『おかえりモネ』チーフ演出の言葉
午前中アップした「何人知ってる!?『二月の勝者』の子役達」の記事にもチラッと触れたのですが、朝ドラ『おかえりモネ』のチーフ演出・一木正恵さんが投稿された文章が、興味深く、感銘を受けましたのでその感想です。
「私の”人生をかけた一作”『おかえりモネ』を振り返ってみました」というタイトルがまずスゴイと思うのですが、これは朝ドラのチーフ演出をやれるのは生涯一作と思っているという、一木さんの想いから来ているようです(実際にはまた機会があるかも知れません)。
目次に即して感想を述べていきます。まずは「ドラマ演出の仕事とは?」。案外知られていないドラマ演出の概要をわかりやすく示すと共に、『おかえりモネ』における実際のシーンを挙げながら、その細かい演出手法を解き明かしていて、興味深く。
次が「15~25歳に届けたい、おかえりモネの世界」。これはドラマの核となる届けたいメッセージについて。企画の原点は、気仙沼市階上中学校の卒業式の答辞の映像にあったといいます。全国ニュースでも伝えられた印象的なもので、自分も記憶に残っています。
「自然の猛威の前には、人間の力はあまりにも無力で、わたくしたちから大切なものを、容赦なく奪っていきました」「苦境にあっても、天を恨まず。運命に耐え、助け合って生きていくことが、これからの私たちの使命です。」「見守っていてください、必ずよき社会人になります」
「大人にならねばならなかった、希望にならねばならなかった子ども達の、その後の人生の奮闘や葛藤を見つめたいと思ったことが、企画の原点」ともいう一木さん。耕治(内野聖陽さん)の例の名セリフに、そのメッセージは集約されている気がします。
「娘たちだけじゃないな、子供たち全員に言ってやりたい。どうなるかわからない世の中、どこに行ったって構わない。ただ、お前たちの未来は明るいんだって。決して悪くなる一方じゃないって、俺は信じてえ。言い続けてやりてえ」
そして最も興味深かったのが「朝ドラと現代劇、そして震災」。朝ドラは史実ベースが定石で、オリジナルで成功したのは『あまちゃん』だけとし、『ゲゲゲの女房』(史実ベース)と『まれ』(オリジナル)のコアスタッフだったので、その難しさは誰よりも分かっていると正直すぎる告白(笑)。
最後の「朝ドラと見逃し視聴」は、『おかえりモネ』への低視聴率やご都合主義、物語に起伏がないといった、ネガティブな評価への、ある種の反論と言えるかもしれません。その上で、一木さんは新たなる可能性(視聴者)も感じているようです。
「大きな展開や分かりやすい対立構造がなくても、ほんの小さな心の機微を大切に感じとってくれる。迷いやためらいを見せる人間をいとおしいと見てくれる。そんな優しく繊細な、受け手の存在を感じるのです」
物語も佳境に入ったここひと月、ネガティブなネット記事はめっきり少なくなり、むしろ絶賛モード。「#俺たちの菅波(坂口健太郎さん)」人気もあるでしょうし、伏線回収などを経て、作品への理解が深まったということもあるのでしょう。ちょっと掌返しな感じもしますけど。
視聴者は、毎クールたくさんのドラマを「消費」しています。とはいえ、最後まで支持される作品はほんのわずかで、辛辣な批判を浴びた上、途中で見ることを止めてしまう人も少なくないでしょう。自分も人のことは言えませんが、制作・演者側へのリスペクトを忘れてはいけないなと。
おまけ:金曜日にやっと菅波先生さんが登場したとはいえ、菅モネ不足だった今週。そんな方におすすめなのが、『櫻井・有吉THE夜会』に登場した坂口さん。
数年前は「家に冷蔵庫がない」と語っていた坂口さんですが、最近はあれこれ増えたそうで、炭酸メーカーを所有していることをドヤ顔でいうあたりが面白いですし、仲良しだという俳優の笠原秀幸さんとのイチャイチャぶりも見ものです(29分辺りからの登場)。