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サンリオピューロランドのハロウィンライブの話 〜ポムポムプリンが歌った「今夜はブギー・バック」あるいはトラヴィス・スコット〜

トリック・オア・トリートという言葉を一度も聞かなかったけれども、10月31日のハロウィンはどうやら盛り上がっていたらしい。なんてことを考えるぐらいハロウィンの盛り上がりにはどうもいまいちピンときてなかった自分が、唯一ハロウィンに乗じて盛り上がったのが10月26日に行われたオールナイト音楽イベント「SPOOKY PUMPKIN 2019 〜PURO ALL NIGHT HALLOWEEN PARTY〜」である。

サンリオ・ピューロランドでオールナイトの音楽?と混乱する人も多いだろうが、実は2014年から開催されている。あのサンリオの「ゆめかわいい」空間の中で、ヒップホップやクラブミュージック系のアクトがステージを行う、かなり異色の音楽イベントだ。

ちなみにヘッドライナー(?)は毎年決まってDJ ハローキティ。日付が変わった瞬間にあの白い二頭身の猫がEDMナンバーを流し続ける。

どうやら年々注目を集めているらしく、今年は4ステージに約40組のアクトが出演し、チケットはソールドアウト。おそらく、日本最大級のオールナイトイベントになりつつある。

僕自身、去年初めてイベントに参加してなかなかの衝撃を受けた。おそらく小・中学生向けの会場の中で、サイプレス上野がDJをし、スチャダラパーやTempaleyやAAMMMY、Momがライブをしているのだから。フジロックの次に好きな音楽イベントだと言っても過言ではない。

今年も、長谷川白紙やラブリーサマーちゃん、Chelmico、m-floなど、かなり気合の入ったラインナップを見て、行くことを決めた。

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今年のサンリオハロウィンで一番驚かされたのは、ヒップホップアクトで巻き起こった熱狂だ。

ハローキティがDJをしている深夜1時に始まったスチャダラパーのステージには、入場規制がかかるほど観客が詰め掛けていた。しかも「アーバン文法」も「ドゥビドゥWhat's」も、「平凡中庸パンチ」も、「GET UP AND DANCE」も、ひたすらに盛り上がる。なんならすべて歌っているオーディエンスもいる。予想以上の熱気に、気圧されそうになった。

そして、その熱狂がピークに達したのは、ステージにポムポムプリンが降り立った時だった。黄色い二頭身の犬は、小沢健二さながらに「今夜はブギー・バック」を歌い上げた。その時の、観客から巻き起こった笑いと声援と、叫びは一週間以上たった今も忘れられない。

驚くべきことに、その後二回も「今夜はブギー・バック」をサンリオピューロランドの場内で聴くことになる。オザケンとスチャダラの25年前の名曲は、確実にあの日のアンセムだった。

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スチャダラパーのステージのような熱狂は、気がついたらあちこちで巻き起こっていた。

m-floのステージに舞い降りたJP THE WAVYのクールでファニーなフロウ、悲鳴にも似た歓声が起こったChelmico、フロアに降り立ちラップをしていた釈迦坊主、そして深夜四時にオーディエンスを総立ちにさせた踊 Food Works。

ヒップホップは、もはや日本の音楽シーンの中心なのではないか。そう錯覚するほど、興奮に満ち溢れた空間だった。

帰りの電車で僕が思い出していたのは、数ヶ月前にネットフリックスで観たトラヴィス・スコットのドキュメンタリー『Mama,I Can Fly』だ。

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ヒューストンのラッパー、トラヴィス・スコットは、地元の閉園した遊園地を取り戻すために『ASTRO WORLD』というアルバムを作った。そしてその跡地でライブを行い、全米各地のアリーナライブではジェットコースターを取り付けた。全米チャート1位を獲得し、グラミー賞にノミネートされた彼の活躍により、遊園地は再び営業を再開することになった。

あの1時間半のフィルムには、トラヴィスのステージを恍惚の表情で見つめながら「レイジ(興奮)」する若者の姿が幾度となく映されていた。ヒップホップが持つ自由さと、遊園地の無条件の幸福感が共振した時、熱狂と興奮が生まれるのである。

世界のヒップホップシーンを代表するラッパーと、ふざけたオールナイトイベントを比べるのはどうかと思うが、あのフィルムに映った興奮と、サンリオで起こっていた熱狂は、どこか近いものがある気がした。

そんなことを考えながら京王線で聴いていたのは、ちょっと前に「新しい価値観で壊していこう」とラップをした人の音楽だった。

(ボブ)

<今日の一曲>

「人間発電所」BUDDAH BRAND

6人くらいしかいない深夜4時半のサンリオのフードコートのDJブース。確か、出番を終えた釈迦坊主がこの曲で踊っていた。

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