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【シンエヴァネタバレ解説】残酷な天使のように 少年よ宇部興産のすごい技術者になれ

この記事では宇部興産という企業に注目しつつ、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の新しい作品解釈を提示します。記事の約6割が宇部興産の説明、残りがエヴァの感想と解釈で構成されています。

筆者が宇部興産に着目した経緯

初見で釈然としなかった部分

映画の前半の主な舞台は第三村という名前の村だ。シンジ、綾波、アスカは放浪の末にこの村にたどり着く。前近代的な手作業による農業を主産業とするこの奇怪な村で、綾波が農作業や挨拶を通じて社会性を高めたり、シンジが鬱状態から立ち直ったり、トウジなどのキャラクターが登場したり、心温まる(?)エピソードが続く。
しかし結局補給を受けられない綾波はポンジュースになってしまう。アスカは「村は守る場所であって居場所ではない」と言って最初から最後まで村の人々や村での労働から距離を置き続ける。シンジも居場所を見出したもののせいぜい魚釣りぐらいしかしていない。やがてヴンダーがやって来てみんながそれに乗船し、最終決戦が始まってしまう。
そして見事人類を救って文明を復活させたシンジはマリにDSSチョーカーを取ってもらい、電車を降りて宇部興産(脈絡が無い!そして庵野の脳内での大人になる=地元のなんか有名な大企業に就職することって、マイルドヤンキーかよwwww)に就職し、ハイテクな工業地帯に向かっていく。おめでとうおめでとうおめでとう
しかしその水準にまで復活した文明には第三村での前近代的な農業やそれを主産業とする村はもはや必要ないはずだし、そもそも第三村は綾波やアスカにとっての居場所ではなかったはず……

それなのにネットのnoteなどでの感想記事では、「庵野が宮崎駿やジブリにかぶれて前近代的な農業社会を称賛し始めた」「オタクはいい加減に大人になり、保守化し、子供を生み育て、地元の企業に就職し、そして原始的な農作業をして大人になれ」みたいな作品解釈が多いけれど、本当にそうなんだろうか?

というような釈然としない気持ちになっていた時に空間さん(http://twitter.com/ssig33)という人のツイートを見つけた

これをきっかけに宇部興産について調べた結果、作品解釈が大きく変わったのでその事を記事にした。それがこの記事です。

そんなわけでこの記事は空間さん(この人は頻繁にスクリーンネームを変えるのでこの呼び方が適切かどうかわからない)の受け売りになってしまう部分が多いし、東京都内在住のニートである私なんかよりも宇部興産について詳しい人は世の中にいくらでもいるはずだし、得手不得手で考えるなら宇部興産の話をするよりも聖書解釈か何かの記事を書いたほうがおそらくマシだ。それでも自分なりのエヴァンゲリオンの解釈を書いて記事にして公開したいから記事にした。なぜならこれはエヴァンゲリオンだから。


宇部興産について


作中での描写

この章は検証が間に合わないので執筆を断念しました。後で書き足すかもしれません。ごめんなさい。


そもそも、なぜ宇部なのか?

第3新東京市のある箱根周辺やスタジオカラーのある杉並区などではなくなぜ宇部がラストシーンのロケ地に選ばれたのか? これはググったら簡単に答えが出た。庵野監督の出身地だからだそうだ。エヴァンゲリオンは宇部市の町おこしなどにも利用されており、シンエヴァ公開前に出来たと思われる聖地巡りの観光モデルコースのWEBページなどもあった。
http://ube-kankou.or.jp/guide/course/detail.php?id=12

宇部市について
山口県にある人口16万2935人(2021/3/1時点、市HPによる)の市。瀬戸内海に面している。作中で登場した宇部新川駅は市の中心部にある。そこから5kmほど北西にある宇部駅は市の中心街から離れているが、山陽本線と宇部線の接続駅であるためか利用者数はそちらのほうが多い。
明治期以来、石炭、セメント、硫酸アンモニウムの製造などによって発展してきた。宇部興産の「企業城下町」である。

なぜ宇部興産なのか?
庵野の地元を代表する大企業だから……というのは間違いなくあるが、それだけではない。宇部興産は日本の産業技術の最先端を走るとにかく素晴らしい会社だからだ。……少なくとも、庵野監督の脳内ではそうなのだ。というわけでここから宇部興産株式会社の情報を書き連ねていく。以下ソースは宇部興産公式サイト(ube-ind.co.jpube.comおよびube-recruit.com

宇部興産の概要
正式名称は宇部興産株式会社。本社は東京都港区と宇部市にある。

沿革
山口県宇部の炭田を開発するために、地元の人々が出資して1897年に創業した匿名組合組織「沖ノ山炭鉱」が起源。「いずれは掘り尽くしてしまう有限の石炭を、工業の無限の価値に展開し、地域に永く繁栄をもたらそう」と考えた創業者の渡辺祐策らが宇部新川鉄工所、宇部セメント製造株式会社、宇部窒素工業を設立し、1942年にこれら4社が合併して宇部興産株式会社が設立される。戦後は研究所を開設したり、千葉や堺、スペインなどに拠点を増やしたり、炭鉱が閉山になったりしている。

事業内容
『化学』『建設資材』『機械』の三事業を展開している。それぞれの事業の製品には以下のようなものがある(一部省略している)。

化学
合成ゴム、ナイロン樹脂、ラクタム(ナイロンの原料らしい)、工業薬品、液化ガス、ポリエチレン、家庭用品(食品ラップなど)、肥料園芸用品、電池材料、ファインケミカル、航空宇宙材料など
原料を素材に変えて販売している。また医薬品の開発や原薬の製造も行っている。、

建築資材
セメント、地盤改良用固化材、排煙脱硫剤、セルフレベリング材、左官材、防水材、建材、珪藻土を使ったバスマット、石炭の輸入販売、発電など

機械
ダイカストマシン、射出成形機(プラスチックの加工用の機械)、押出プレス(アルミと銅の加工用の機械)、粉砕機、窯業機械、除塵装置、運搬、貯蔵システム(石炭やセメントなどの)、橋梁、鋼構造物など
橋梁としては、東京湾アクアラインの建設にも携わった

筆者はバカなので用途がよくわからないものが多い(ラクタムなんて初めて聞いた)が、とにかく技術力を売りにしてなんかすごい高度な事をやっている会社だということがわかる。
もっと詳しく知りたい人は公式サイトなどを見てください。これは東京の文系雑魚オタクが書いたエヴァンゲリオンの解説記事なので、これ以上細かく書いても仕方がないので。

シンジくんとマリが入社したとするとどんな仕事をすることになるのか


採用情報のページによると、以下の職種の募集が行われている
技術系:研究開発、製品開発、生産技術、エンジニアリング、計測・制御、分析・解析、システム開発、技術営業、知的財産、土木・建築施工など
事務系:営業、企画、購買、物流、経理、財務、人事、総務、広報、法務、情報システムなど

シンジくんが技術系の枠で採用されたのだとするとおそらく研究開発などの業務に従事し、日本の産業を支える最先端の工業素材を作ったり、化学工業プラントの生産管理をしたりすることになる。
事務系だった場合には営業職などになる可能性は高いかもしれないが、どちらにせよ田植えをしたり、ブルーカラーとしていわゆる土方をやったり、消費者の家に上がり込んで営業をしたり(BtoC)といった泥臭い(表面的な意味で)、Clannadの岡崎朋也みたいな仕事をする可能性は極めて低い。


そんなシンジくんの頭の中では、コールセンターといえば石炭貯蔵施設のことなのだ!!

画像1

www.ube.com/contents/jp/cement/coal/coal_center.htmlより)

採用サイトから推測される宇部興産社員のイメージ
リンク先ページ内から再生できる紹介動画によると、宇部興産は
「少数精鋭、一人ひとりの裁量権が大きく、技術の前で人は平等の精神のもと、社員の挑戦を他の仲間が支援する土壌がある、多彩なプロフェッショナルな集団」なのだそうだ。
この下はリクナビ2022に掲載された先輩社員へのインタビューで、ここから業務のイメージを掴めるかもしれない
http://job.rikunabi.com/2022/company/r997200051/senior/K103/
http://job.rikunabi.com/2022/company/r997200051/senior/K102/

もしかしたら宇部興産の実態は公式サイトで謳っているものと比べてかなりしょぼいのかもしれない。しかし作品解釈において重要なのは庵野秀明の脳内の宇部興産がどんな会社なのかであって、それは多分公式サイトで謳われているようなすごい会社なのだろう。そうでなければわざわざ劇中で唐突に宇部興産を登場させたりしないからだ。

作品解釈の変更


これらの知識を得た結果、今までの釈然としない作品理解の代わりに、新しいシン・エヴァンゲリオン像が浮かび上がってきた。庵野秀明は「オタクは田植えをしろ、挨拶をしろ、マイルドヤンキーになって育児や素朴な肉体労働に従事しろ。田園と里山とスタジオジブリ最高!!!!」とは一切言っていない。むしろそれらは無意味であり、そんなことをしてもどうせ綾波はポンジュースになってしまう。そうではなく宇部興産の技術者になって研究開発などに携わり、文明を進歩させろと言っているのだ。もちろん宇部興産に就職できるのはごく一部の人々だけなので、この国民的アニメは氷河期世代どころかあらゆる世代の大半の人々を救うことはできない。庵野監督本人の事すらも救うことができない。なぜなら彼はどう頑張ったところで宇部興産に就職できないからだ。
しかしそれでも、特に若い世代であれば、シン・エヴァンゲリオンを見て宇部興産のすごい技術者を目指す事に決めてそして夢を叶える人が誰かしらは現れるかもしれない。そんな誰かにシン・エヴァンゲリオンの本当の姿に気付いてもらいたくて、俺は今キーボードを叩いているんだ(嘘です)。

それじゃあ第三村とは一体なんだったのか


ただ単に綾波が農作業をしている様子とかをアニメにしてみたかった説(シナリオとしては不評だがエンタメ映像としては好評だったのでは)、ごく一時的な居場所もしくは決別すべき場所として描いた説(第三村にずっと居てもいいんだと思ったけどよくよく考えるとそんな事は全然なかった。綾波もポンジュースになっちゃったし)など諸説ありますが、私が推したいのは「メチャクチャ手の込んだ宮崎駿への皮肉だった説」です。
皮肉の相手は宮崎駿じゃなくて細田守かもしれない。山崎貴とかあるいは筆者の知らない誰かに対するものかもしれない。それが誰なのかそもそもこの説が妥当なのか検証できるほど筆者は庵野秀明個人や日本の映像業界について詳しくないものの、とにかく誰かや何かに対する皮肉としてあの一時間ぐらいある第三村パートの映像は作られたんだと俺は信じている。なぜなら、もしそうだったら面白いから。

第三村と対になる存在


第三村と対になる存在、庵野監督が考える、オタクが立ち返るべき現実とは何か?人類文明のあるべき姿とは何か? それはもちろん宇部興産であり、宇部興産が製造する最先端の工業素材を用いて作られた産業プラントや橋梁に代表されるような建築物である。ジオフロントも当然宇部興産によって建てられており、「序」や「破」ではシンジくん達はこれを守るために戦う。そして宇部興産の社員……じゃなくてヴンダーの乗組員たちは人類の英知と技術をかき集めてガイウスの槍を作り上げ、シンジくんに届けるのだ。
そしてそんな人類文明の象徴と言えるのが、冒頭のパリの戦いで登場したエッフェル塔だ。ふしぎの海のナディアにも登場したこの塔は、1889年のパリ万博に際して人類と金属産業の進歩の象徴として、当時の技術の粋を集めて作られた強風に耐えられる機能美を持ったモニュメントとして建設された。だからロンギヌスの槍とかと同じようにエヴァの作品世界ではすごく強い。そんなすごい塔を武器にして使徒を倒すマリを描きたい。そのためだけにパリが舞台に選ばれたのだろう。

お詫び、言い訳と自己紹介

執筆中にはてな匿名ダイアリーで宇部興産について言及した記事(http://anond.hatelabo.jp/20210314105214、空間さん本人が書いたもののようです)が拡散してしまったので途中からスピード最優先で編集しました。なので色々あれですがごめんなさい。あと公開後に表記ミスとかの諸々を修正してしまってすみません。普段は

というサイトで記事を書くことがあります。

それでは、どうもありがとうございました。

追記(2021/3/15)

はてなブログで記事を書きました!

科学映像館という映像アーカイブにある面白い映画を眺めながら庵野監督と昔の人々が宇部興産的なものに対して寄せた思いを掘り起こしていく記事です。おすすめです。


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