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【感想】笑の大学

●ストーリーと内容

『笑の大学』(わらいのだいがく)は、三谷幸喜原作・脚本による日本の演劇作品。ラジオドラマ版・舞台版・映画版の3バージョンが存在する。ストーリーは各バージョンとも共通だが、脚本は役者に合わせて各々で書き直されている。

ストーリー
1940年(昭和15年)10月。日本は戦争(日中戦争)への道を歩み始めていた。国民の娯楽である演劇は規制され、警察で台本の検閲を受けなければ上演できない。そんな時代に、生まれて一度も心の底から笑ったことがない検閲官・向坂睦男と、劇団「笑の大学」座付作家・椿一が警視庁の取調室で顔を合わせる。
「笑い」に理解のない向坂は「このご時世に、低俗な軽演劇など不謹慎であり上演する必要はない」と考えているため、「笑の大学」での演目上演中止に持ち込むべく、椿の台本に対して「笑い」を排除するような無理難題を課していく。いっぽう椿は何としても上演許可を貰うため、向坂の要求を飲みながらも更に「笑い」を増やす抜け道を必死に考え、一晩かけて書き直していく。向坂の検閲、椿の書き直し。そんな毎日が続くうち、いつしか向坂も検閲の域を超えた「台本直し」に夢中になってゆく。

ウィキペディアからの引用

●三谷喜劇の最高傑作

三谷幸喜作品といえば、『振り返ればやつがいる』『古畑任三郎』『王様のレストラン』などフジテレビの黄金期のドラマ脚本を数々とつくり、大河ドラマでも『新撰組!』『真田丸』『鎌倉殿の13人』と3作品も脚本を担当しました。

また、映画監督としても多数の作品を手がけています。

どの作品も三谷幸喜作品は演劇をベースとしているため、他のドラマにはない魅力があふれています。

トレンディドラマブームで男女の恋愛がよく描かれた90年代初期のフジテレビのドラマの中でも三谷作品は恋愛を描かない、舞台を限定とするなど異色の魅力があふれていました。

その中でも、『笑の大学』を三谷幸喜作品の最高傑作という人もいます。

20代や30歳そこそこの青年がこんなドラマをつくったことに、本当に畏怖すら感じるほどに、この舞台は素晴らしいです。

●検閲官と座付き作家の攻防は、脚本家とプロデューサーのやりとりそのもの

三谷幸喜さんの作品は、割と彼の実人生をモチーフとしたものが多いです。

例えば、映画監督作品『ラジオの時間』は、三谷さんご自身がせっかく書いたドラマの脚本が現場でどんどん直されてしまうことをモチーフとしたそうですし、同じく監督作品『みんなの家』もご自身が家を建てるときに様々な問題に直面したことをモチーフとしているそうです。

同じように、本作でも検閲官と座付き作家の攻防は、脚本家とプロデューサーの攻防の体験から来ているのではないでしょうか。

●シナリオライターや脚本家は制約の下で書いている

シナリオライターや脚本家、小説家、マンガ家というのは、自分で好きなように書いているわけではありません。

編集者やプロデューサーの意向に沿った形で作品を書いています。

特にシナリオライターや脚本家は、プロデューサーやディレクター(監督)の意見が強く、その意見に合わせてストーリーを書いています。

せっかく書いたストーリーもプロデューサーやディレクターの意向(また、原作者がいる場合は原作者や出版元の意向)によって、大幅な変更をさせられることも当たり前のようにあります。

あるいは、予算や様々な事情によって、変更させられることもありますし、または演出や放送上禁止されていることも多々あります。

例えば、『シン・ゴジラ』の時は、庵野監督が書いた脚本に対して、映画会社の上層部は「恋愛要素や家族愛を入れて欲しい」という要望を出しました。

もちろんヒット作品のセオリーから言えば、「恋愛や家族愛」を取り入れたいという映画会社の意向もわかります。

しかし、「政治劇」を強く押し出すため、あえて「恋愛要素」や「家族愛」を排除した庵野監督と意見がぶつかることとなり、一時期は庵野監督が降板を決意するほどだったと言います。

そうした制約や無茶振りをされる中で、どうやって自分の執筆した物語を無事にお客様に届けることができるか、いつも四苦八苦しています。

自分がやりたいことや表現したいことと、プロデューサーやディレクターの意向や、制作上の制約をどうやってすりあわせながら、より面白いものにできるか毎回頭を抱えています。

そんな姿を『笑の大学』の主人公二人に重ねてしまいます。

●プロは常に妥協と戦っている

商業である以上、完全に自由に作っている作品はありません。
様々な制限の中で、常に意見をぶつけ合いながら、なんとか折り合いをつけて作品を形にしています。

例えば『エイリアン3』では監督のデビット・フィンチャーは、(当時新人監督だったこともあり)周りの意見を聞きすぎた結果、評価が低くなってしまい、それを後悔して、デビット・フィンチャーは自分の信念を貫くことにしたそうです。

作品をつくることよりも、そうした戦いをすることの方がよほどメンタルにきます。

ただ、『笑の大学』の主人公二人のように、制約の中で話し合いをした結果、元の作品よりも面白くなるケースもあります。

プロの現場というのは、常に人と人との戦いの連続であり、そうした中から名作が生まれたり、駄作が生まれたりしているわけです。

『笑の大学』をそんな目で見なくても楽しめる内容ですが、私としては座付き作家の椿が他人事にはとても思えませんでした。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

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