳製品もすごくおいしい。これはヨーロッパの国でだいたい共通していることだろう。
私は乳糖不耐性があるわけではないが、それでも乳製品を頻繁に摂取していると頬っぺがかゆくなったり便秘になる。イタリアの濃い牛乳だとその症状が多めに出るためあまり多くは摂れないのだが、それでもおいしいのでよくカフェラテにして飲んでいた。
牛乳は味も甘みも濃く、日本の水っぽいのを飲み慣れているとハッとする。
ヨーグルトやチーズも味や舌触りが濃く、
「あ、牧草を食べて育った牛の乳からできているんだ!」
と、青々とした草の香りをかすかに感じることもある。
私の嗅覚が敏感ということもあるが、日本ではそんな代物に出会う機会が少ないと思う。
ちなみに私はそこまでチーズ好きというわけではないし、匂いのきついのはむしろ全然ダメなのだが、羊のミルクからできたペコリーノチーズだけは大好きである。臭みもそんなになくミルク感と塩気がちょうど良く食べやすいので、日本人の口にも合うと思う。
固形のももちろん好きでよく食べたし、驚いたのは粉チーズの種類にペコリーノがあったことだ。Frrari社の粉チーズは大体どのスーパーでも置いていて、CMでこのペコリーノバージョンがあるのを知り、すぐ買いに行った。
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ところでペコリーノチーズと言えば、トスカーナのピエンツァという村がその産地で有名である。
2018年のイタリア旅行で訪れた時の写真を少し。
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これぞトスカーナ!という丘陵風景や、村の小さな教会もすごく可愛かったので、ご興味のある方はぜひ訪れてみることをおすすめする。
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鮮魚はかなり微妙…
ここまでイタリア食材のおいしさばかりお伝えしてきたが、スーパーで売られている精肉は極めて微妙であるとしか言えない。
とくに鮮魚は全くおすすめしない。
まずお肉は、あまり新鮮でなくて家に帰って開けてみると乳酸菌のすっぱい匂い(発酵している証拠)がすることもしばしばで、匂いに耐えられず全部捨てたこともあった。
日本のように家畜に抗生物質をたくさん与えないからというのもあるだろうし、在庫を時間でキッチリ管理していないのかもしれない。ある程度の回転率の高いスーパーだと鮮度としてはまぁいけるのだが、それでも「おいしいお肉!」と思ったことは一度もなかった。
WAGYUとして今や世界でも評価されているが、たしかに日本のお肉はスーパーで買えるレベルのものでも味が良いのだということを改めて実感した。
また、薄切りやひき肉など加工の仕方もイタリアというか海外のは豪快すぎるので、調理するときに自分でさらに細かく切ったりしなくてはならない。
そして魚はもう、日本のそれとは鮮度が全然違ってトレーの底には血の混じった水がたくさん溜まっていることもしばしば。にも関わらず少量ですごく高価だ。
一見新鮮そうに見えても帰って開けるとすごく生臭いこともあったので、もう怖くて買えなくなってしまった。
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サーモンの切身でおいしそうなのがたまにあると買ってソテーにすることもあったが、魚介を調理したいときは基本的に冷凍食品を買っていた。
味付けした白身魚の切身の冷凍がけっこうたくさん売られていて、イタリア人の間でもポピュラーなようだった。あとはイカタコ貝えびなどのシーフードミックスも意外とおいしい。
たぶんスーパーでなくお魚屋さんに行けばもっと普通に良いものが買えたのだろうが、少量から売ってくれるのかも分からなかったし、魚が肉に比べてけっこう高価なことには変わりないので、とうとう試さずに終わってしまった。
とくに刺身や寿司を食べる習慣のある私たち日本人にとっては当たり前になってしまっているが、新鮮でおいしい生魚がスーパーで買えるありがたさに改めて気付いた。
お菓子はお砂糖たっぷり
甘い物が大好きなイタリア人、お菓子ももちろん豊富にある。
原材料は基本的にナチュラルで、少なくとも日本よりは合成的なものが入ってないので安心できるが、砂糖の量はけっこうたっぷりなので注意が必要である。
MURINO BIANCO(ムリーノビアンコ)という、日本でも有名なパスタのBarilla(バリラ)社が出している焼き菓子のシリーズがあって、クッキーなど種類豊富でおいしかったのでよく食べていた。
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また、イタリアはチョコレートもおいしい。スイスやオーストリアがチョコレートで有名なので、地続きのイタリア北部もおいしいのだろう。
それから、イタリアと言えばジェラート。暖かくなったら食べようと思っていたが、先にお家でスーパーのを食べてしまった。
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心も豊かにする食の在り方
以上、いろんな食べ物をご紹介してきたが、農産物や乳製品に見られる「風味の濃さ」は日本でも昭和の終わり頃まではまだ存在していたはずだ。
戦後GHQによる占領は終了したものの日本古来の大和魂を封じる動きは静かに続いていて、日本人は知らない内に身体も精神も変わってきている。
農産物について言えば、土から種子から時間をかけて栄養の乏しい状態に変えられてしまい、それが味にも出ている。
日本人が骨抜きにされている状況を挙げればキリがないし、私も別に大きな運動を起こしたりしているわけではない。
でも、この事実をとても淋しく思っていたので、イタリアで自然本来の味に出逢えてなんだか懐かしく嬉しかった。さすがはスローフード発祥の国、イタリア。
ところで、一般的なイタリア人の暮らしは決して豪華でも便利でもない。
だいたいのお店は遅くとも21時には閉まるしコンビニなどもないため、基本的には若者であろうと自炊する。(ちなみにこのおかげ?でイタリア人の男性は老いも若きも大体みんな簡単な料理が作れる)
外食する頻度も、日本に比べると圧倒的に少ない。
また料理に使うハーブは庭やベランダ(かキッチン)に鉢植えがあって、使う直前にそこからもぎ採る家庭がけっこう多い。スーパーの野菜コーナーにもちゃんとバジルやペペロンチーノ(唐辛子)の鉢植えが売っている。
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不便といえば不便なのだが、東京でやや疲弊気味であった私にとって、こういう昔ながらの素朴さは心から癒しになった。
イタリア人がなんとなくみんな人生をチャーミングに楽しんでいて心が豊かなのは、食の豊かさにも秘訣があるのだろうと思う。
日本もこれからまた、このような豊かさを取り戻していくと信じている。
9へつづく
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