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【無剣闘日記】Summer vacation!
ここはカードダス時空!ゲームキャラたちが自我と人生を持ち、筐体内の電子世界で暮らしてる。シュガーラッシュみたいに想像すればいいぜ!きみはゲームしていない時、剣闘士たちがなにをやっているか、ちょっと見てみよう!
「フッス、フッス、フッス、フッス……」
トレーニング室、トゥーピースのスポーツウェアを着た赤いショートボッブの剣闘士DOOMが懸垂に励んでいるのではないか!しかも普通の懸垂ではなく、体が地面と平行するFront lever pull-upsだぜ!これはキツイ!見ろ、広背筋、腹筋、殿筋、体幹の筋肉が緊迫している。これをもう既に15回もやったんだ!どうなってんだこいつのコアマッスルは!?
「フッス、フーーーンッ!」
ラスト一回!全身に汗が迸る!DOOMは鉄棒を掴んだまま体を地面と垂直する体勢に戻り、手を放して着地した。
「よォっしゃーーッ!」
そしてカボエラような動きで回転しながらパンチとキックを繰り出す!脳内物質の分泌のよるトレーニング・ハイ状態だ!
最後にメイアルーアジコンパッソをきめ、しゃがみ姿勢に止まった、DOOMは一息つき、立ち上がる。スミスマシンの方へ見やる。
「ヌンッ!フゥー……ヌンッ!フゥーー……ヌンッ!フゥーー……」
こちらもすごい!黒いシンクレットを着たバオレット色の髪を淑やかに切り揃えた剣闘士は200㎏のプレートを掛けたシャフトを担い、スクワットしている!歯を噛みしめた、、凄まじい表情になっている顔に血管が浮かび、大腿がはち切れんばかりに膨脹!
「グウーーッンヌァァァァ!」
ラスト一回!力を絞り屈んだ姿勢から直立!そしてゆっくりとシャフトを止め具に戻した。
「ふぅー」
「おう、ガンバってんな、Aarjha。大腿四頭筋はもうデカいぜ」
「人の名前をカリブの海賊風でよばないで」
Aarjhaと呼ばれた剣闘士はくちももごもご動かしマウスピースを吐き出し、1Lボトルの半分を飲んだ。彼女の名はあや、かつてプランフィールドのトゥーフの下で大阪リーグに名を馳せた剣闘士だが、トゥーフが剣闘事業から手を引いたため永久休業になったところ、カード譲渡というミーム伝承行為で別のカードダス時空に論理受肉を遂げ、電子世界転生を果たした。筋肉もりもりのマッチョウーマンとしてな。
「いやぁ、しかし夏休み?ってのがいいよな。ちびっこがわんさか集まって来てよ」
DOOMはジムの天井近くに設置してあるモニターを見ながら言った。モニターは外の世界、つまりカードダス筐体のモニター外の景色を映し出している。いまはちょうど、可愛らしい幼い少女が台の前に座り、真剣にボタンを押している。
「DOOMは夏休みが初めてだっけ?長い休みになるといっぱい来るのよ。でも台を親が仇みたいにパンパン叩く子もいるから油断できない」
「そうか?まあでもやはりかわいいよな」
「子供好きなタイプだと思わなかったわ」
「そらあたしだって常人並みの審美眼があるから、脂っこいオタクと仏頂面の中年より、つぼみにような少年少女来てくれた方がうれしいぜ。まあ、うちのマスターは前者の方だけどな……」
「いやでも成年者のほうがやはり反応神経が育てられたから気持ちよく踊れるんでしょう?子供だとEASYでもアピール失敗することがしょちゅうある」
「んああ、なんであたしのマスターはLv8のタイムボーナスを0.5秒で決める天才少女ではなかったのかー!?」
「剣闘士はマスターを選べない、観念しろ。ベンチやるから手伝って」
あやはそういい、ベンチをスミスマシンの柱の中央に置き、シャフトの両端に合計150kgのプレートを設置した。
「おいおい、150kg?またでかくなる気?服が着れなくなったらどうする」
「心配ない。私はもう二度と表舞台に出ることないからね。これからは違うやり方で強さを求めるんだ」
「悲しいこと言う」
DOOMはベンチに寝たあやの頭側に立ち、シャフトを握ってサポート姿勢に入った。
「Push when you ready」「ヌーン!」「オーライ」「ヌーン!」「オーライ」「ヌーン!」「オーライ。キープオン!」「ヌゥゥーン!」
夏休み、それは成年者が剣闘しつらい季節。
(終わり)
これがあや=サンです。
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