仕事のやりがいを押し売りをしていないか?
倉庫作業は、単純作業、ルーティーン作業というイメージが強く、仕事にやりがいを持てないのではないかと考える人が多いと思います。
それは、ある意味、正解であり、間違いでもあります。
問題なのは、仕事と自分の将来の夢、ビジョン、価値観がどのように関り、繋がっているかなのです。
倉庫作業が「単純作業」と見なされるには理由があります。
倉庫作業として、多くの人が一番最初に思いつくのは、ピッキング作業でしょう。
なぜ、ピッキング作業なのか?
メディアなどで放送される際、一番、多く放送される場面と言えばピッキング作業だからではないでしょうか。
そして、求人情報誌や求人サイトなどを見ても、「誰にでも出来る、簡単に出来る、すぐに覚えられる作業です」とアピールされている作業としての代表格がピッキング作業なのです。
なので、多く人は、倉庫作業=ピッキング作業というイメージを強く植え付けられていると思います。
もちろん、倉庫作業は、ピッキング作業にもいろいろとあります。
荷物の検品や商品の格納、梱包などなど、やることは沢山あります。
どの作業も作業だけを切り取ると、単純作業になります。
検品でいえば、伝票の内容と納品された現物が合っているかの確認。
数違い、破損などがあれば、その修正や連絡・報告の作業が必要ですが、毎回毎回、あるというものではありません。
格納作業でいえば、指定の場所へ入荷した荷物を格納する作業です。
その際、賞味期限・消費期限がある場合は、荷物も置き換えが発生する場合もあります。
梱包作業は、ピッキングされた商品を指定の箱などに綺麗に入れていき、動かないように梱包材などを入れて、送り先が書かれた送り状などを貼ります。
この際、誤ピックなどがあれば、修正などを行うこともします。
このようにそれぞれの作業は、一つ一つを取り上げると、単純作業であり、スピードなどを問わなければ、誰にでも出来て、すぐに覚えられるものです。
なので、パート。派遣社員・スポットワーカーといった人たちが多く働いています。
この人たちに、仕事にやりがいを持ちましょうと言っても、興味を持つでしょうか?
契約の時間まで働き、与えられた作業を行い、それなりの給料を貰えれば、やりがいが有ろうが無かろうが問題ないと思います。
もちろん、一日の大半をその作業に費やすのですから、面白みのない作業では、長く続かないでしょう。
だからと言って、仕事に対してやりがいを持とうとは考えないでしょう。
考えるとしたら、問題なく指示された作業をミスをしないで一日を終えることではないでしょうか?
では、正規雇用者の作業者は、どうなのでしょうか?
非正規労働者のパート・派遣社員・スポットワーカーとは違い、正規雇用者の作業者には、ある程度の責任が求められます。
というよりも、会社としては求めますし、成果も求めます。
指示された作業だけ行っているのでは、非正規作業者と何ら変わりがありません。
なので、正規作業者には、仕事にやりがいを持たせる必要があります。
では、どうやって仕事にやりがいを持たせるのでしょうか?
多くの場合、正規作業者であれ、非正規作業者であれ、作業している内容はさほど変わりがありません。
言ってしまえば、同じような作業を行っています。
もちろん、現場リーダーや監督者は別ですが。
では、正規作業者で仕事にやりがいを持ってるのでしょうか?
正直、非正規作業者と同じように、問題なく一日が終わればよいと考えている人が大半です。
倉庫作業は、その日の入荷・出荷作業が終われば、あとは構内の整理整頓や清掃業務となりますので、一日ごとに区切りがつきます。
なので、仕事にやりがいを持つためには、自分で考えないと何事もなく一日が終わり、同じ日常が淡々と続きます。
では、仕事にやりがいを持つために、自分で何かを考えている正規作業者がどれほどいるのでしょうか?
このようなアンケート調査は、まず行わないでしょう。
なぜなら、真面目に答える人なんて一握りだからです。
とはいえ、仕事にやりがいを持たせることは必要です。
そうでなくては、いつまで経っても非正規作業者と同じ作業しか行ってくれません。
では、やりがいとは、なんでしょうか?
ネットで調べると
「やりがいとは、仕事を通じて得られる満足感や充実感のことを指します。
人によってその定義は異なりますが、一般的には以下のような要素から成り立っています。
達成感: 難しい課題を乗り越えたり、目標を達成したときに感じる満足感。
意義: 自分の仕事が他人や社会にとって有益であると感じること。
成長: スキルや知識が向上していると感じること。
自主性: 自分の判断や選択で仕事を進めることができる自由度。
認知: 職場や社会からの評価や感謝を受けること。
やりがいは、個々人の価値観や仕事に対する姿勢、職場環境によって大きく異なるため、自分自身で何を価値あると感じるかを理解することが重要です。
また、仕事の中でやりがいを見出すことは、長期的なモチベーションの維持や仕事のパフォーマンス向上にもつながります。」
達成感・意義・成長・自主性・認知
確かにこの5つの要素は必要だとは思いますが、根本的なものが一つ抜けていると考えます。
それは、将来の夢、目的、ビジョンです。
言うなれば、自分はどこへ向かいたいのか、どこへ向かうのか。
その方向性を示す目的地です。
これは、星でいえば北極星のように動かず、基本的に変わることがない不変なものであるべきです。
企業では、よくキャリアパス(デザイン)とか昇進・昇給などでやりがいを持たせよう場合が多いですが、そこが根本的に間違っているのです。
キャリアパスとは、会社から提示されるものではなく、自分で描くもののはずです。
そうでなくては、会社の言いなり、会社の駒で一生を終える事になります。
そんな人生を今の若い人は送りたいと思っているのは、ほんのごく一部でしょう。
また、昇進・昇給したからと言って、会社に縛られる人生を送りたい人がどれほどいるでしょうか?
どれもこれも、会社から提示される、与えられるものばかりです。
そこには相手の想い、ビジョン、価値観は、まったく反映されていません。
作業者にやりがいを持ってもらうためには、会社の押し付けでは反発を生むだけです。
ところが、多くの場合、その押し付けをしてしまっているのです。
なので、作業者は、やりがいなど感じられず、やらされ感ばかりが高まってしまうのです。
仕事にやりがいを持たせるためには、少なくとも内発的動機付けが必要不可欠です。
そのために、相手の想い、ビジョン、価値観と向き合い、相手の人生に寄り添った提案をする必要があります。
相手の想い、ビジョン、価値観と向き合うことで、相手の内側に抱いている身に付けたいこと、興味があることなどを共有することが出来て、相手の望むものに沿った提案をすることが出来るのです。
そこまでする必要があるのかと思うかもしれません。
ただ、初めから、相手が仕事の中に自分が求めているものがあれば、そんな面倒なことはする必要はありません。
言ってみれば、入社する際に、相手が仕事に対して何を求めているのかをハッキリさせることで対応は変わってきます。
人手不足の物流業界において、この部分はまったく機能していないと考えます。
人手不足の為、よほどのことがない限り、入社が出来るはずです。
私自身、何回も転職をしていますが、1回も断られたことがありません。
もともと、仕事にやりがいを求めていないのに関わらず、やりがいを与えられても、単なるやりがいの押し売りに過ぎないのです。
非正規作業者であれば、もっと分かりやすいかもしれません。
他にやりたいことあって、そのための資金作り、生活費の足しの副業と考えて働いているのに、会社側からキャリアパスや昇進の提案をされても、それを受けるはずがありません。
正規作業者であれば、副業などと考えていることはないでしょうが、会社から提案されたものが自分の考えている将来とは、まったく関係ないものであれば、そんなことに時間を割く人はいないでしょう。
もちろん、担当している仕事はしっかりと行っている事は前提ですが。
ただ、ここで問題になってくるのが、誰しも、自分の将来の夢、ビジョン、価値観を明確に持っているとは限らないのです。
物流の現場で働いている人の中で、明確に持っている人の方が稀と言ってもいいでしょう。
なので、会社側がキャリアパスや昇進などの提案しても、暖簾に腕押し状態で、相手には何も響かないのです。
なぜ、響かないのか?
それは、自分の将来が具体的にイメージ出来ていない事で、キャリアパスや昇進を提案されても、それを受け入れて、自分の将来がどうなるか、イメージ出来ないのです。
イメージ出来ない以上、今の安定した状況をあえて変えるという決断をする必要がないという、現状維持という意識が強く働き、曖昧な返事や対応しか取れず、中途半端な状態になってしまいます。
内発的動機付けが出来ていない以上、中途半端な行動になり、会社側からしたらやる気がないと捉えられる可能性すらあります。
では、このような中途半端な行動を取っている作業者が悪いのでしょうか?
もちろん、受け入れたからには、精一杯やるのが筋ではありますが、初めから中途半端な動機付けで始めているので、緊張の糸が切れたり、自分が対応できるレベルを越えてしまったら一踏ん張りをすることは、そう簡単には出来ません。
私的には、相手の事を理解せず、会社側の要望だけを押し通してしまう会社側も悪いと考えます。
昭和のように一つの会社で一生を勤め上げる時代は終わり、今の時代は、自分の人生の軸(価値観)を大切にして、自分の力で自分の人生を歩むのが今の時代だと考えます。
なので、会社はあくまでも、自分が活躍する一つのステップ(ステージ)に過ぎず、仕事に対してやりがいを見出せる人は、自分で見出しているのです。
なので、会社側が仕事に対してやりがいを持ってほしいと思っているのであれば、ゴールが見えないキャリアパスや昇進をいきなり提案するやりがいの押し売りをするのではなく、まずは、相手の人生の考えをしっかりと聴いて、相手に合ったものを提案する必要あるのです。
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