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DJのゲインの話 Mix録るときに注意すること

 お疲れ様です。今日はDJをやるときのゲインの話をしていきます。

 まずこちらを御覧ください。

 これは、AKLOとかいうバカがプレイして録ったDJMIXファイルの波形をソフトで可視化したものです。このプリングルズのパッケージみたいな円筒クソデカ波形を見て、大爆笑したり「あっ!!バカだ!!!!」と思った方は大丈夫です。安心してください。

 では、これを見てパッと分からなかった人向けに、「この波形の何がヤバいのか?」そして「おれ(AKLO)はDJプレイをしているときに何をやらかしてしまったのか?」のお話をしていきます。


メーターの赤叩くのをやめろ

 まず、DJをやっているときにGAINとかTRIMと書かれたツマミがあるのを見たことがあるでしょうか。

 これは簡単に言うと曲の音量を調整するツマミです。楽曲ファイルはそれぞれ微妙に音量が小さかったり大きかったりするので、これをひねって調整することで聴いている人がいい感じにノれる音量にすることができます。
 このとき、オーディオの基本として「音源の音量は大きめにしたほうが音質が良くなる」とよく言われています。それはその通りです。小さく出した音をあとからアンプなどで大きく増幅すると、いらないノイズまで大きくしたりするからですね。

 かといって音量がデカすぎてもよくない。バキバキに音が割れます
 DJソフトやミキサーを見てみると、音に応じて伸びたり縮んだりするメーターがあります。コイツが赤のゾーンに入った瞬間、音量がリミットに到達していることを示し、ビリビリとノイズを起こしてそのミックスやDJプレイは聞くに堪えないものになります。クラブなどでプレイしているなら現場のスピーカーを破壊しかねません。
 イメージとしては、ネットミームに「音割れポッター」というのがありますが、だいたいあれになります。ウ"ィ"ン"ガー"ディ"ア"ム"・レ"ビ"オ"ー"サ"!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 では、赤いところに到達しないギリギリのところを狙ってキワキワまで上げればいいか…というと、それもまた違うんですね。

 それをやった結果がご存知バカの波形となります。そうなんです。おれもDJプレイのときは赤を叩かないようにある程度気をつけてゲインを上げていましたが、それでも音が潰れておかしくなることもあるんですね。
 パソコンのソフトなどで見られるデジタルメーターは、だいたい音が割れる極限の状態を赤とか最大として表示しています。だからその赤ギリギリまで上げると、割れはしなくても増幅しまくって無理はしている状態ですから音は歪みはじめます。音割れまではしなくても波形はクソデカくなって一部が失われ、音自体は歪んで潰れたものになるということなんですね。
 この音の歪み自体はドライブといってわざと歪ませるために一時的に曲の一部にかけることを狙う人もいますが、基本はさせないほうが良いですね。


ヘッドルームよりちょっと下げよう

 それを回避するための考え方がヘッドルームです。

 くわしくはこちらの方の記事を見てもらいたいのですが、「音が割れる極限の状態~0デシベル」をヘッドルームと言い、まあざっくり表現すると警告地帯です。

 今にも崩れ落ちそうな崖の前のゾーンにトラ柄の警告テープがペタペタ貼ってあるのを思い浮かべてください。そこのテープが貼ってあるゾーンがヘッドルームということになります。
 崖に向かって突っ込んでいく人はさすがにいないと思いますが、警告テープが貼られているところに踏み入るのもあんまりよくないですね。

 ですので、音量をヘッドルームに入らない程度のところ……つまりゼロデシベルやメーターのオレンジゾーンよりちょい下のところまでゲインを調整してDJをやるのがベストと言えるでしょう。赤もオレンジも避け、表示ランプがグリーンのエリアでやっていきましょうということですね。波形が潰れるのを防ぎ、曲の音量の大きいところと小さいところのダイナミックな差が活かされたままミックスが録れるはずです。

 使っているDJソフトによっては、メーターに色がついていなくてどのくらいがヘッドルームエリアなのか・ゼロデシベルなのかよくわからないことがあります。お前のことだぞVirtual DJ!!!!
 その場合は試しにメーターの半分や八分目なんかになるようにしてプレイし、録音したファイルをAudacityなどで見てみればいいと思います。波形が潰れていなかったら、その目盛りまでは上げてもOK!ということですね。


投稿するところによってはもうちょっと下げておく

 ここまででゲインを上げ過ぎるのは良くないぜ!という話をしてきましたが、ミックスをするときにさらに覚えておきたいのが配信サービスのラウドネスノーマリゼーションです。

 いまの動画サイトや音楽配信サイトなどでは、ノーマライゼーションといって視聴者が安全に音を聞けるように一定以上の音量の曲はサイト側で勝手に音を潰して小さくされる、ということです。
 このとき、ノーマライゼーションの対象にひっかかるより少し小さめの音量でDJプレイをやって投稿していれば音を潰されないので、クラブなど現場でプレイする人はともかく、ネットに投稿する人はヘッドルームを考えた上でさらにちょい下げ気味の音量でプレイすると良いかもしれません。

 参考までに、DJの人がMixcloudに投稿した記事を貼っておきます。


I will always try to lower the recording level to around -6db to eliminate any chance of clipping in the audio recording leaving me with an audio file that I can normalize the final volume to a nice and steady 0db or -11LUFS and add other post-recording effects in order to get the most professional sounding mix.

 「私はなにかあっても再編集できるようにいつも-6デシベルくらいでレコーディングしてるけどね~。あとは場合によってその音源をゼロデシベルや-11LUFSくらいにマスタリングしてるよ~」という話をしてくれています。
  Mixcloudがどれくらいのノーマライゼーションをかけているのかはわかりませんが、いずれにせよ少し低めのデシベルでレコーディングしたほうが良さそうですね。ライバルサービスのSoundcloudがだいたい-8から-13LUFSなので、目安としてはそのくらい(-8から-13デシベルくらいを狙ってゲインを絞りプレイする)が望ましいのではないかと思います。

 クラブでプレイするDJはお客さんの盛り上がりやPAさんとのやりとりでゲインを決めるのが良いでしょうが、ミックスを録ってネットにアップロードする我々ひきこもりDJはそこんとこ外部の機材がらみを気にせずやれますから、小さめに録ってもかまわんという違いがあります。
 音の小ささが気になったらどうせ聴く側がボリュームを上げて対処してくれるので、どちらかというと投稿する我々は波形を潰さないようにして原曲の良さを保持する、という考え方をするといい感じにミックスを録れるかもしれません。


 では、ヘッドルームに余裕を持つことの大切さを理解したところで、例のヤツを見てシメにしましょう。

こうなってはいけないぞ!!!!!!!!!!!!!!!!


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