俳優ノート『松重豊さん』
気になる俳優さんの出演作についての覚え書き「俳優ノート」。今回は、2021年夏ドラマ『孤独のグルメ Season9』に主演する松重豊さん。ザズウ所属。
福岡出身俳優・女優は数多いですが、博多弁強めといえば松重さん。同郷の光石研さんや西南高校の後輩でもある鈴木浩介さんらと共演している福岡ローカル番組『俺達のノープラン×ドライブ』では、小気味よい博多弁トークが炸裂しています。
大学進学し上京した松重さん。三谷幸喜さんの「東京サンシャインボーイズ」を経て、蜷川幸雄さんの「蜷川スタジオ」へ。退団後の1992年、黒沢清監督『地獄の警備員』で映画初主演。以降、バイプレイヤーとしてキャリアを重ねていきます。
山ほど映画・ドラマに出演していますので悩むところですが、まずは映画『しゃべれどもしゃべれども』(2007年)。松重さんは、「話し方教室」に通う口下手な元プロ野球選手役を名演。佳作。
東京の下町を舞台に、不器用な人間たちの友情と成長を描く感動ドラマ。ひょんなことから「話し方教室」を始めることになった二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一さん)の下に、ワケありの3人が集まる。
次は近年の作品で、ドラマ『アンナチュラル』(2018年)。UDIという架空組織を舞台にした法医学ミステリーで、松重さんは元キャリアの所長役。登場人物がどれもいいのですが、松重さん演じる神倉さんは屈指の愛されキャラ。そして、やる時にはやる男。傑作。
ミコト(石原さとみさん)は、死因究明のスペシャリストである解剖医。彼女が許せないことは、「不自然な死(アンナチュラル・デス)」を放置すること。新設されたUDIラボで働きながら、「死」の裏側にある謎や事件を、明るくスリリングに解明していく法医学ミステリー。
『パーフェクトワールド』(2019年)や『きょうの猫村さん』(2020年)なども忘れがたいところですが、最後は前クールの『今ここにある危機とぼくの好感度について』(2021年)。松重さんは、隠蔽体質の大学総長役でしたが、最終回の「必ずや名を正さんか」からの件は名シーン。傑作。
主人公(松坂桃李さん)は大学の広報マン。次々に巻き起こる不祥事に振り回され、その場しのぎで逃げ切ろうとして追い込まれていく。その姿をブラックな笑いとともに描きながら、現代社会が抱える矛盾と、そこに生きる人々の悲哀に迫る。