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論理的思考の功罪。得るものと失うもの。

今回は、最初に昔語りを少々。

数十年前、物事を抽象的に捉えがちだった私は、論理的な考え方を訓練する目的で、ある研修を受けました。
その名は「ロジカルシンキングとブレインストーミング」。
現在ではどちらともよく聞く名称ですが、当時は馴染みの薄い言葉でした。

そして、実際に研修を受けると、それまで点でしかなかった、言語化できなかったなにかが、なぞるように線になったのです。脳のシナプスが光を明滅させながら次々と繋がっていく感覚。あれだけの密度の驚きと発見は、後にも先にもあの時だけです。

それ以来、あらゆる場面で論理的に考えることができるようになりました。
しかし、ここ数年、「論理的に考えすぎて、大切なものを見失っているのではないか」という疑問が頭をよぎったのです。

論理的思考は確かに強力なツールです。
でも、それは本当に万能なのでしょうか?
今回は、論理的思考の光と影について、私の経験と様々な事例を交えながら考えていきたいと思います。

論理的思考がもたらすメリット

まずは、論理的思考がもたらす恩恵について見ていきましょう。

1. 問題解決能力の向上

論理的思考は、複雑な問題を体系的に分析し、効果的な解決策を見出すのに役立ちます。
例えば、ある企業が売上低下に悩んでいたとします。
論理的思考を用いれば、以下のように問題を分解できます。

  1. 売上データの分析

  2. 顧客層の変化の調査

  3. 競合他社の動向チェック

  4. 自社製品・サービスの強み弱みの洗い出し

このように問題を細分化することで、具体的な対策を立てやすくなります。

2. 意思決定の質の向上

感情や直感に頼るのではなく、事実やデータに基づいて判断することで、より良い意思決定ができるようになります。
私自身、転職という言葉が頭をよぎった時、論理的に考えることで最適な選択ができました。

  1. 現在の仕事の満足度評価

  2. 現職場と転職先職場の給与・福利厚生の仮想比較

  3. キャリアパスの検討

  4. 家族への影響分析

これらの要素を客観的に評価することで、一時の感情に流されない決断ができたのです。

3. コミュニケーション能力の向上

論理的に考えることは、自分の考えを明確に伝える能力の向上にもつながります。
例えば、プレゼンテーションの場面では、以下のような構成で話を組み立てることができます。

  1. 現状分析

  2. 問題提起

  3. 解決策の提案

  4. 期待される効果

  5. 実行プラン

このように論理的に情報を整理することで、聞き手の理解を促進し、説得力のある発表ができるようになります。

論理的思考の落とし穴

しかし、論理的思考にも弱点があります。
過度に論理的になることで、思わぬ落とし穴に陥る可能性があるのです。

1. 感情や直感の軽視

論理的思考に頼りすぎると、人間の重要な能力である感情や直感を無視してしまう危険性があります
例えば、ある研究者が重要な発見をしたきっかけが「なんとなくおかしい」と感じたことだったという話を聞いたことがあります。
この「なんとなく」という感覚は、論理では説明できないものですが、時として重要な洞察をもたらすのです。

2. 創造性の阻害

論理的に考えることに固執すると、自由な発想や創造性が制限されてしまうことがあります。
アーティストや発明家の中には、「論理を超えたひらめき」によって素晴らしい作品や革新的なアイデアを生み出した人も多いのです。

3. 人間関係への悪影響

常に論理的であろうとすると、時として周囲の人々との関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、友人が悩みを相談してきたとき、論理的な解決策を提示するよりも、共感的な態度で接する方が適切な場合もあるでしょう。
私の場合、この共感が年々失われてきたことに気づき、論理的思考に偏重することによる危険性を身をもって感じました。

バランスの取れた思考法を目指して

では、論理的思考の利点を活かしつつ、その弱点を補うにはどうすればよいのでしょうか?
私は以下のようなアプローチが有効だと考えています。

  1. 状況に応じた思考法の選択
    問題の性質に応じて、論理的思考と直感的思考を使い分けることが重要です。例えば、数値データの分析には論理的思考が適していますが、人間関係の問題には感情的な理解も必要でしょう。

  2. 多角的な視点の獲得
    論理的思考だけでなく、感情的、創造的、直感的な思考も大切にすることで、より豊かな視点を得ることができます。例えば、ブレインストーミングでは、まず自由な発想を促し、その後論理的に整理するという手法がよく用いられます。

  3. 自己認識の向上
    自分の思考パターンや偏りを認識することで、より柔軟な思考が可能になります。「自分は論理的思考に偏りすぎていないか?」と時々立ち止まって考えてみることも大切です。

  4. 他者の意見を積極的に取り入れる
    異なる思考スタイルを持つ人々と積極的に交流することで、自分にはない視点や考え方を学ぶことができます。

まとめ:論理と感性のハーモニーを目指して

論理的思考は確かに強力なツールですが、それだけに頼ることは危険です。
感情、直感、創造性といった他の思考法とバランスよく組み合わせることで、より豊かで効果的な問題解決や意思決定が可能になるのです。

私自身、前述したように、論理的思考に傾倒しすぎていた時期がありましたが、今では状況に応じて様々な思考法を使い分けるよう心がけています。
その結果、仕事でもプライベートでも、より柔軟に物事に対処できるようになったと感じています。改めて、直感や感覚ってすごいなと思えるようになってきました。

皆さんも、自分の思考パターンを見つめ直し、論理と感性のバランスを取る努力をしてみてはいかがでしょうか?
それによって、より豊かな人生の視点が開けるかもしれません。

あなたは論理的思考と感性的思考のバランスをどのようにとっていますか?
日常生活や仕事の中で、どちらかに偏りがちだと感じることはありますか?

この記事をきっかけに、みなさんが考える機会になれば幸いです。

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