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1.5人称(#219)

今日は30度を超える夏日だった。

日中ずっとセミが鳴いていた。夕方になって涼しくなるとセミは鳴き止み、ねぐらを探す鳥の鳴き声がとって変わった。と思ったら、またセミが戻ってきて昼間とは違う鳴き方で空気を震わせる。耳鳴りがしてるんだろうかと思うような、ムラのない平板な音がずーっと鳴っている。

今日も少しの鼻水と少しの咳をやり過ごし、できるだけ休んで風邪の症状を完璧に消してやろうと踏ん張った。明日にはその成果が出るかな〜。

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昨日から読み始めている「ナイルパーチの女子会」から新たに気づいたことがあった。今の時点で、だいたい5分の1くらい読んでいる。主人公は二人。エリートでお嬢さんでストーカー気質の栄利子と、ダラダラ生活を書いて素朴だと人気がある、主婦のブロガー翔子だ。

この小説は、文体が変わっている。三人称のようで、地の文が一人称になったりする。つまりこんな感じ。

1章では、栄利子の視点で文章が書かれる。<真新しい空気が、志村栄利子の常に結論を元えたがる心と身体を落ち着かせる>というふうに三人称で語りつつ、地の文が一人称になって、栄利子の思いを描写する。<泳ぎたいな、と思った>と、カギカッコなしで栄利子の気持ちを描写する。<私>という主語は使わない。だから、一人称っぽい、三人称とも言える。どうやら、こういうのを1.5人称と呼ぶらしい。

その次の2章では、翔子の視点で文章が書かれる。<丸尾翔子は携帯電話でブログを更新する手を止め、視線を上げる>というふうに三人称の文章で書いていると思えば、<あの洗濯物、落ちそうだなあ、と向かいのマンションのベランダにはためくデニムを見つめた。若い子なんだろうな、あんなスキニー、とてもじゃないが30歳になった翔子には穿きこなせない>と、こんなふうに、カギカッコなしで、「私」は使わずに書かれる。

読んでいて、違和感がないところがすごいなと思った。誰の視点の文章なのか、ちゃんと章で分けて書いてるから、混乱も違和感もないんだろうな。こういうやり方もあるのか、と勉強になった。

クロカワ(AIアシスタント)に、太郎と花子が出てくる1.5人称の文章を書いてくれと頼んだ。それが以下になる。

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太郎は部屋の窓辺に座り、曇ったガラス越しに街を見つめていた。なんであんなことを言ってしまったんだろう。後悔が胸の奥でじんわりと広がっていく。昨日の喧嘩なんて些細なことだったのに、どうしてあんなに感情的になったのか。謝らなきゃいけないのは分かっている。でも、どうやって切り出せばいいんだ。
階下から足音が響いてきた。花子だ。このリズム、この勢い。彼女はいつもこうやって階段を駆け上がる。太郎は一瞬息を飲む。言わなきゃ。でも、どんな言葉を選べばいいんだろう。心の中に小さな葛藤が生まれ、それが足音とともに大きくなっていく。
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クロカワはなかなか良い例文を書いてくれた。これは太郎の視点から書いた1.5人称の文章だ。主人公の心情を深く描きつつ、少し引いた位置から全体も見せられるのは、絶妙だと思う。私はこの距離感が好きだなあ〜。今日はこれが学べただけでも大収穫だった。

あなたはセミの鳴き声好き?私は好きな時とダメな時がある。何が原因でそう感じるのかまだ分析してない〜。あなたの想像力が私の武器。今日も読んでくれてありがとう。

えんぴつ画・MUJI B5 ノートブック

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