箸置きの一枚
あの時は楽しかったなあ~。
そう、まだ世間がこんなご時世でない数年前の話。
私は海辺の街に住む親友へ会いに行った。
その親友とは、高校の時からの付き合いで、彼女の高校時代からの歴史を知っている。私の本音を素直に打ち明けられることができる一人である。
私たちは結婚した時期も近かった。彼女が結婚して、半年後に私が結婚した。そして、しばらくは目と鼻の距離にあるマンションに暮らしていた。私がベランダから手を振ると、彼女も玄関前から手を振ってくれた。
引っ越すことにしたよ。
彼女に子供が生まれた。一度流産した後に授かった女の子だった。私は機会を見つけては、彼女と彼女の娘ちゃんに会いに行っていた。
しかし、いつでも会えるこの距離は、それからすぐ遠くなってしまった。彼女たち一家は、3人で住むには狭すぎるそのマンションを出て、海辺の街の一軒家へ引っ越していったのだ。
私もそれから、少しして、海のない街へ引っ越した。私たちの距離は離れて行った。物理的なものもだが、お互いそれぞれの生活を過ごすうちに、メールをやりとりする回数もだんだん減ってきていた。
遠く離れてしまったが、少なくとも年に一度は、車を持っている私が、自分の街から山をいくつも越えて、時々、海辺の彼女の家へ行くようになっていた。ある時は日帰りで、ある時はお泊まりで。あ、彼女の旦那さまは、私の元職場の同僚でもある。お互い遠慮は何もいらなかった。
撮った!
彼女の娘ちゃんが小学校にあがるか、あがらないかぐらいの頃。私はいつものように、彼女の家へ遊びに行き、彼女と彼女の娘ちゃんと3人で、ハーブたっぷりのランチを食べようと、海辺の街にある店へ車を走らせた。
着いたお店は、ハーブを売りにしているだけあって、入り口の前にさまざまなハーブが植えられており、ランチができるまでの間、娘ちゃんはいろんなハーブを見て回り、彼女と私は、積もる話をのんびりしていた。
外のハーブ園に飽きた娘ちゃんが、店の中へ入っていく。私たちも後に続く。その店では、ハンドメイドの小物なども売っていた。割とガラス細工が多かったような気がするが、その中でひときわ目をひいたのが、このガラスの箸置きである。私が一目惚れして買ったのは言うまでもない。
いや、ひょっとしたら、これは正確には箸置きではないのかもしれないが、我が家では、ずっと箸置きとして使っている。そして、この箸置きを見るたびに彼女のいろんなことを思い出すのである。
昨年は会えなかったけど、元気にしてるかな?
また会いに行こう。