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不安な気持ちを吐き出せる、それだけでいい

カリブの国に引っ越してきて丸2年が経った。

娘の幼稚園は6月の1週目でKinderクラスの1年が修了し、8月末までの長い夏休みの真っ最中。去年も同じ期間の夏休みを3か所のサマーキャンプ(キャンプといっても泊まりはなく、一定期間預かってくれるサマースクール)をはしごし、娘も大変楽しく過ごしていたので今年も迷うことなく3か所申し込んだ。去年と唯一違うのは、7月に通うところが午前中だけか、夕方までの1日預かりか選べるようになったこと。

1日預けられると聞いて、だいぶ心踊ってしまった私がいた。いつも通っているスクールのサマーキャンプだから、場所も先生たちも友達も全部よく知っているし、スクールが大大大好きなので1日みんなと遊べたらきっと娘も楽しいだろうな…いつももっと友達と遊びたいのにー!って騒いでるし。それに、久しぶりにまとまった自分時間が取れるのか…!しかもお昼ご飯や午後のおやつまで出るとな!?

いやでも、1日はさすがに長いかな、どうかな。でもでも、日本にいた時の保育園は1日保育だったし。しかし働いてもいないのに1日預けるのは果たして良いのか…!?でもでもでも、長い夏休みのたった三分の一だもん、いいじゃないか…私も夏休みが欲しいよ…
よし、エイヤーっ!
と、長い自問自答を繰り返した挙句、1日預かりに申し込んだのであった。(夫にも相談したところ、「1日?いいじゃん!」と即答だった)

そして始まった7月のサマーキャンプ。娘には事前に、今回はいつもよりも長く幼稚園にいることを説明しておいたし、彼女の反応は「おっけー!」と気楽なお返事。お迎えにいった時も、満面の笑みで駆け寄ってきて「きょうね、3回もごはん食べたんだよ!!」と興奮気味に教えてくれた。その笑顔に、心底ホッとした。私の娘は、なんてたくましく育ったんだろう。全然心配することないな!安心安心!

最初の週は元気に通ったので、私もすっかり安堵して夫と2人して、「あの子のコミュニケーション能力には脱帽する、心底尊敬する」などと語り合い、夜のビールが進む進む。

と思ったのも束の間、2週目の月曜の昼過ぎに、「様子が変だから迎えにきてほしい」と連絡があった。この国に越してきてスクールへ通い出して2年、初の呼び出し。急いで行くと、泣き腫らした顔の娘がいた。「最初は元気だったんだけどね〜熱もないし、どこも痛くないって言うけど、全然泣き止まないのよ。この子が泣いているの初めて見たわ。」と困惑気味の先生たち。私にしがみついて顔を埋めた彼女は、「さみしかった…」と小さな声で言った。

土日を家族で思いっきりべったり過ごした余韻のせいもあるのかもしれない。それにその週は夫も出張で不在になるということも分かっていて、余計に不安な気持ちになってしまったと思う。

とにかくぎゅっとして、話を聞いた。「さみしい」「お昼ごはんのまえにかえる子もいる」「かーちゃんにはやくあいたい」

全然、大丈夫なんかじゃなかったんだ。不安で不安で仕方なかったけど、それを頑張って乗り越えようとしたけど、でもやっぱりダメだったんだな。そりゃそうだ、いくらスペイン語が私たちよりも流暢に話せるようになったとはいえ、いくらスクールが大好きとはいえ。まだ4歳。親と長時間離れることに不安にならない訳がない。

誰とでも仲良くなれて物怖じしない、言葉の壁を超えていく、ように見えたけど、そうじゃなくて、彼女なりにフラストレーションを抱えながらすっっっごく頑張ってくれていたんだなあ。

でも、それでも、途中から午前中だけお願いします、ってしない方がいいかなと思った。酷かなとも思ったけど、あと2週間。慎重に彼女の様子を見ながら、それでも最初に私が言い出したことを変えずにやってみることも大事なんじゃないかと。娘も一通り寂しかった気持ちを吐き出したあとは、なんとか落ち着いて、次の日も行くと言ってくれた。

次の日は、ハートの折り紙を折って水筒に貼り、私のポーチにも入れて、おまじないと言ってキャンプへ送り出した。夕方までいられた。

その次の日は、朝から元気がなく食欲もなかったので「おやすみしよっかね」と伝えた瞬間から超元気になった。一緒にたくさん遊んで、お昼はマックでハンバーガーを食べて、一緒に昼寝をした。

その次の日から、1時間早くお迎えに行くことにした。娘もそのことを励みに過ごしているようで、ルンルン笑顔で送り出す時もあれば、泣きべそでギューっとハグをしながらバイバイする朝もある。でもお迎えの時は毎日満面の笑顔で、「マミー!!!!!」と駆け寄ってきてくれるようになった。「もうちょっとあそんでもいい?」と言う日も。

「明日はこんなイベントをやるみたいだよ」と伝えると、「それはあんまりすきじゃないんだよ〜」とか「〇〇のときは、スペインごでなんて言ったらいいかわかんないんだよ」とか、どんな時に不安に気持ちになるのか、寂しくなるのか、少しずつ話してくれるようになった。

そしてついに明日が7月のサマーキャンプ最終日。新しい友達もたくさん出来て、この1ヶ月のスペイン語の上達っぷりは目を見張るほど。本当に本当に、よく頑張って通いきってくれた。

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赤ちゃんの頃、私と離れる時にただ泣くだけしか出来なかった子。その気持ちを伝える言葉を持たなかった子。その気持ちがどんなものか、きっとちゃんと分かっていなかった子。

今は、楽しい気持ち、寂しくなっちゃう気持ち、不安な気持ち、かーちゃんととーちゃんが大好きな気持ち、いろんな気持ちが入り混じって、それを整理して言葉にするのがすごく大変な時。でも少しずつ少しずつ、自分の言葉でその気持ちを説明しようとしてくれている。ハッピーなだけじゃなく、不安や寂しさの複雑な気持ちを吐き出せることは、きっと成長のしるしなんだと思う。

大丈夫じゃないってことが分かっていれば、大丈夫。

これからも、彼女が自分の言葉にできる時もできない時も、耳を傾けよう。




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