『好きなもの』にこだわる子、こんな世界の広がりがあります
こんにちは。
今日は『好きなもの』にこだわる子について書いてみたいと思います。
「うちの子、ずっと恐竜の図鑑見てるんです……」
「口を開けば電車のことばっかり。もっと他のことに興味をもってくれればいいのに……」
『毎年1回は聞く悩みランキング』なんてものを作ったら、間違いなく上位にくるのがこれ。特に男の子のお母さんからよく聞きます。
特定のものが好きすぎて、寝ても覚めてもそのことばかり。
大人からしてみたら、もっと役に立ちそうなことを覚えてくれればいいのに……このまま他のことに興味をもたなかったらどうしよう……と、心配が尽きないようです。
結論から言ってしまうと、同じものをずっと好きでいつづける可能性は低いです。
中には大人になって仕事にするほどのものに出会う人がいますが、そういった人はごく少数。
ご自分の子どものころのことを思い出してみてください。
何に熱中していたか覚えていますか?
今も同じだけの熱量で好きでいますか?
ほとんどの方が「いいえ」と答えると思います。
子どもが一つのことに熱中するには理由がありますし、成長するにつれて対象が変わっていくのが自然です。だから、寝ても覚めても一つのことに夢中になっていても、そういう時期なんだなと見守っていただいて大丈夫。
むしろ、夢中になるほど何かにのめり込むという体験が、成長してからプラスに働くこともあるんです。
研究職や専門職の方は一つのことを突き詰める仕事ですし、プロのアスリートもそうです。何かに夢中になる、何かに一生懸命になる楽しさ、面白さを知っていると、自分から知識や情報を得ることに貪欲にもなります。
そこから類い希な才能を開花させるかもしれない。
そう考えたら、夢中になっている姿を応援したくなりませんか?
子どもが一つのことに夢中になるのはどうして?
理由はいくつかあると思いますが、そのうちの一つとして『経験・体験の少なさ』があります。世界が狭いとも言えます。
見たことがあるもの、聞いたことがあるものが限られているので、ちょっとしたことがたまらなく刺激的に感じられるのです。
ある程度の年齢になれば見慣れる電車ですが、1歳くらいの子どもからしてみたら、これ以上ないくらい格好のいい存在に映ります。
こんなに速いなんて!
え、こんなに種類がいろいろあるなんて!
ええ!こことここが違うの!?すごい!!
もう、楽しくて楽しくて仕方がありません。
恐竜や車、、虫など、夢中になる対象はそれぞれ違います。
これは人間それぞれ好みがありますから、自然なことですよね。血の繋がった親子でも好みが同じとは限りませんから、理解が難しいかもしれません。
でも、ご自分の子どものころを思い返してみると、どうでしょう。
親と好みが違うからといって禁止されたら……納得できましたか?
自分のお子さんも同じだと思ってあげてください。
いつまで続くの?
ある程度好奇心や知的探究心が満たされるまで、としか言えません(笑)
次々に対象が変わる子もいれば、何年も同じ対象が続く子もいます。
他のことに興味をもたせるのはどうしたらいいの?
今好きなもの以上に魅力的なものを教えてあげればいいんです。
つまり、大人の都合だけで対象を変えるのはすごく難しいということです。
文字や数字に興味をもってほしいと思うなら、いかに魅力的なのかをプレゼンしてあげてください。その子にとって魅力的だと感じられれば食いついてきます。
ご想像の通り、すごく難易度が高いです。
保育園などでは、子どもが好きなこと、興味があることをきっかけにして活動を考えます。
車に興味がある子が多ければ、車の種類や色を利用してみる。
ヒーローを好きな子が多ければ、ヒーローのモチーフになっているものを利用したり、主題歌を使ったりしてみる。
せっかく食いつきがいいポイントが分かっているので、利用しない手はありません。子どもたちも興味をもってくれるので、無理なく、楽しんで活動することができます。
文字や数字は比較的応用しやすいです。好きなこと、興味があることにちなんだ文字や数字から入ってみることをお勧めします。
子どもは自然に学んでいきます
保護者からの相談に、今まで書いてきたような内容をお伝えしてみると、「ずっとってわけじゃないんですね!」と表情が晴れる方、「でも……」と表情が曇る方、どちらもいらっしゃいます。
子どもがどう成長していくか、変化していくか分からないと、不安になるのも無理はないと思います。私が子どもの熱中する姿に存分に付き合おうと思うのは、子どもがずっとこのままではいないということを知っているからです。
子どもの見ている世界は、大人とは全然違います。
目線の高さが違うということもありますが、大人より細かいところに気がついたり、ちょっとしたことから多くを学んだりしています。
一つのことに熱中しているように見えて、実は別のことも一緒に学んでいるんです。
例えば、カブトムシとクワガタをこよなく愛するAくん。
2歳にしてニジイロクワガタ、ヘラクレスオオカブトなど、多くの種類を知っています。→語彙力アップ
ブロックでも積み木でも、なんとかしてクワガタやカブトムシが作れないか工夫しています。→発想力、空間認知力、想像力アップ
枝分かれした枝を拾ってクワガタにしようとしましたが、左右の長さが違うことに気がついて、同じ長さにしようと片方の枝を折る工夫をしました……この時のAくんが学んでいることは何でしょう?
私はAくんが作るクワガタとカブトムシが大好きで、次は何で作り出してくれるのか楽しみにしていました。大人ではちょっと出てこないような発想を次々と見せてくれるんですね。
そんなAくんも、数ヶ月後には某アニメに夢中になっていました。
クワガタやカブトムシからどうしてそこに繋がったんだろう?と不思議でしたが、”格好いい”、”強い”あたりがキーワードだった気がしています。
そんなふうに、子どもはどんどん新しい発見をして、夢中になれるものをみつけていきます。
大人ができることって何だろう
子どもは次々と新しい発見をしていきますが、物理的に限界があるので、子どもだけで広げられる世界には限りがあります。
もっと違うことに興味をもってほしいと思うのであれば、いろいろなことを体験・経験させてあげて、世界を広げるのも一つの方法です。
ただ、その際に気をつけていただきたいのが、子どもが楽しんでいるかどうかということ。
楽しくなければ押しつけになってしまいますし、楽しくないことは吸収が遅く、興味も長くは続きません。子どもが泣いてもやらせる、というのは、子どもの世界を広げるというより、子どもの世界を暗いものにすることだと思います。
先にも書きましたが、子どもが魅力的だと感じられるようプレゼンするのが大人の仕事です。
私も仕事の上であれこれ工夫はしていますが、報われないことも多々あります。ずっと保育の仕事をしているので、いわゆる自分の企画を会議でプレゼンしたことはないのですが、ああプレゼンに落ちた方ってこういう気持ちなのかな……と。
最後に。
いろいろなことに興味をもってほしいと思っても、子どもが好きなもの、夢中になっているものを否定しないであげてください。
好きなもの、夢中になっているものを否定されるということは、自分自身を否定されているのと同じことです。
「そんなつまらないものに夢中になって!」
と言われたら、夢中になっている自分はつまらないものなんだ……と感じる子もいます。
子どもは、自分と自分以外の境界が曖昧です。
他人がどう思おうと、自分が好きならそれでいい!とは思えません。
特に家族の存在は絶大な影響力をもっているので、家族に否定されるということは、自分に自信をもてなくなる大きな理由になります。自己肯定感を高めることができないのです。
子どもが夢中になっているものが理解できなくても大丈夫です。
ただ否定せず、ああ今はこれが好きなのね~と見守っているだけで、子どもはどんどん世界を広げて、のびのびと成長していくことができます。
受け入れてもらえている、という安心感は何より強い自信になります!