イタリア郷土料理のお話・フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州
今回は、イタリア最北東に位置するフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州について、見ていきます。
レシピ集でも、いくつか郷土料理をご紹介していますので、
併せて、理解を深めていきましょう。
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1)フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州
(Friuli-Venezia Giulia)について
2)州都:トリエステについて
紀元前時代は、イストリア人が定住。
(トリエステから西に位置する三角形の地域が、イストリア半島)
古代ローマ帝国の支配下に入った後、多くの民族、国家の支配を、
代わる代わる受けますが、中央ヨーロッパと接し、地理的にも重要な拠点でもあったため、貿易港として、時には軍事港として、自治権の一定部分を保持しながら発展していきました。
第一次世界大戦までは、オーストリア=ハンガリー帝国の重要な交易港として栄え、当時の食文化や、建築物が、今でも、色濃く残っているのも魅力のひとつです。
トリエステのカッフェ文化は、とても有名で、
18世紀頃には、店内で政治の密談や、亡命の手続き等を秘密裏に行ったりと、社交場としても、大きな役割を担っていたとか。
第二次世界大戦後、イタリア領として返還されて、現在に至ります。
映画を愛している街でもあり、映画祭も、度々、開催されています。
実際に、トリエステのカッフェに立ち寄った時に、地元の方々と、
宮崎駿監督の「ジブリ映画」の話で、盛り上がりました。
北野武監督の映画も、イタリアで人気です。
トリエステを代表する街並と言えば、まず、この運河を思い浮かべます。
高台からも、トリエステの街の様子を見てみましょう。
そして、この本を思い出す方も、多いと思います。
私も、須賀さんの本を読んでから、トリエステを訪問。
より充実の滞在となりました。
この本にもあった「ウンベルト・サバ書店(Libresia Umberto Saba)」にも、訪れました。
今でも、地元の方々に愛されている、詩人ウンベルト・サバです。
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トリエステ以外にも、訪れたい街があります。
美しい広場が有名な、第二の都市・ウディーネ(Udine)。
モザイク画で有名な大聖堂がある、アクイレイア(Aquileia)。
トリエステの対岸にある、小さな海辺の町・ムッジャ(Muggia)。
地元の方に薦められて訪れたのですが、この街の雰囲気が、堪らなく好きでした。
その他の、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州滞在記は、
下記から、ご覧頂けます。
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3)フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア料理の特徴
海側では、海の幸もありますが、肉、チーズも、よく食べられています。
とうもろこしの栽培も盛んで、粉を使ったポレンタも、メイン料理に添えられています。
パプリカ、クミン、シナモン等の香辛料を料理に使うのも特徴です。
支配下にあった国家、民族の影響を受けているので、ヴェネト料理(州都・ヴェネツィア)にも似ています。
また、オーストリア、ハンガリーのテイストも入り、異国情緒溢れる味わいの料理も多く、この2つの国がルーツの菓子類も魅力的です。
白ワインの産地としても有名です。
近年では、単一品種で造られた白ワインが、日本にも入ってきています。
イタリア全土で飲まれている有名ビール会社・モレッティ社、
日本でも有名なイリーコーヒーも、トリエステで創業された会社です。
それでは、それぞれ、見ていきましょう!
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① 肉料理、加工品
中央部にあるサン・ダニエーレ村(San Daniele)は、生ハムの名産地。
日本でも、有名なパルマ産の生ハムとともに「生ハムの双璧」と呼ばれています。
パルマ産は、やや塩味が強いのが特徴、
サン・ダニエーレ産は、甘みがあるのが特徴です。
どちらも美味しいのですが、個人的には、サン・ダニエーレ産の甘みが
好きです。
トリエステ滞在最後の日には、スーパーで100gを購入し、堪能しました。
いわゆる、ボッリート・ミスト(Bollito Misto)。
北イタリアで、良く食べられている「茹で肉の盛り合わせ」です。
牛肉、豚肉の様々な部位を茹でた肉類を、マスタードソースや、
ハーブとにんにくを効かせたグリーンソース(サルサヴェルデ)をつけて
食べます。
トリエステでは「ブッフェ」という名で、親しまれています。
骨付きのスネ肉を、丸ごと炭火で、じっくりと焼き、切り分けて頂きます。
時間をかけて焼き上げるので、軟らかく、ジューシーに仕上がり、
抜群の美味しさ。
他の州でも、食べられている料理です。
ハンガリー起源の、ドイツ、オーストリアの伝統料理のひとつ。
牛肉を煮込む時に、パプリカや、クミンなどの香辛料を使うのが特徴で、
オーストリア領であった名残のドロミテ料理、フリウリ料理でもあります。
イタリア版ロールキャベツ。
香辛料パプリカを加えるのが特徴です。
これも、ハンガリーの影響と言われています。
② 魚料理
トリエステ湾、ヴェネツィア湾で獲れる豊かな海の幸が食べられています。
ヴェネト料理と、とても似ているなというのが、私の印象でしたが、
その中でも、違いを明確にするために
「イストリア半島の流れを汲むお料理(La Cucina Istriana)」と銘打って、
お料理を提供しているレストランもありました。
「イストリア料理(La Cucina Istriana)」と書かれていた一皿。
本当に、本当に、美味しかったです。
ただ、特徴は?、ヴェネト料理との違いは?と聞かれると、正直、答えるのが難しいです。
「ヴェネト料理(ヴェネツィア料理)」として、出てきても、違和感はないですし、その違いは、分からなかったのですが、
イストリアを起源に持つ方々、海側地域の方々の「誇り」。
それが、現在の「イストリア料理」を支えているのではと、思いました。
③ ポレンタ
トスカーナ州だと、パンと一緒に食べられるであろう「いかの煮込み」。
ここでは、とうもろこしの粉を練ったポレンタが、添えてありました。
日常的に、パンよりも、ポレンタを良く食べる方も多いそうです。
④ チーズ料理
イタリアの「山のチーズ」として有名なモンタズィーオ(Montasio)。
元々は、モッジオ・ウディーネ修道院の僧によって、ひっそりと造られていたチーズでしたが、モンタズィーオ山の住民に造り方が伝えられ、段々と、広がっていきました。
加熱すると、トロリと溶け、お料理にも多用されています。
⑤ お菓子
オーストリア、ハンガリーの影響が、特に、色濃く残っています。
「どれを食べても、本当に美味しい」というのが、訪れた時の印象です。
ナッツ類、ドライフルーツ等の餡を包んだ焼菓子。
月桂樹の王冠のような、ぐるりと巻いた形も特徴です。
ナッツ類、ドライフルーツ等の餡を包み込んだクリスマス時期のパン。
現在では、一年を通して、作られています。
チョコレートケーキの王様と呼ばれる、オーストリアの代表的なケーキ。
トリエステで食べたこのザッハトルテも、ドロミテ(Dolomiti)で食べたのも、本当に、美味しくて、感動したのを覚えています。
イストリア料理店で、食べたこのケーキ。
イメージしていたレモンケーキとは違い、想像以上の美味しさで嬉しくなったのを覚えています。
甘酸っぱい木イチゴのジャムに、チョコレート、ナッツ等々、いっぱいの味わいが詰まっていて、それを、レモンが、上手に包み込んでいる感じ。
異国の香りがしました。
このあたりが「イストリアの味」なのかもしれません。
⑥ ワイン
白ワインの名産地です。
ムッジャ(Muggia)で、量り売りをしている酒屋さんを発見!
嬉しくなりました。
イタリア各地にワインの名産地は多く、ワインショップ、エノテカも多くありますが、町の酒屋さんで、お客さま各自が、空瓶(空のペットボトル)を持ってきて、ワインを入れてもらうと言う「量り売り」をしているお店は、
珍しいです。
ワイン樽の抜栓をすると、保存が効かない分、店側は、早く売り切らないといけない。
買う側も、早く飲み切らないといけない。
「量り売り」が成立しているのは、よりワインが身近である地域なのだと
実感しました。
近年、日本にも、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州産のワインが、
入ってきています。
この地域で、単一ぶどう品種で造られているのは、ちょっと珍しいそうで。
ちょうど、この記事を書いている時に、お世話になっている酒屋さんに、
お勧め頂きました。
飲むのが、楽しみです。
⑦ ビール
イタリア全土で飲まれていて、日本でも知られているモレッティのビール。
19世紀中頃に、ウディーネ(Udine)で創業しました。
根強いワイン文化が続く、イタリア。
創業当時から、長い間、苦戦を強いられていましたが、1990年代に入ってからは、消費が伸び、現在は、イタリアビールシェア No.1の座を守っています。
近年は、南イタリアでも、小さな造り手さんが拘って造る、美味しい地ビールが生産されるようになり、ビール人口も増えてきているなと、感じています。
⑧ コーヒー文化
17世紀後半から、国境が近い街・トリエステならではの、カッフェ文化が育まれていきます。
老舗店のひとつ「アンティコ・カッフェ・サン・マルコ」。
この奥にあるトイレに行く途中、現在は、使われていない広いスペースが、ありました。
19世紀頃、社交場として賑わっていた時に、そこで、秘密裏の対話がされていたのかもしれない。
ふと、そんな事を思ったりして。
バニラアイスに、エスプレッソコーヒーを注いだデザートです。
トスカーナに住んでいた時は、バールで、市販のカップのバニラアイスを購入し、注文したエスプレッソを注いで食べていました。
こうやって、お店で食べるのは初めて。
美味しかったです。
トリエステに本社を置く「イリー・カッフェ(illy Caffe`)」。
日本でも、有名ですね。
トリエステで滞在していたホテルの朝食には、イリーのカップが使われていて、デザイン性もあり、気に入ってしまいました。
トリエステの街で、イリーのカップを探して、購入。
このブルーのカップは、ホテルスタッフからプレゼントして頂きました。
料理教室でも、活躍しているカップ達です。
☆イリー(紹介ページ)
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いかがでしたか?
フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州は、国境に接しているのもあり、
違う雰囲気、文化を持っている、とても興味深い地域です。
この記事を書きながら、機会をつくり、また訪れたいなと思いました。
引き続き、イタリアに関する情報を、様々な形で、お伝えしていきますので、どうぞよろしくお願いします。
マガジン「オフィスアルベロ・レシピ集~neo~」で、既に、ご紹介していますので、是非、ご覧ください。
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最後に
~これまでの「イタリア郷土料理のお話」~
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