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「個別最適化」について考える〜中編1

たぶん、5回位になる…。なので、中編1(無計画…)

指導要領と「個に応じた指導」

前回は、H10指導要領、H15改正指導要領で「個に応じた指導」について触れられていたということを述べた。で、そもそも、これが書かれたのが、第15期中教審答申「21世紀を展望した我が国の在り方について」。じゃあ、その前の指導要領ではどうか?きっかけはなんだろう?というのが今回のテーマ(その1)

ちなみに、前記答申に一人ひとりを大切にすることがどう書かれているかが、けっこう面白いので、いつかそれも書きたい。

ここで、ちょっとアメリカ教育史に触れてみよう。(なんか、だんだん「初めての教育史」みたいになってきた…。)

アメリカでも「個に応じた指導」が行われていた。1960年代にスタートしたとのこと(ごめんなさい出典忘れちゃった…。探します。)

これが何と重なるかというと、アメリカの教育現代化(レベルをぐんとあげた指導をする)。つまり、教育の現代化→難しいと悩む子が増える→そこを補充する指導が行われる→個別の指導が必要だよねという文脈。(「這い回る経験主義」とか、ブルーナーの「教育の過程」とかがこのへん)

で、日本も同じように教育の現代化、高度化をやっている。これが昭和43年(1968年)指導要領。これによって、「落ちこぼれ」とかが話題になった。

このときの指導要領には、さすがにそんな記述はなかろう…と思っていたら、「(児童の)興味関心を重んじ」とか「自主的・自発的な学習」なんて言葉が出ていた。(ちなみにこの指導要領、年間授業日数を「240」なんて書いてある…。おに。土曜日が授業日だと考えても、まだ足りない)

ちなみに、この「興味関心を重んじ」は、その前のS33年指導要領にもある。こんな感じ

(3) 児童の興味や関心を重んじ,自主的,自発的な学習をするように導くこと。
(4) 児童の個人差に留意して指導し,それぞれの児童の個性や能力をできるだけ伸ばすようにすること。  →こっちは、S43年指導要領にはなくなっている。

参考にしたのは、こちらです。

あと、もう一つ「新学力観」のH1指導要領にも触れておかないといけない。

1987年(S62年)中曽根内閣下で答申されたのが「第4次臨教審(臨時教育審議会)答申

ここで謳われたのが、「個性重視の原則」これに基づいて、内容、方法、制度、政策が見直されることがあった。さらにこのとき「教育の自由化」についても議論された。

で、これを受けて「新学力観」をテーマに出されたのが、H1学習指導要領。「生活科」とか、「月に1回、土曜日お休み(第2土曜日だった気がする)」が入ったのがここ。

(4) 各教科等の指導に当たっては、学習内容を確実に身に付けることができるよう、児童の実態等に応じ、個に応じた指導など指導方法の工夫改善に努めること。

ついに、「個に応じた指導」という文が入ってきました。

中間まとめ〜学習指導要領にみる「個に応じた指導」

S22「経験主義」
めっちゃいいこと書いてあるの!!

(前略)では,このような学習の指導を適切にするには,どうしたらよいだろうか。この問に対して第一に答えなくてはならないのは,このような教材をこのような学び方で学んで行くように指導するには,まず「学ぶのは児童だ」ということを,頭の底にしっかりおくことがたいせつだということである。教師が独りよがりにしゃべりたてればそれでよろしいと考えたり,教師が教えさえすればそれが指導だと考えるような,教師中心の考え方は,この際すっかり捨ててしまわなければなるまい。(後略)

初めての指導要領だから、考え方がとっても丁寧に書いてある。たしか、早稲田の古書店で買ったのが実家にあったような…。

個についてもいっぱい書いてある。

4.なお,学習には,児童のすでに持っている経験や,知識がたいせつな役割を持っているし,児童の活動も地域によって違うし,また,そういったことは,個人的の相違もあるから,以上のようなことを考えて行くにあたって,教師は直接に,自分の指導する児童について絶えず観察をし,その状態を確かめて行くことがたいせつである。

S33「経験主義から系統主義へ」

S45「教育の現代化」

このへんは、先程述べたとおり。「自主的自発的」「興味関心を重んじ」がキーワード。そして取り除かれた「児童の個人差への留意」

S52「人間性」

 (3) 学習の遅れがちな児重,心身に障害のある児童などについては,児童の実態に即した適切な指導を行うこと。

H1「新学力観」

児童の実態に応じて、「個に応じた指導」をしましょう。でも、それは、学習内容の定着のためだよ。

この文章は、ここから綿々とH10、H15指導要領まで、つづく。

そして

個に応じた指導のそれから

H20「生きる力〜リターンズ」

(4) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるよう工夫すること。
(5) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習課題や活動を選択したり,自らの将来について考えたりする機会を設けるなど工夫すること。
(6) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習内容を確実に身に付けることができるよう,学校や児童の実態に応じ,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,学習内容の習熟の程度に応じた指導,児童の興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れた指導,教師間の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ること。

H29「主体的・対話的で深い学び」

(2) 児童が,自己の存在感を実感しながら,よりよい人間関係を形成し,有意義で充実した学校生活を送る中で,現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう,児童理解を深め,学習指導と関連付けながら,生徒指導の充実を図ること。
(3) 児童が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう,特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図ること。
(4) 児童が,基礎的・基本的な知識及び技能の習得も含め,学習内容を確実に身に付けることができるよう,児童や学校の実態に応じ,個別学習やグループ別学習,繰り返し学習,学習内容の習熟の程度に応じた学習,児童の興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れることや,教師間の協力による指導体制を確保することなど,指導方法や指導体制の工夫改善により,個に応じた指導の充実を図ること。その際,第3の1のに示す情報手段や教材・教具の活用を図ること。

H20から、だいぶ具体的になっている。というか、H20も随分具体的だけれども…。

指導方法、指導体制だけじゃなくて、教材とか教具とかも活用して、個に応じた指導を充実させようというのが、今の指導要領。

で、この後、いよいよ、平成31年に「新しい時代の初等中等教育の在り方について」が諮問されるわけなのである。〜つづく




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