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ダンキンドーナツ(#201)

セミの鳴き声が執拗に聞こえる。朝の6時からこんなに聞こえるなんてめずらしい。

私はトイレに腰掛けて、クモを見ている。雲ではない。窓に飼っている(と私が勝手に決めてる)蜘蛛だ。今では結構立派なパレスを彼女は築いた。だが、獲物はさほどかかっていない。これから続々と姿を表すハエを次々と絡め取ってほしい。期待と共に眺めているのだ。眺めることは毎朝のルーティンの一つになっている。私は便秘で悩んだことが生まれてこのかた一度もない。あんなに大量の抗生物質を毎日飲んでいるのに、快便の日々だ。ありがたい。だからトイレに長いこと座っている必要はないのだが、ただぼーっとして、クモを眺めたり、セミの声を聞いたりするのに、余分の時間をとっている。気が向けば、アップルウォッチでスヌーピーの文字盤を見て楽しむ。

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<はいここでアップルウォッチのスヌーピーの文字盤の説明>
無料で手に入るスヌーピーの文字盤は、5秒くらいのアニメーションが楽しめます。100種類以上もあるアニメーションはスヌーピーと黄いろい鳥「ウッドストック」の見せる動きが特徴です。時計の針と遊んだり、地域の天気に反応したりと、楽しくて機知にとんだ動きがいっぱいです。
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私は腕を上げてアップルウォッチをみる。画面が開いて、スヌーピーの5秒アニメが始まる。終わったら、手首をひねって、時計をいちど下に向けてまた上に戻すと新しいアニメが始まる。これは病みつきになる。永遠と見続けることができる。そして、はたと気づいた。

あ、そうか。ダンキンドーナツのダンキンって、Dunkingのことだ。なんだ、そうか。なんで今まで気づかなかったんだろう。

スヌーピーとウッドストックが赤い屋根の上でコーヒーの入ったマグカップとドーナツを手にしている。ふたり同時にドーナツをコーヒーに思いっきり突っ込んで(ダンキンして)、しぶきが飛んであわわになった。そのアニメーションを見た時に気づいたのだ。

点と点がつながる瞬間。

あなたにもこういうことあるでしょう?これはこれ・あれはあれと頭の中でしっかりと分けられていて、実はこの二つにはとてもはっきりとした共通点があることに、あるとき気がつく。そして気づいた時には、「なんで、こんな当たり前で簡単なことに、今まで気づかなかったんだろう」と呆れる。

それが今朝の私の「ダンキン」だった。カタカナで「ダンキン」とかくと見た目でもう「ダスキン」に寄ってしまう。子供の頃はうちもダスキンのモップを定期的に取り替えてもらっていた。だから、「パッケージになった商品」という意味のダンキンだったのだ。いっぽう、英語で書くdunkingを日常で私はほとんど使わない。ビスケットを紅茶に浸し食べるのをdunkingというが、私はそんな食べ方しない。だから言葉で説明することもしない。

しかし、文字盤のあのアニメーションを見たとき、スヌーピーの右手のドーナツが勢いつけて左手のコーヒーに突っ込まれたとき、「ダNキNG!」と音がしたのだ。二つの言葉が合わさったのだ。バスケットのダンクシュートに近い音がしたのだ。アニメーションの動きってすごいな。同じ内容を新聞のコマ割りマンガで読んだとしても、きっと「ダNキNG!」の音はしない。

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<ではウィキペディアから引用しよう>
「ダンキン」(英語: Dunkin')。店名は、ドーナツをミルクやコーヒーに浸して(Dunkin')食べる欧米の習慣にちなむ。この食べ方は1934年の映画『或る夜の出来事』でクラーク・ゲーブル演ずる主人公・ピーター・ウォーンがドーナツの食べ方として紹介していたことから来ている。
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「スラムダンク」のダンクも同じだ。

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スラム(slam)は「強くたたきつける」、ダンク(dunk)は「物を液体中に浸す(特にアメリカ英語では、勢いよく中にぶち込むニュアンス)」を意味する言葉です。
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トイレから出た私は、お腹もスッキリしたけど、頭もかなりスッキリした。ふふふ。あなたが最近スッキリしたことはなんだろう。あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。

えんぴつ画・MUJI B5 ノートブック

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