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【映画感想】機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

 昨日公開の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を見てきました。テレビアニメ放映時のファーストガンダムの1エピソードである「ククルス・ドアンの島」を翻案として映画にしたものです。

 監督は機動戦士ガンダムオリジンなどで監督を務めた安彦良和監督です。


■ネタバレなしの感想

 正直、期待していなかったのですが、相当面白かったです。

 自分は実はファーストガンダムってほとんど見たことがないんですよね。

 二十歳を超えてから『逆襲のシャア』を見て、その後に劇場版Zガンダムを見てもいまいちピンとこなくて、『ユニコーンガンダム』は大好きで、ガンダム無双などをプレイしています。

 それなりにガンダムには触れていたわけですが、実はファーストガンダムだけはかなり昔の作品ということもあって、ほとんど見たことがなかったんです。

 ですが、逆に、ファーストガンダムに思い入れがなかったからこそ、かなり楽しむことができました。

 ファーストガンダムやテレビ版のククルス・ドアンの島に思い入れがあると、いろいろと引っかかるところもあるかもしれませんが、自分は楽しかったです。

 ファーストガンダムをあまりよく知らない方が、逆に1本の戦争映画として面白いと思いますので、「ガンダムってよく知らないし」という人ほど普通に楽しめる映画になっていると思いますので、ぜひご覧いただきたいです!

 ただ、RX-78やザクがあんなに格好いいとは思いませんでしたね。

 ファーストガンダムってやはり他のガンダムに比べると、デザインも地味だし、兵装も地味なので、いまいち好きになれなかったんですよね。

 でも、この映画のRX-78がめちゃくちゃ格好いいのです。

 まさに白い悪魔にふさわしい格好良さでした。

 もっとRX-78の活躍を見たいと思わせるような作品でした。

 作り手の愛がこもっていますね。

 ぜひガンダムファンの方も、ガンダムをよく知らない方もご覧いただきたいと思います。

 以下ネタバレ注意

■ネタバレ有感想

●安彦監督が描きたかったもの=ガンダムではなく、「家族愛」

 この作品で安彦監督が描きたかったものって家族愛だと思うのです。

 ファーストガンダムという舞台を使って、戦争ものや家族ものの映画を作りたかった、と思うのです。

 モビルスーツ戦やファーストガンダムらしさ(?)を期待すると、ククルス・ドアンの島の孤児達の生活場面やホワイトベースのクルーたちの日常が長くてだるく感じると思うのです。

 ですが、実はそここそが安彦監督が描きたかったものだと気づいたら、すんなりと受け入れることができました。

 ああ、安彦監督が描きたかったものって世界名作劇場(ハウス食品アニメ)なんだ。

 脱走兵であるククルス・ドアンと孤児たちが家族として結ばれている絆、そしてそれに触れることでアムロは少しだけ大人に成長するわけです。

 なんとなくシン・エヴァンゲリオンのシンジくんを思い出しましたw

 だから、EDのスタッフロールを見ればわかりますが、本来の主役であるアムロやホワイトベースの乗組員たちは、この物語では主役ではないのです。

 あくまでもファンサとしてガンダムやファーストガンダムに登場するキャラは出てきますが、決して物語の中心ではありません。

●束の間のやさしい物語

 ファーストガンダムは戦争の悲惨さやリアルを描くことでヒットしたわけですが、この作品はそういう土台がありながらも、非常に優しい作品です。

 ククルス・ドアンの家族はもちろんのこと、まだまだホワイトベースのクルーは無事だし、クルーたちもお互いを思いやる余裕があり、アムロもククルス・ドアンや孤児達に認められることで彼らを守りたいと思うようになる。

 とても愛に包まれた作品です。 

 森口博子さんのED曲が流れるシーンでは泣きそうになるくらい爽やかでした。

 今後は過酷な戦いがどんどん待ち受けているでしょうが、アムロにとってもひとときの休息になったのは間違いないと思います。

 そういった意味では非常によい部分を切り取っていて、よかったと思います。

●モビルスーツ戦(特にガンダム)は格好いい

 安彦監督が描きたかったものは、世界名作劇場と述べましたが、それでもやっぱりモビルスーツ戦は格好いい。

 ガンダム自体の出番は本当に少ないですが、ちゃんと白い悪魔として描かれているところはよかったです。

 アムロがジオン兵を踏み潰すところではなくても、ガンダムが敵にとってものすごく脅威であることや強そうというところをしっかりと丁寧に描いているあたりは、短いシーンながらも感動しました。

●アムロがよくわからないのだけは引っかかる

 本作ではアムロはほとんどしゃべらないので、あまり心情がよくわからないのだけは引っかかりました。

 なんとなくはアムロの心情を察することはできるのですが、どういう子なのかよくわからないので、彼の行動原理をもう少し丁寧に描いてほしかったなと思います。

 敵兵をガンダムで踏み潰すシーンも、あれはもう少しどうにかできなかったのかなと思います。

●全体的に突っ込みどころはあるが、よい作品

 食料をどこから調達しているのか、下水関係はどうなっているのかなど突っ込みどころ自体はあるわけですが、元々ジオン公国の軍事施設だったので、なんとかなっているのかもしれません。

 交通手段もあるので、ククルス・ドアンが街まで出かけて、必要物資を購入しているのかもしれません。

 そこら辺の説明はあってもよかったかなと思いました。

 そういう細部の甘さみたいなものは見られましたが、ガンダムは格好良かったし、ククルス・ドアンの孤児達の関係もよかったので、おおむねよかったと思います。

 安彦監督独特の誇張したキャラクターの演技も、ややわざとらしく見えますが、それも作家性だと思えば受け入れられます。

 劇場でもファーストガンダムではない世代の若いお兄さんたちが「円盤買ってもう一度見直したい」と言っていました。

 私も配信が出たらまた見たいくらいには大好きな作品です。

 ぜひぜひ劇場でご覧いただきたいと思います。

 最後までご覧いただきましてありがとうございました。





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秋月大河@作家シナリオライター
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