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物語どうしがつながっていくーー『おしりたんてい』シリーズで楽しむ読書の醍醐味

小1の息子がおしりたんていにどっぷりハマっている。本棚には「おしりたんていシリーズ」と「アニメコミックシリーズ」合わせて、25冊以上がずらりと並ぶ。

驚くのは、彼がそれらを5、6冊同時に読み進めていることだ。片付けても片付けても引っ張り出してくる。

怒りたくなるのをグッと堪えて、彼の読書スタイルを観察してみると、どうやら彼は物語を楽しむだけでなく、シリーズ間のつながりを発見して楽しんでいるようなのだ。


つながりが生む、物語の「広がり」と「奥行き」


おしりたんていシリーズは、単なる1巻ごとの物語の集まりではない。それぞれの巻に登場するキャラクターやアイテムが別の巻にも登場し、時に新たな展開を生む。

シリーズ全体を通して散りばめられた「つながり」が、おしりたんていの物語に広がりと奥行きを与えている。

特に、子ども向けだからこそ「視覚的な伏線」が随所に仕込まれている。街の風景や部屋の隅々に登場するキャラクターやアイテムが、別の巻で新たなストーリーを紡いでいたり、物語のカギになっていたりする。

例えば、ある巻で登場した絵画が後の巻でオークションに出品されたり、宇宙人が別の巻でさりげなく背景に描かれていたりと、読み進めるほど新しい発見がある。この「シリーズ間のリンク」が、読者をシリーズ全体の世界観へと引き込み、何度も繰り返し本を手に取らせる理由になっている。

アニメおしりたんていの担当者も、物語のつながり伏線の濃密さについて以下のように語っている。

1ページごとにトロル先生たちが描かれている濃密な情報量だったり、後々のお話にも絡んでくるようなものすごく大切な情報が詰まっているのを見逃さないってことですね。それを脚本に、ここのこの絵が後々関わりますみたいな設計図的な側面がおしりたんていの脚本には強いというか。

ポプラ社公式note記事
「「1話作るのに、プロットから考えると3か月。」~アニメ脚本ができるまで~」

シリーズ間のリンクが生む楽しみ(※ネタバレ注意!)

息子はつながりを発見するたび、「これって前に出てきた○○だ!」と興奮気味に教えてくれる。その発見のたび、彼の目は輝いている。

大人が見落としがちな背景の絵やアイテムにも気づく観察力は、子どもならではの視点だろう。

息子が発見した「つながり」の一部を以下に紹介したい。(以下、ネタバレ注意)

まぼろしのスパイス「ピリリトキック」と、原料の植物

「カレーなるじけん」(シリーズ第1巻)で登場したまぼろしのスパイス「ピリリトキック」の原料植物が、「ワナだらけのジャングル」(アニメコミックシリーズ第3巻)でおしりたんてい達を救う重要アイテムとして登場する。食虫植物のような独特な見た目にも注目。


絵画「ターバンのやぎ」は、次は誰の手に渡るのか

「かいとうVSたんてい」(シリーズ第4巻)のお屋敷に飾られていた絵画「ターバンのやぎ」が、「ラッキーキャットはだれのてに!」(シリーズ第9巻)でオークションに出品されている。今後も誰の手に渡っていくのか楽しみながら探してみたい。

宇宙人「ネクラ・ネール」の過去が明かされる

「かいとうUのおとしもの」(シリーズ第12巻)で登場する宇宙人ネクラ・ネールが、「かいとうVSたんてい」(シリーズ第4巻)のあるシーンの背景に隠れている。海からSOSを出している様子から、ネクラネールが地球に不時着した過去が明かされている。

きょじんの犯人ふたり組がなぜ遺跡に?

「やみよにきえるきょじん」(シリーズ第2巻)の犯人ふたり組が、「いせきからのSOS」(シリーズ第5巻)の遺跡の床に描かれた絵の中に紛れ込んでいる。

望遠鏡「こきょうへのしるべ」で、ふるさとの星に戻れるか

「ラッキーキャットはだれのてに!」(シリーズ第9巻)でオークションに出品された望遠鏡「こきょうへのしるべ」を、「かいとうUのおとしもの」(シリーズ第12巻)で宇宙人ネクラ・ネールが手にしている。地球に不時着したネクラ・ネールは、こきょうのしるべを使って故郷の星に無事戻れるのか、今後も見守りたい。

ミステリアスな名画「モナグマ」

「ププッ マルチーズしょちょうとチワワしょちょう」(アニメコミックシリーズ第7巻)で登場するレオナルドだんきちの名画「モナグマ」が、「さらば愛しき相棒(おしり)よ」(アニメコミックシリーズ第17巻)で事件を解決する重要なアイテムとなっている。

ふめつのせっとうだん一味「トカベエ」、逮捕とその後

「ふめつのせっとうだん」(シリーズ第3巻)で逮捕された、ふめつのせっとうだんの一味、「トカベエ」が、「かんごくのおしりたんてい」(アニメコミックシリーズ第16巻)に再登場。かんごくのなかで、おしりたんていと再会を果たす。


こうしたリンクを発見するたびに、息子はまるで探偵のように興奮してページをめくる。大人でも感心するほど緻密なつながりが、シリーズ全体をより魅力的にしている。

ミステリーをシリーズで読む醍醐味

おしりたんていシリーズは、単に子ども向けの探偵物語ではなく、シリーズ全体を通したつながりを楽しむ喜びを提供してくれる作品だ。だから、ぜひシリーズで読んでほしい。

息子が「これ、つながってる!」と発見した瞬間の顔は、まるで本物の探偵が謎を解き明かしたような満足感に満ちている。シリーズを読み進めるたびに、新たな発見を重ねることで、観察力や記憶力、推理力といった力が自然と鍛えられているように感じる。

おしりたんていシリーズを通じて、息子は探偵や推理シリーズの醍醐味を知り、それを楽しむ心を育てているだろう。単なる娯楽を超えた、物語の深みを味わう読書体験だと思う。

シリーズ全体を読み解く楽しさを教えてくれるおしりたんていを経て、わたしも小学校時代に夢中になった江戸川乱歩の少年探偵シリーズに興味を持つ日が来たら、なんだか感慨深い気持ちになるだろう。

そんな日を夢見ながら、今日も親子でおしりたんていを読んで、観察眼と推理力を鍛えておこう。


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