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ロボットランドセル

「なんか…ロボットみたいやね」

ピカピカのランドセルを背負い、歯抜け顔でピースしている写真の中の長男を見てポツリと実家の母が言った。


◇◇◇

今年の4月から小学一年生になった長男は、1500グラムほどで予定より少し早く産まれた、小さめの男の子だった。

体が小さいのでよく体調を崩し、熱性痙攣では3度も救急車で運ばれた。

1歳前に保育園に入園したときは、園内で流行った風邪は必ずもらって帰ってきたし、
少し歳上の甥っ子、姪っ子が我が家に遊びにくれば、興奮しすぎて翌日は必ず熱が出た。

そんな心配ばかりの長男だったけれど、大きな病気はなく、無事に一年生になったので、わたしたち大人はみんなほっと胸を撫で下ろした。

だけど、小さな身体にピカピカのランドセルはあまりにも大きすぎて。

冗談ではなく、本当にランドセルの重みで後ろへひっくり返ってしまったときは、毎日学校へ通えるのだろうか、と本気で心配したものだ。

そんな親の心配はよそに、入学から1ヶ月、長男はワクワクする楽しいことがたくさん詰まった一年生ライフを楽しんでいるようだ。


なんとなく、世間では『ランドセルはおばぁちゃんに買ってもらう』という流れのような気がするのはわたしだけだろうか?

決しておねだりしたわけではないけれど、我が家も長男のランドセル購入は義母が手を上げてくれた。
買い物嫌いでなかなかランドセルを見に行こうとせず、ギリギリの購入になってしまったのが我が子らしい。

イオンや、百貨店など何店舗かわたしも一緒に回ったのだが、どの店でも長男が指差すのは、まさかまさかのシルバーのランドセル。

最近のランドセルは色が豊富なことは知っていた。女の子では今年は茶色やパープルが人気だったようで、王道の真っ赤なランドセルと同じぐらいよく見かける。

パステル調のピンクやパープル、水色など、色とりどりのランドセルも、女の子の少しマセた笑顔とマッチしていてとても微笑ましい。

だけど、男の子のランドセルはやはり黒が多い。あっても紺色、ブラウン、ダークグリーン…。

いくらオシャレなランドセルがたくさん出回っているといっても、シルバー色のランドセルがあるなんて、知らなかったわたしと義母は、なんとか無難な色に落ち着かせようと必死だった。

「ほら、この深いグリーン!かっこいいやん!」

「黒もやっぱり良いね!似合うよ!」

「シルバーやと6年生になる頃、ちょっと恥ずかしいんちゃう?」

わたしたちがいろいろ言えば言うほどに、長男は意固地になってしまい、頑固として意見を譲らない。

「また考え変わるかもしれへんし、まだ日もあるからしばらくしてからまた見にこよか!」
と、その場を離れるのだけれど、数週間後、また見に行くとやっぱりシルバーの一択で、わたしと義母は顔を見合わせて苦笑い。


ここまで言うなら、もうシルバーで良いか、、とわたしもだんだん諦めモードだったが
お金を払ってくれるのは義母なので、義母が納得しなければ当然買ってもらえない。

最後まで店先で戦いを繰り広げた義母と長男だったが、結局この勝負は長男が勝利をおさめた。

戦利品ともいえるNIKEのシルバーのランドセル。ハイブランドのNIKEだし、すごくかっこいい。(すごく高かった!ばぁば、ありがとう!涙)

かっこいい…のだけれど、やはり無難な色を選んで欲しかったわたしと義母は、もはや時代遅れなのだろうか。

入学する前に、保育園時のお友達とランドセルを背負って撮影会をしたときは、みんなの注目を独り占めしていてわたしは気恥ずかしくなった。
(公園にいた知らない人からも指を差されるしまつ)

だけど、お友達ママの「シルバー!?そんなのあるんだね!すごい似合ってるー!」の社交辞令にすっかり気分を良くしたわたしたち親子。

わたしもかなり単純だな。


そして、入学式には散ってしまう桜の下でチョけた顔をしている長男を見ていると、本当によく似合っているような気がしてくる親バカっぷりに、自分でも笑えた。


◇◇◇



「行ってきまーす!」

今日も太陽の下、反射でギラギラと眩しい大きなランドセルを背負って、元気に玄関を飛び出していく。

そんな長男を目を細めて「行ってらっしゃい」と見送る母とばぁばなのでした。

ね、眩しいでしょ。

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