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楽器は捨てられないがタンスの中にしまっていても仕方がない

楽器を演奏し続けるというのは案外大変なものである。
一人で完結できるピアノはともかく、吹奏楽部などで楽器を始めた人が大人になっても演奏の場を持ち続けるのはかなり難しい。せっかく中学生の時に買ってもらった楽器はまだタンスの奥にしまってある。もったいない。ずっと続けていればまだしも、転勤や出産などでどうしてもブランクができ、手が空いたころにもう一度やりたいと思っても、なかなか知らない楽団の門を叩くのは勇気がいるし、かといって少人数でアンサンブル、あるいは音楽教室にレッスンを受けに行くなど、いずれにしてもよっぽどもう一度頑張る気力がなければ立ち上がれないと考える人は多いのではないか。

もう二度と吹くことはあるまい、と心を決めてみる。
では処分しようか。
ところが楽器というのは捨てにくいものなのである。燃えるごみにポイというわけにはいかない。たとえばクラリネットは木と金属の複雑な組み合わせでできている。これを全部分解するのもひと手間だし、それよりなにより、大事に扱ってきた楽器をゴミにするということが耐えられない。ケースを開けばかび臭いにおいがしたとしても、高校の夏のコンクールの思い出が脳裏をよぎったりして、甘酸っぱい感情ごとそっと蓋を閉めるしかない。

楽器店に持ち込んで中古品として引き取ってもらう手もある。
しかし数十年放置された楽器は大したお金にもならない。地方だとそうした楽器店がそもそもない。
かくして、再びたんすのこやしになるのである。日本中にいったいどれほどの楽器が眠っていることだろう。

しかし、最近は古い楽器を利活用するサービスも生まれている。

「楽器寄附ふるさと納税」は、楽器の足りない学校に楽器を寄附することで税金の控除が受けられる仕組みである。これはもともと、三重県いなべ市から始まった取り組みで、いまでは全国に広がっている。全国の学校は慢性的な楽器不足であり、少しでも多くの人がこの活動に賛同することで、子どもたちの部活動を存続させることができる。

島村楽器は「楽器アップサイクルプロジェクト」を行っている。家庭や学校で不要となった楽器を回収し、家具としてアップサイクルして販売し、その収益を楽器の寄贈に充てているという。

楽器が本来の目的でない使われ方をしているのは見た目的にちょっとぎょっとするけれど、使われないよりはお金と交換して別の子どもたちに楽器を寄贈するために使われるほうがよっぽどいい。

他にもあるかもしれないけれど、中古楽器が家に眠っているという方はこうしたサービスの利用を考えてみるのはどうだろう。

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