卵かけご飯食べれました
日本人が慣れ親しんでいる卵かけご飯は、海外ではケデモノ料理扱いされている事を皆さんご存知でしょうか。
その原因は鶏卵を生食してはいけないという常識を深く植え付けているからです。ニワトリは哺乳類みたい産道と肛門別々になっているのではなく、総排泄腔という器官でいろんなものを出している、つまりうんこと鶏卵は同じ穴から出るってことだ。そんな穴から出たもの、生で食べるなんて普通考えられないよね?せっかく霊長類が火を使って調理できるようになり、病気を遠ざけることに成功したのに、炊いたご飯の上に生卵を落として混ぜて食べる人は勇気を持て余した上に、よほど腹が減っていたと私は思った。私は一時、生卵を好む日本人実は爬虫人類の子孫ではないかと疑った。
卵かけご飯に関する初めての記憶は中学生の頃見たあたしンちのアニメだった。その日はお母さんはほかにおかずを作っていなくて朝ごはんが卵かけご飯になった。少し遅くてテーブルについたユズが卵かけご飯パクパク食べているみかんを見て「ゔぇっ、今日は卵かけご飯かよ……かあさん目玉焼きにしてくれる?」いつものようにみかんがユズのわがままを叱った。正直あの頃はユズに賛同しか思わなかった。鶏卵を生で食べるなんて常識外れにもほどがある。でもそれと同時にみかんがぱくぱくと卵かけご飯をかきこむシーンが鮮烈に脳裏に焼き付いた。あれは一体どんな味なのか、気になったしょうがなかった。それで私は試しに昨日残されたご飯の上に卵を割って、醤油をかけて混ぜた。できたのは濃いめのオートミールか、粥みたいなもので、あまり食欲をそそらなかったね。恐る恐るにおいを嗅いでみると……
「ヴォエッ!?」
駄目だ!生卵の臭いがひどい!こんなもの口に入れるのは無理だとすぐに分かった。結局フライパンで焼いてチャーハンにして食べた。
I must revenge
年月が重ね、おれが大人になり、むかし苦手だった食べ物を次々と克服した。ピーマン、キュウリ、トマト、レバー。特にトマトは以前吐いてしまうほど拒絶反応を示した食材だったためそれを咀嚼して、果肉を臼歯ですり潰し、青臭い汁が舌の上に転がし、吐き出したいという衝動を耐えながらなんとか飲み込めた時の達成感が大きかった。弱点が一つ一つ無くなって自分が着実に強くなっている感じがすばらしい。
だが生卵は依然だめだ。おれはいろいろ調べて分かった、生食前提のたまごとそうでないたまごの品質は天と地の差があるほど違うことを。いつか絶対に卵かけご飯を克服すると思っていた。そしてそのチャンスは思いのほか早く訪れた。
とある休日、いつもと違う朝食を食べようと、ここ数年展開している日本の牛丼屋チェーン店に行った。また早いからか客はおれ一人しかいない。メニューをめくって、重大なことに気付いた。
ここ、卵かけご飯出してんじゃん。
もはや迷うことはない、今がその時だ、顔の濃い流竜馬がおれにささやく。店員呼びだしボタンを押す。
今がその時だ
「ご注文は決めましたか?」
「はい、たまかけ鮭朝食ください。牛肉追加で。」
「温泉たまごに替わりますか?」
海外店舗は生卵を食えない人に配慮して温泉たまごに替えるというオプションもあるが、でも今さら逃げるわけにはいかない。
「いいえ、生卵でけっこうです」
「わかりました。たまかけ鮭朝食牛肉追加で、少々お待ちください」
しばらくして、注文したやつが運ばれてきた。ご飯、焼き鮭、味噌汁、牛小鉢、漬物、そしてたまごがきれいに並んでいる。おれはまずたまごを割れた。
「違うよ!たまごを直接ご飯の上で落とすのが正しい食べ方だよ!」と言いたくなる読者もいるだろうが、許してくれ。おれは今とても緊張しているんだ。なんといってもおれにとって未知の領域への探検だ。多少のミスは大目に見てくれると助かる。
割ったたまごをしばらく見た。黄身と卵白がはっきり分けて、卵白に変な濁りが見当たらない、きれいなもんだ。やっぱり生食前提の卵は違うんだな。これからお前を食べるんだ……
生卵をご飯の上にかけて、更に醤油をたして、かき混ぜた。
うーん、なんというか、やはりちょっと残飯感がある。写真が汚くてごめんね。恐る恐るにおいを嗅いでみた。くんくん。
おお?なにこれ?
全然臭わないぞ?
これで第一関門突破だ。前回食べれなかったのはにおいから危険を感じたからね。茶碗を持ち上げ、おれは覚悟を決めた。食うぞ。
箸で適量のごはんをつまみ、口に運んだ。たまごを混じった米粒が舌の上に広がる、おれは慎重に咀嚼した。もしやばくなった場合、いつでも味噌汁流し込むつもりでいたが、その心配は必要なかった。
卵かけご飯、すごくうまいじゃん!
さすがは生食用というべきか、嫌なにおいが一切なく、濃厚の黄身がとてもうまい!ああくそ、このおいしさを旨く表現するにはおれの日本語力が足りない、もっとグルメ漫画を読まなきゃな!
卵かけご飯に夢中になり、気づくとごはんは半分しか残らなかった。焼き鮭と牛肉はほとんど触っていない。すこし考えたあと、店員呼び出しボタンを押してごはんをもう一杯注文した。別にいいよな、今日は休みだし。
ご馳走さまでした。