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イタリア郷土料理のお話・フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州
今回は、イタリア最北東に位置するフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州について、見ていきます。
レシピ集でも、いくつか郷土料理をご紹介していますので、
併せて、理解を深めていきましょう。
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1)フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州
(Friuli-Venezia Giulia)について
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50949756/picture_pc_27432fbef9b2d7d2ba468df3c48147d5.jpg)
(赤色:フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州)
![](https://assets.st-note.com/img/1676441228352-ErR8QgMcQr.png?width=1200)
「イタリア地方料理の探求(柴田書店)」より、引用
州都:トリエステ(Trieste)
イタリアの北東部に位置し、北はオーストリア、東はスロベニアに接し、
南は、トリエステ湾(海)に面しています。
南北に長く、内陸部には、平野が広がり、
その北に、アルプス山脈の一部・カルニケ山が雄大な姿を見せてくれます。
海に面している地域は、比較的温暖な気候ですが、
北へ行くほど、一年を通しての気温差が激しくなり、
雨も多く、冬は、かなり寒くなります。
2)州都:トリエステについて
紀元前時代は、イストリア人が定住。
(トリエステから西に位置する三角形の地域が、イストリア半島)
古代ローマ帝国の支配下に入った後、多くの民族、国家の支配を、
代わる代わる受けますが、中央ヨーロッパと接し、地理的にも重要な拠点でもあったため、貿易港として、時には軍事港として、自治権の一定部分を保持しながら発展していきました。
第一次世界大戦までは、オーストリア=ハンガリー帝国の重要な交易港として栄え、当時の食文化や、建築物が、今でも、色濃く残っているのも魅力のひとつです。
トリエステのカッフェ文化は、とても有名で、
18世紀頃には、店内で政治の密談や、亡命の手続き等を秘密裏に行ったりと、社交場としても、大きな役割を担っていたとか。
第二次世界大戦後、イタリア領として返還されて、現在に至ります。
映画を愛している街でもあり、映画祭も、度々、開催されています。
実際に、トリエステのカッフェに立ち寄った時に、地元の方々と、
宮崎駿監督の「ジブリ映画」の話で、盛り上がりました。
北野武監督の映画も、イタリアで人気です。
トリエステを代表する街並と言えば、まず、この運河を思い浮かべます。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50956089/picture_pc_32efb2f6cc08c19acdfc00715d9c47cc.jpg?width=1200)
(Canal Grande)
高台からも、トリエステの街の様子を見てみましょう。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50955687/picture_pc_d30d41a1e9bca1899061f2f6332c8212.png?width=1200)
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50955704/picture_pc_f35dcd51c5d715d69a6f2aad3aed1e89.png?width=1200)
そして、この本を思い出す方も、多いと思います。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50954927/picture_pc_745733b240b5909d4057d3bae9f6f871.png?width=1200)
私も、須賀さんの本を読んでから、トリエステを訪問。
より充実の滞在となりました。
この本にもあった「ウンベルト・サバ書店(Libresia Umberto Saba)」にも、訪れました。
![画像30](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51042350/picture_pc_a719144d38738daf979bc49c78ac38b5.jpg?width=1200)
(Libresia Umberto Saba)
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50957334/picture_pc_f8a711a48860969fe234b9385b7a4659.jpg?width=1200)
(Statua di Umberto Saba)
今でも、地元の方々に愛されている、詩人ウンベルト・サバです。
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トリエステ以外にも、訪れたい街があります。
美しい広場が有名な、第二の都市・ウディーネ(Udine)。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50957874/picture_pc_5ddb194c377692955878f32bdc356394.jpg?width=1200)
(Piazza della Liberta`)
モザイク画で有名な大聖堂がある、アクイレイア(Aquileia)。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50958250/picture_pc_6ed49713914e69df5a987be075064bf1.jpg?width=1200)
(Basilica di Aquileia)
トリエステの対岸にある、小さな海辺の町・ムッジャ(Muggia)。
地元の方に薦められて訪れたのですが、この街の雰囲気が、堪らなく好きでした。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50958614/picture_pc_a3706a33633ce8ae567512711df20757.jpg?width=1200)
(Pescheria Comunale)
その他の、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州滞在記は、
下記から、ご覧頂けます。
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3)フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア料理の特徴
海側では、海の幸もありますが、肉、チーズも、よく食べられています。
とうもろこしの栽培も盛んで、粉を使ったポレンタも、メイン料理に添えられています。
パプリカ、クミン、シナモン等の香辛料を料理に使うのも特徴です。
支配下にあった国家、民族の影響を受けているので、ヴェネト料理(州都・ヴェネツィア)にも似ています。
また、オーストリア、ハンガリーのテイストも入り、異国情緒溢れる味わいの料理も多く、この2つの国がルーツの菓子類も魅力的です。
白ワインの産地としても有名です。
近年では、単一品種で造られた白ワインが、日本にも入ってきています。
イタリア全土で飲まれている有名ビール会社・モレッティ社、
日本でも有名なイリーコーヒーも、トリエステで創業された会社です。
それでは、それぞれ、見ていきましょう!
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① 肉料理、加工品
![画像19](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959723/picture_pc_898f3656956ab7df06603503dc05028e.jpg?width=1200)
(Prosciutto di San Daniele)
中央部にあるサン・ダニエーレ村(San Daniele)は、生ハムの名産地。
日本でも、有名なパルマ産の生ハムとともに「生ハムの双璧」と呼ばれています。
パルマ産は、やや塩味が強いのが特徴、
サン・ダニエーレ産は、甘みがあるのが特徴です。
どちらも美味しいのですが、個人的には、サン・ダニエーレ産の甘みが
好きです。
トリエステ滞在最後の日には、スーパーで100gを購入し、堪能しました。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959284/picture_pc_56062a450e0aaa96432ce5685812a720.jpg?width=1200)
(Buffet)
いわゆる、ボッリート・ミスト(Bollito Misto)。
北イタリアで、良く食べられている「茹で肉の盛り合わせ」です。
牛肉、豚肉の様々な部位を茹でた肉類を、マスタードソースや、
ハーブとにんにくを効かせたグリーンソース(サルサヴェルデ)をつけて
食べます。
トリエステでは「ブッフェ」という名で、親しまれています。
![画像21](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959814/picture_pc_deaa30c0a25974d817f99b70fa278dff.jpg?width=1200)
(Stinco di vitello)
骨付きのスネ肉を、丸ごと炭火で、じっくりと焼き、切り分けて頂きます。
時間をかけて焼き上げるので、軟らかく、ジューシーに仕上がり、
抜群の美味しさ。
他の州でも、食べられている料理です。
![画像29](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51014151/picture_pc_2942210c7a3a95cf3c7e2648cc79a8ae.jpg?width=1200)
(Gulasch&Cunudel)
ハンガリー起源の、ドイツ、オーストリアの伝統料理のひとつ。
牛肉を煮込む時に、パプリカや、クミンなどの香辛料を使うのが特徴で、
オーストリア領であった名残のドロミテ料理、フリウリ料理でもあります。
![画像24](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50960109/picture_pc_68e9d7bc01e6a4c039c7b1b77483094e.jpg?width=1200)
(Rambasicci)
イタリア版ロールキャベツ。
香辛料パプリカを加えるのが特徴です。
これも、ハンガリーの影響と言われています。
② 魚料理
トリエステ湾、ヴェネツィア湾で獲れる豊かな海の幸が食べられています。
ヴェネト料理と、とても似ているなというのが、私の印象でしたが、
その中でも、違いを明確にするために
「イストリア半島の流れを汲むお料理(La Cucina Istriana)」と銘打って、
お料理を提供しているレストランもありました。
![画像22](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959842/picture_pc_ca48840df42c2abfc350c5cd1b80bad8.jpg?width=1200)
(Ravioli di branzino con salsa di pomodoro e scampi)
「イストリア料理(La Cucina Istriana)」と書かれていた一皿。
本当に、本当に、美味しかったです。
ただ、特徴は?、ヴェネト料理との違いは?と聞かれると、正直、答えるのが難しいです。
「ヴェネト料理(ヴェネツィア料理)」として、出てきても、違和感はないですし、その違いは、分からなかったのですが、
イストリアを起源に持つ方々、海側地域の方々の「誇り」。
それが、現在の「イストリア料理」を支えているのではと、思いました。
③ ポレンタ
![画像23](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959855/picture_pc_f888803a06ed91663c64e01407602f62.jpg?width=1200)
(Totani in umido com polenta)
トスカーナ州だと、パンと一緒に食べられるであろう「いかの煮込み」。
ここでは、とうもろこしの粉を練ったポレンタが、添えてありました。
日常的に、パンよりも、ポレンタを良く食べる方も多いそうです。
④ チーズ料理
![画像25](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50960263/picture_pc_a40e347b747aba4719f7f718d3c3e5de.jpg?width=1200)
(Antipasto di formaggio , Montasio)
![画像26](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50960290/picture_pc_b1a36277bcc2f7792ada5acb107a0da4.jpg?width=1200)
(Crespella di formaggi)
イタリアの「山のチーズ」として有名なモンタズィーオ(Montasio)。
元々は、モッジオ・ウディーネ修道院の僧によって、ひっそりと造られていたチーズでしたが、モンタズィーオ山の住民に造り方が伝えられ、段々と、広がっていきました。
加熱すると、トロリと溶け、お料理にも多用されています。
⑤ お菓子
オーストリア、ハンガリーの影響が、特に、色濃く残っています。
「どれを食べても、本当に美味しい」というのが、訪れた時の印象です。
![画像17](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959599/picture_pc_2d70a02a31653079b07a42025e405cf0.jpg?width=1200)
(Presnitz)
ナッツ類、ドライフルーツ等の餡を包んだ焼菓子。
月桂樹の王冠のような、ぐるりと巻いた形も特徴です。
![画像18](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959613/picture_pc_6887b8ce283867f7e72ca75b3bf72649.jpg?width=1200)
ナッツ類、ドライフルーツ等の餡を包み込んだクリスマス時期のパン。
現在では、一年を通して、作られています。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959308/picture_pc_c115f38eeb3af57d61fd3ad0231eb39c.jpg?width=1200)
チョコレートケーキの王様と呼ばれる、オーストリアの代表的なケーキ。
トリエステで食べたこのザッハトルテも、ドロミテ(Dolomiti)で食べたのも、本当に、美味しくて、感動したのを覚えています。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959551/picture_pc_0a9a6cb4d11eba3f9354a0819dcd6009.jpg?width=1200)
(Torta di limone)
イストリア料理店で、食べたこのケーキ。
イメージしていたレモンケーキとは違い、想像以上の美味しさで嬉しくなったのを覚えています。
甘酸っぱい木イチゴのジャムに、チョコレート、ナッツ等々、いっぱいの味わいが詰まっていて、それを、レモンが、上手に包み込んでいる感じ。
異国の香りがしました。
このあたりが「イストリアの味」なのかもしれません。
⑥ ワイン
白ワインの名産地です。
ムッジャ(Muggia)で、量り売りをしている酒屋さんを発見!
嬉しくなりました。
![画像20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959752/picture_pc_9063382880582736499f87ec68e39edb.jpg?width=1200)
(Enoteca a Muggia)
イタリア各地にワインの名産地は多く、ワインショップ、エノテカも多くありますが、町の酒屋さんで、お客さま各自が、空瓶(空のペットボトル)を持ってきて、ワインを入れてもらうと言う「量り売り」をしているお店は、
珍しいです。
ワイン樽の抜栓をすると、保存が効かない分、店側は、早く売り切らないといけない。
買う側も、早く飲み切らないといけない。
「量り売り」が成立しているのは、よりワインが身近である地域なのだと
実感しました。
近年、日本にも、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州産のワインが、
入ってきています。
![画像30](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51016372/picture_pc_1318cda43213df44dc33487aac864852.jpg?width=1200)
( Fernanda Cappello Sauvignon / Fernanda Cappello Chardonnay )
この地域で、単一ぶどう品種で造られているのは、ちょっと珍しいそうで。
ちょうど、この記事を書いている時に、お世話になっている酒屋さんに、
お勧め頂きました。
飲むのが、楽しみです。
⑦ ビール
![画像27](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51012793/picture_pc_e6703af75eaae80ab7ecf97618f95031.jpg?width=1200)
(Birra italiana:Moretti)
イタリア全土で飲まれていて、日本でも知られているモレッティのビール。
19世紀中頃に、ウディーネ(Udine)で創業しました。
根強いワイン文化が続く、イタリア。
創業当時から、長い間、苦戦を強いられていましたが、1990年代に入ってからは、消費が伸び、現在は、イタリアビールシェア No.1の座を守っています。
近年は、南イタリアでも、小さな造り手さんが拘って造る、美味しい地ビールが生産されるようになり、ビール人口も増えてきているなと、感じています。
⑧ コーヒー文化
17世紀後半から、国境が近い街・トリエステならではの、カッフェ文化が育まれていきます。
![画像30](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51023054/picture_pc_2f643b22e8d18f4f7ef5047aad4c6691.jpg?width=1200)
(Anrico Caffe` San Marco)
老舗店のひとつ「アンティコ・カッフェ・サン・マルコ」。
この奥にあるトイレに行く途中、現在は、使われていない広いスペースが、ありました。
19世紀頃、社交場として賑わっていた時に、そこで、秘密裏の対話がされていたのかもしれない。
ふと、そんな事を思ったりして。
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50959498/picture_pc_7cf98a6d113a638ad8b85a53482ffc92.jpg?width=1200)
(Caffe Affogato)
バニラアイスに、エスプレッソコーヒーを注いだデザートです。
トスカーナに住んでいた時は、バールで、市販のカップのバニラアイスを購入し、注文したエスプレッソを注いで食べていました。
こうやって、お店で食べるのは初めて。
美味しかったです。
トリエステに本社を置く「イリー・カッフェ(illy Caffe`)」。
日本でも、有名ですね。
トリエステで滞在していたホテルの朝食には、イリーのカップが使われていて、デザイン性もあり、気に入ってしまいました。
![画像28](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51013625/picture_pc_9f94ec677897fa35e5978b0518df3666.jpg?width=1200)
(illy espresso)
トリエステの街で、イリーのカップを探して、購入。
このブルーのカップは、ホテルスタッフからプレゼントして頂きました。
料理教室でも、活躍しているカップ達です。
☆イリー(紹介ページ)
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いかがでしたか?
フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州は、国境に接しているのもあり、
違う雰囲気、文化を持っている、とても興味深い地域です。
この記事を書きながら、機会をつくり、また訪れたいなと思いました。
引き続き、イタリアに関する情報を、様々な形で、お伝えしていきますので、どうぞよろしくお願いします。
マガジン「オフィスアルベロ・レシピ集~neo~」で、既に、ご紹介していますので、是非、ご覧ください。
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最後に
~これまでの「イタリア郷土料理のお話」~
ここから先は
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8999404/profile_0775c4221b11b45db0d3b3e11e24bd56.jpg?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
オフィスアルベロ レシピ集
※ 新フォーマットに合わせて、初期の頃の記事を、順次調整中。見えやすく読みやすくしていきます。 料理脳を鍛えよう! レシピは、料理の謎解…
お読み頂き、ありがとうございます。 サポート頂ければ、心強いです。