夢にビビって飛び起きた

日記

 やぁ諸君、おはよう。今日は久々に怖い夢を見て飛び起きてしまった。いや、ここ数日いつも怖い夢を見ているのだが、今日は久々に内容をはっきりと覚えていたのだ。
 ということで、見た夢というものを忘れないうちに記録しておこうと思う。
 いつもなら突拍子もない展開が多い夢なのだが、今回の夢はかなりリアリティのあるものだった。諸君は怖い夢にうなされた時、どうしている? 夢の中で頑張った自分にご褒美なんかあげているかい?
 小生は、正直SANが削られてしまったのでね。今日はあまいまのでもたべようかなと思っているよ。
 昨晩缶チューハイを二缶開けてしまったことが原因だろうか。最近酒を飲まないよう気をつけていたのだが……。


本文

 私は、以前勤めていた会社に再就職することとなった。以前勤めていた会社と言えば、環境保護を口にするばかりで、実際のところありとあらゆる環境破壊企業の業務報告に数値改竄の手伝いをするような会社だ。見栄えを良くして環境に配慮している会社であることを世間に証明するためだけの詐欺会社。
 ところが、私がその実態に耐えきれず退職した後に、これまでの悪行が世間に露呈。勝手に事業縮小してくれていた。そんな会社が、再起奮闘するべくわざわざ私を呼び付けたというわけだった。
 とはいえ、会社は酷い有様だった。電気が通っていないのか、それとも節電中なのか、室内は薄暗く、窓から差し込む太陽光だけが頼りだった。靴箱から既に埃の匂いにまみれており、差し込んだ光が舞った埃を照らしてキラキラと輝いている。ギリギリまで書類整理に追われていたのだろう。廊下にまで積み上げられた資料の山を見て、私は思わず笑いが込み上げてきた。
 今更なぜこんな場所で働かなきゃならないのだと思う気持ちと同時に、過去の過ちを払拭して前に進もうとしているなら手伝いたいと思う私も存在している。過去に裏切られた気持ちを経験したこの場所だが、再びやり直すつもりであるのなら、力を貸してもいいとは思っていた。これはきっと私の甘さだ。
 私の最初に受け持った仕事と言えば、書類整理と辞めた人たちのデスクを整頓するくらいだった。積み上げられた書類を片付けながら、私はため息をつく。
「なんでここ、こんなに蜘蛛の巣だらけなんですか」
 そもそも蜘蛛の巣と言っていいのだろうか。昆虫類を捕えるために蜘蛛がこしらえるネットとは少し違う。ネバネバはしているが、どちらかと言うと外壁だ。蜘蛛の巣と咄嗟に認識できたのは、どこかで見覚えがあったからだろう。まるで家のような見た目のそれをティッシュで包みながら、私は二度三度悪態をついた。
 さて、ある程度デスク周りを片付けていると、私は違和感に気づいた。黒くて大きい何かが、デスクの引き出しから顔を出したのだ。
「ゴキブリ?」
 咄嗟に叩き潰そうとティッシュを持った手を振り上げた私は硬直した。違う、ゴキブリなんかじゃない。
 その時になって私はこの蜘蛛の巣が誰のものであるか理解した。というのも、引き出しの中からたいそう迷惑そうに姿を現したのは、タランチュラだったのだ。
 私はそっと後ずさりした。前にこのデスクを使っていた人間は、恐らく蜘蛛を逃がしたまま辞めていったのだろう。常識じゃとても考えられない行動だ。
 そして私は今しがた、タランチュラのお家を破壊してしまったわけだ。怒られているに決まっている。逃げるように後ずさりし壁にまでやってきた私は、ふと頭の上にチラつく巨大な緑の葉っぱが気になった。
 なんだこれはと右手で払い除けた瞬間、見た目とは異なる異様な硬さが手につたわり脳がバグる。
 ハッとそこに目をやると、なんとコノハムシが二匹、堂々と壁を這いずり回っていた。そんな馬鹿なことがあるもんかと言葉を失う私の背後で、帰ってきた上司が声をかける。
「どうだい? 君が望んでいた環境に配慮した会社になっただろう?」
 私は頭を抱えた。どうしてこのバカは外来種という単純な問題にすら興味が無いのだろう。
「そんなことより早速仕事だ。この資料を読んで当自治体の環境基本計画に付随しているよう内容を書き換えてくれ」
 結局、中身は変わっていなかった。私は早速転職アプリを立ち上げる。こんな場所にはいられない。だってほら、また目の前でタランチュラが走り回っている。ここの連中は食われて死ねばいいんだ。
「できるよね? あこうくん」
 ふと、頭の上にガサッと何かが乗せられた。恐る恐る目線を動かした私は、背筋が凍る感覚を人生で初めて体験する。
 頭の上に、三匹のタランチュラが乗せられていた。
「ね? できるよね?」
 あまりの恐怖に叫び声をあげた小生は、そこで目を覚ました。
 また、不思議な夢を見てしまったというわけだ。

あとがき

 怖い夢を見る理由はよく分からないけど、大抵の場合怖い夢はいい意味があるらしい。小生にとって素敵な一日になると嬉しいなぁなんて思う。
 ところで、来週七月二十一日。小生は久々にSAN-DAIという即興演劇バトルに出場することにした。いや、今まで出たくなかった訳では無い。ただ、ここ数ヶ月あまりにも大変なことが重なりに重なって出られなかったのだ。むしろSAN-DAIには出場したくてたまらなかった。
 かなり長い間演技の練習も発声練習もましてや物語を作る活動すら怠ってきた小生だが、果たしてどこまで戦えるだろうか。
 まぁ、頑張れるだけ頑張ってみようと思う。
 ところで話は変わるが、昨日はオムライスを食べた。たまに食べたくなるんだよね、オムライス。さて、今日は何を食べよう。色んな美味しいに包まれて、幸せになりたいなぁ、なんて思う。そういう小さな幸せを過ごすことで、悪い夢を払拭していきたい。

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