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ロングラン映画『ゆきゆきて、神軍』の衝撃

『鬼滅の刃』が映画興収300億円突破まで、『千と千尋の神隠し』(2001年)の253日を大幅に更新し、歴代最速の59日だったことが話題ですが、『千と』の上映期間の長さも気になって調べたら、1年以上のロングランだったようです。

近年の映画の上映期間は、平均的には1か月ぐらい、人気がなければ2週間で打ち切り。ヒットの程度に応じて、2か月以上ということもあります。ちなみに、歴代最長は、アニメ『この世界の片隅に』(2016年)の1133日。

ミニシアターブームが起こった1980年代後半。『ベルリン・天使の詩』(1988年)や『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年)など、単館上映でロングランヒットとなった作品が次々に生まれました。

そんなロングランヒット作品の一つが、ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』(1987年)。当初は東映系での上映も検討されたようですが、その内容のあまりの“ヤバさ”から、ユーロスペースでの単館上映となったものの、3か月に渡って立ち見が出るほどの熱狂ぶり。

天皇に向けパチンコ玉を撃った過去を持ち、過激に戦争責任を追及し続けるアナーキスト・奥崎謙三。そんな彼が、ニューギニア戦線で起きた疑惑の真相を探るべく、当時の上官を訪ね歩く姿を追う。

ニューギニアの地獄で起こった、現地住民らの食人肉などの事実も衝撃的なんですが、この奥崎という人の迫力がとにかくすごい。自らの信念(信仰)の為なら暴力はおろか、殺人も辞さない、本物の“ヤバイ”人で、元上官らを怒鳴り散らし、容赦なく殴り倒す様が凄まじい。

監督の原一男さんともずいぶん揉めたみたいですが、殺人未遂で収監中に映画が完成。昭和天皇が重篤状態となり、日本全体を自粛ムードが覆う直前の公開でギリギリセーフ、とさまざまな奇跡によって世に出た傑作。キネマ旬報ベスト・テン第2位。

満州事変から太平洋戦争にかけて、政治家や軍事指導者たちの「戦争責任」についての検証は割とありますが、昭和天皇の「戦争責任」を正面から扱う日本のメディアは案外少ないのが現状。「タブー」という「思考停止」からは、何も生まれないんですけどね。



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