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い、言わないで
長年にわたり美容業界にいたわたしは、教育現場に就くことなど一生ないと思っていた。
まあ、流れはいづれ。
今現在。
こんなにも毎日たくさんの子どもたちと触れ合う現場にいると時々不思議な気持ちになる。
そして、子どもたちの発言から家庭内が垣間見れる瞬間が度々ある。
ふと思い出す。
わたしの子どもたち、
オムライスちゃん(娘)とブロッコリーくん(息子)がまだ園児だった頃のおはなし。
オムブロをお迎えに行き、園の入口から近いオムライスちゃんのいるお部屋に入る。
わたしを見かけるなり、オムライスちゃんの担任が距離を詰め、深刻な顔で小声で尋ねてきた。あまりの真剣な表情に一抹の不安を覚える。
「オムライスちゃんのお母さん…
(ドキがムネムネする)
モンコールってなんですか?」
嗚呼。
「………肛門です」
「シークレットホールというのは…?」
オマタです……。
恥ずかしさのあまり、浮遊しながらブロッコリーくんのいるお部屋へ行く。
オムライス担任同様、怪訝な表情で尋ねてくる。
「ブロッコリーくんのお母さん………
モンコールってなんでしょうか?」
なんのデジャヴですか。
「それはですね、肛門のことです」
嗚呼。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
しかし、そんなに距離詰めて訊いてきて、わたしも何事かと向き合い真正面から(恥ずかしさのあまり)潤んだ瞳で見据えられ「肛門です」と甘い吐息で囁かれるのは、果たしてどんな気持ちなのだろうか。
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22歳で1度目の緑茶(結婚、離婚)を終えたわたしは、毎日ふたりの子どもたちと一緒にお風呂に入っていた。
(離婚前からワンオペだったけど。苦笑。)
オムライスちゃん、モンコールきれいきれいしようねー。シークレットホールも大事なところだから、キレイにしようね。
はい、キレイになったー。
ジャポーン!(浴槽へ)
はい、ブロッコリーくんもおいで。
大事なところはキレイキレイだよー。モンコールはすぐ汚れちゃうからね。
「ママー!シークレットホールもー」
拙い言葉でオムライスちゃんに嫉妬するがあまりに半べそになっている。
(君にシークレットホールはあるのか?)
息子を呼ぶ。
(ファイナルアンサー??)
「はいはい、シークレットホールもね、おとこのこの大事なところだからねー、キレイキレーイだよー!モンコールもぴかぴかになったよ!」
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オムライス担任
ブロッコリー担任
ご理解いただけただろうか。
✴︎の清潔を保つゆえ、我が家の秘められた風習を。
「なんだぁ、そういうことかぁ。お友だちにも、モンコールは大事なところなんだよ!って言うから、職員同士でなんなんだろう、って話していたの。
どうしてもわからないから、お母さんに聞くしかないと思って。
それにしてもモンコールって…なんなんですか笑」
い、言わないで。
子どもたちに『肛門』やら『おまた』やらの言葉をなんとなく使いたくなくて、マイルドにしてみたらとんだ公開処刑だよ。
あれから25年。
現職場には2歳からのミニ人間たちが多くいるが、
「モンコールは大事なんだよ!」
と言ってる子がいたら、わたしだけは分かってあげる。
もはや、わたしだけにしかわからない。
大丈夫。
モンコールはいくつになっても大事だよ。
大切にしてね。
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