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この国が「ボトムアップでは変わらない」と気付いてからの日々


私は今、文部科学省の課長にお目にかかっている。5月11日にYouTubeでも配信された「学校の情報環境整備に関する説明会」で「今はですね、前代未聞の非常時です。緊急時です。」「えっ、この非常時にさえICTを使わないのはなぜ?」と熱弁をふるわれた髙谷浩樹氏(文部科学省・初等中等教育局情報教育・外国語教育課長)に会いに来たのだ。

この緊急時に、私たちがまず始めたこと

COVID-19の影響で、3月2日から一斉休校を政府が要請する、と決まったのが2月28日。私たちはこの非常時対応として「オンラインおうち学校」と称したオンライン授業の実施を決め、その休校当日の3月2日から開始(我ながらこの動きの速さは自賛したい)。
登壇くださったのはヤフー株式会社CSOで慶應義塾大学環境情報学部教授の安宅和人氏、宇宙飛行士の山崎直子氏、漫画家のしりあがり寿氏…など夢のような講師陣。これまでにのべ3,800人の子どもたちが全国各地(時には海外)から受講してくれている。

そのような中、保護者の方やPTAからこんな声が寄せられた。
「竹内さん、オンラインホームルームを学校ができるように助けてくれないか」

そう、授業ではなく「ホームルーム」。そして私たち団体が行うのではなく「学校」が行うことを求める保護者は少なくないようなのだ。

オンラインで求められるのは授業ではなく まずはホームルーム!?

なぜ、ホームルームなのか?
休校が始まってすぐ痛感させられたのは、学校が担っていた役割は決して「勉強授業」だけではなかったということだ。毎朝、同じ時間に起き、ちゃんと身支度を整え、眠い目をこすりながらも通学する、という1日の始まりが生活リズムをつくっていた。ただ同じ時間・空間を先生や級友とわかちあい、またそこに集うという積み重ねが、つながりという見えない安心感になっていた……

だからこそ、授業でなくてよい、まずは、教員と子どもたちが「おはよう」と双方向に声を掛かけ合い始められる時間、ホームルームがオンラインで創設できないか、というのだ。

それでは!と腕をまくって、NPO法人ハピタの代表と共に、PTA向け、自治体向け、学校向けにそれぞれ資料を作成したのが4月頭。なんてったって動きが速いのが我々の強み。これまでのオンラインおうち学校の開催で培ってきた経験から、ホームルームの意義や、オンラインの参加方法や、注意点をわかりやすく記載し、それぞれの対象に向けて作り、皆さんに配布。さらにウェブサイトにもその内容を掲載して、どなたでも使えるようにした。

……しかしそれらはゴミとなった。
「うまくいきませんでした」という残念な報告ばかりが寄せられた。先生はOKしてくれたのに、校長先生にダメ出しされた。学校から提案したけれど教育委員会からのストップがかかった。理由はさまざまなれど、結果はほぼ同じ。

私たちは、公教育はボトムアップでは何も動かない、ということを痛感したのだった。小さな団体の自分たちがスピーディに動ける理論は、行政には通用しなかった。

一度の失敗はあきらめの理由にならない


学校・PTA・自治体、という教育を取り巻く三大関係者に対して、ボトムアップでのアプローチがだめダメとなれば、次に仕掛けるのは「横でのつながり」。
まずはFacebookで「オンラインホームルーム推進の会」というグループを立ち上げ、同じような想いをもつ人々が情報交換できる場を作った。さらにそこで出た意見を、全国自治体の教育長や教育委員会に伝えようと、「子どもの孤立を防ぐため、自治体主体での、双方向でのオンラインホームルーム導入をしてほしい」との署名運動(☜Change.orgリンク、下記はその画面)も手がけている。

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さらに、一般社団法人シビックテックジャパンが主催する 「Civic Tech Forum」のプレイベント(オンライン)に登壇(☜YouTube動画)して、シビックテック(市民自身が課題解決のためにテクノロジーを活用する取り組み)を手掛がける方々に「オンラインホームルームを導入した自治体の動向を地図上にで可視化してほしい」などの呼びかけをしてみた。冒頭の絵は、その際に生まれて初めて描いていただいたグラレコである。

その登壇の結果、名古屋工業大学の白松准教授等により、下記のようなオンライン導入状況マップができあがった。
(なお、こちらのマップは自治体の公表ベースに依拠しており、まだまだ完成していません!情報をお寄せいただければ助かります!!)

ICT導入進捗23区

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さて、そうしている間にも、私立・国立の学校の多くは早々とオンラインの活用に移行しを始め、すでに6割を超える私立校がなんらかのオンライン活動を導入している。中には、「今しかできない学び」をテーマに、クラスを超えた課題研究、ディスカッション、海外とつないだ授業…と様々な学びの様子が、毎日のように私のもとにも聞こえてくる。
他方、公立の学校で、オンラインで何らかの取り組みができている割合はたった5%。

対応が進む学校の子どもたちが、ステイホームしながら級友と共に学びを深めている一方、それ以外の大半の子どもは動画やゲームに没頭……。
学びの機会が阻まれている。教育格差が拡大していく。
一度の失敗であきらめてはいられない。私立・公立を問わず、子どもたちのために、双方向のやり取りを通じた安心と学びを、なんとか生み出さねばならない。

SNSのつながりから文科省訪問が実現! 


そんな風にもがきながらも進んでいた矢先に、目に飛び込んできたのが、冒頭の文部科学省による「学校の情報環境整備に関する説明会」の動画である。
「今、何をすべきか?使えるものは何でも使いましょう」
「できることから、できる人から」
「この後、世の中がどうなろうとも、学校のICT環境を使って、できることをやらなければいけない」
そこで語られた強いメッセージを、深い共鳴を覚えながら聞いた。

「なんとしても、お会いしなくては!」 ――そう思っていたところ、今回の一連の活動を通じてオンライン上でつながった方が、政治家を通じてこの髙谷課長との面談の機会を作って下さったのだ。
面談では、これまでの働きかけをご報告し、多くの家庭の実態――家で勉強の補完をすることになったがために、親がテレワークのかたわらで、学校から付与された大量のプリントや時間割と格闘しながら、子どもの勉強を補完して疲弊している様――についてもお伝えした。また、アフターコロナにおけるオンライン授業の可能性についても意見を交わすことができた。
国内の教育制度の大枠を決める立場でありながら、公立の小・中学校の動向は各自治体や学校長に委ねざるを得ないという、文部科学省のジレンマをも痛切に感じることもできた。
あっという間に予定していた時間が過ぎたが、オンラインによる先生・生徒の双方向での取り組みの必要性、そして、オンライン実施が困難な家庭にあ合わせるという“公平性”はナンセンスであり、オンライン実施が難しい子ども・家庭を見つけて対応することこそが大切、という認識を互いに確認できた。

さて、では民間の非営利団体ができることは何か……?
面談が終わった今、また次の一歩を考え始めている。

高谷さん、長島さん写真

(かっこよく締めたいところだが、面談当日は興奮し過ぎて、準備した資料を感光紙で刷り出してしまったり、1時間早く面談場所の衆議院議員会館に到着してしまったり。行動は早い一方で、未熟なところは多々ありまして……。皆様からのご協力・ご支援でがあってこそ前進できます。どうぞお力お貸しくださいませ。共に日本の教育を向上させていきたいです!)



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Aska
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