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読書履歴 生殖記 〜朝井リョウのエンタメ〜

とぼけた文体ですごいこと言うな。
みんなと同じであるべき、という世の中の圧力 それに適応することで救われ、殺されもする −誰もが多かれ少なかれ共感できる生きづらさの鬱積。
そ、それを「暇そうです」とは!衝撃、いや笑撃www やっぱ痛快です、朝井リョウ!
『正欲』で私たちの近視眼的な「多様性」の理解、その欺瞞に自覚すらない罪を、容赦なく突きつけられた時のショックも記憶に新しい。
この小説家の目線は、いつも世間の最新の価値観の、その先。そしてそれを生殖器官のおしゃべり(!)でエンタメにするのだから、恐れ入ります。
生息地での"なんとな〜くの空気"に頑張って照準を合わせて生きていても、その"なんとな〜くの空気"がコロッコロ変わる。幼少期に同性愛個体を笑った個体も、今は「多様性だよね。」てなもんです。
所属する共同体との関係性とか、個人の幸福度をどこに預けるかとか、そんなことをほんわかユーモアで考えさせるなんて。朝井リョウってすごい。


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