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【#14 ショック】『ホットギミック ガールミーツボーイ』
公開初日に映画館に急いだのは、久しぶりのことかもしれない。
『ホットギミック ガールミーツボーイ』を観に行った。
たくさんの人に山戸結希監督に出会って欲しい。
改めて、切にそう願った。
『ホットギミック』は予告編を見ればわかるよう、そのカテゴリーは「胸キュンティーンムービー」だ。だからこそ、いいのだと思う。
「間違って足を踏み入れてしまった。」
そんな誰かのことを想像せずにはいられない。
「映画は共感できるかどうかだ。」「映画に共感なんて求めるな。」という意見の対立が最近なにかとレビュシーンを賑わせている。
小ズルいのを承知で言うと、自分はそんなのどっちでもいいと思っていて。
感情は(少なくとも情報より)多くの人を繋ぐので「共感できる」はエンタメコンテンツの感想としては最上級のものだと感じていて、「共感できない」はそれって「覚醒したい」ということの裏返しで。
なので、「共感できる/できない」じゃなく「共感できる/覚醒したい」なのだと。
まあ、なんでこんな話をツラツラしたかというと、『ホットギミック』は共感も覚醒もできる映画なのです。
本当に見て欲しい作品なので見所を。
【①開発中の臨海地区と未分化された関係性】
この作品の舞台は東京の臨海地区。
オリンピックに向けて大急ぎで開発が進められているこの地域が、登場人物たちの心象風景として機能する。
物語冒頭からしきりに「幼馴染」という関係性が強調される。
主人公の初(堀未央奈)と亮輝(清水尋也)、梓(板垣瑞生)は同じ団地で育った。
生活環境が入り組みあった団地で育った「幼馴染」という関係性のなかで三人はしきりに自分のポジションを確立させようとする。そうしないとどう思われているかが「わからず」に不安だから。
それはまるで、オリンピックという成熟した状態に向かう臨海地区に「ここから『公』、ここから『私』」と線が引かれるように。
【②混ぜないとできない飲み物】
震えたシーンがある。
物語後半、間宮祥太朗演じる凌と主人公の初の関係性が帰結されるシーンだ。
凌はある飲み物を初につくる。それは、混ぜないとできないもの。
そして、凌と初の関係を象徴する飲み物だった。
ある理由から凌はそれを零すことになる。その零し方が美しいのでぜひ見逃さないで欲しい。
「混ぜないとできない飲み物」は実はこのシーン以前にも出現する。
同じ混ぜるという行為でありながらも、そこに込められる感情は全く別物だ。
【③声と髪】
そして、この映画を語る上で欠かせないのが今回が映画初主演となった
堀未央奈だろう。
山戸監督は彼女の声を「舌足らずだが、主張が強い声」(TV.Bros 7月号)と表現している。
初は「わからない」「できない」という「〜ない」という言葉を多く発しながらも確かにそこに意志を込める。
そんな、引き算か割り算かもうわからない演技は演じ手である掘の声が成立させている。
そして、物語ラストでは初は髪を切る。
それは主張の代替行為であるかのように。
堀未央奈は2015年に公開された『DOCUMENTARY OF 乃木坂46』でもラストに髪を切った。
自身のキャラクターと人間性の乖離に悩んだ末の行為だった。
アイドルカルチャーにも造詣が深い山戸監督ならではの演出が憎い。
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