女優ノート『木村文乃さん』
気になる女優さんの出演作についての覚え書き「女優ノート」。今回はドラマ『七人の秘書』に主演する木村文乃さん。
かつて木村さんは自分のことを「補欠ヒロイン」と評していました。「先に検討されているヒロインの方がいても、何かの事情があって、自分に役がまわってくる」といったものです。
自虐ではなく、冷静な自己分析とポジティブな発想から出た言葉ですが、正統派美人で演技力もあるのに、これといって代表作が思い浮かばない、というのはあるかも知れません。伊藤歩さんと似すぎる問題とか、芸名が木村佳乃さんと紛らわしいなんてことも影響があるのかも。
そんな木村さんの作品でまず挙げたいのは『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(2015)。『七人の秘書』で再共演する菜々緒さんのブレイク作として知られていますが、木村さんも実に魅力的。
刑事の主人公・里見(松坂桃李さん)の先輩にして恋人の猪熊役。半同棲生活のイチャイチャも実に楽しい。実は殺人鬼ながら、猪熊に近づく橘(菜々緒さん)との関係も百合風味。
次はTBS金曜10時枠で放送されながら、最低視聴率3.8%を記録した『神の舌を持つ男』(2016)。向井理さんが戦犯のようにも言われましたが、どう考えても「構想20年」と言っていた堤幸彦監督のせいでしょう。映画化も。
堤監督の『TRICK』的ギャグ満載で、コメディーが滑る時の恐ろしさを感じます。木村さんも監督の要求に沿ったハイテンション演技で痛々しいんですが、今見ると逆に面白い。毎回のゲストも豪華。「女優のプライドをズタズタにされた」と語った木村さんが、何かを吹っ切った作品。
最後は木村さん主演の『サギデカ』(2019年)。『殺人分析班』シリーズ(2015年~)では捜査一課の刑事を演じている木村さんが、本作では振り込め詐欺グループと戦う、捜査二課の刑事・今宮(木村さん)を演じています。
振り込め詐欺に手を染める若者・加地(高杉真宙さん)と今宮を軸に、警察側と犯罪者側の心情にまで踏み込み、振り込め詐欺がリアルに描かれています。
『透明なゆりかご』『きのう何食べた?』で知られる安達奈緒子さんの脚本が冴えわたり、令和元年度(第74回)文化庁芸術祭賞 テレビ・ドラマ部門大賞を受賞。傑作にして、現時点での木村さんの代表作。
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