かつては国民病…「結核」を描いた作品

3月24日は世界結核デー。細菌学者ロベルト・コッホが1882年に結核菌の発 見を発表した日にちなみます。結核は 労咳や肺病、死病、国民病とも呼ばれ、1950年以前には日本人の死因のトップで、患者数は年間60万人以上、死亡者数も10万人を超えていました。

現在でも、世界では毎年1千万人近い人々が発病。エイズ・マラリアと並ぶ「世界の3大感染症」の1つ。欧米の先進諸国と比べると、日本の患者数は高い水準で、決して“過去の病気”ではなく。実際、自分も仕事で排菌患者と、それとは知らずに面談したことも。

石川啄木・森鴎外・正岡子規・国木田独歩・二葉亭四迷・樋口一葉など、明治の名だたる文学者たちが結核で亡くなっているだけに、いくつもの小説(およびその映像化作品)で、結核患者が描かれています。というわけで、今日は結核患者を描いた作品を挙げてみます。

まずは、幸田露伴の娘・幸田文さんの小説『おとうと』。何度か映像化されていて、市川崑監督版(1960年)が名作のようですが未見。郷ひろみさんと浅芽陽子さんが主演した1976年版を見ましたが、中々の秀作。1990年には、斉藤由貴さんと木村拓哉さんの共演でドラマ化されているようです。

げん(浅芽さん)は十八歳、弟の碧郎(郷さん)とは三つ違い。リュウマチで手足のきかない母の代りに、家事のほとんどをこなしてきた。げんは碧郎にとって姉以上の存在であった。げんが二十歳、碧郎が十八歳の夏、大きな不幸が二人を襲った。碧郎の身体が不治の病・肺結核に蝕まれていたのだ。

続いては、名女優・大竹しのぶさん初期の代表作『あゝ野麦峠』(1979年)。原作は、ベストセラーとなった山本茂実さんのノンフィクション『あゝ野麦峠 ある製糸工女哀史』で、大竹さんは、結核で亡くなる主人公の工女を演じました。

明治時代、貧しさから信州岡谷の製糸工場へ糸紡ぎ工女として赴き、過酷な工女生活の中、悔いなく健気に生き抜いた飛騨の少女たちの姿を描いた青春群像劇。

最後は、宮崎駿監督によるアニメ映画『風立ちぬ』(2013年)。主人公の妻が結核で亡くなるのですが、声を演じたのは女優の瀧本美織さん。朝ドラ『てっぱん』の主演女優ですが、その時の親友役を演じたのが、同日公開予定だった『かぐや姫の物語』の主役・朝倉あきさんでした。

大正から昭和へ、1920年代の日本は、不景気と貧乏、病気、そして大震災と、まことに生きるのに辛い時代だった。そして、日本は戦争へ突入していった。後に神話と化した零戦の誕生、薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く─。

その後、宮崎監督は引退を撤回し、『君たちはどう生きるか』を制作中。さすが高畑監督、わかってらっしゃいましたね。

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