【映画感想】ロスト・キング 500年越しの運命

映画『ロストキング　500年越しの運命』を見ました。
リチャード3世の遺体を発見・発掘したごく普通の主婦の話です。

主演は『パディントン』のお母さん役やアカデミー賞を受賞した『シェイプウォーター』で主演を務めたサリーホーキンスです。

■解説

「クィーン」の名匠スティーブン・フリアーズが「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンスを主演に迎え、500年にわたり行方不明だった英国王リチャード3世の遺骨発見の立役者となった女性の実話をもとに撮りあげたヒューマンドラマ。

フィリッパ・ラングレーは職場で上司から理不尽な評価を受けるが、別居中の夫から生活費のため仕事を続けるように言われてしまう。そんなある日、息子の付き添いでシェイクスピア劇「リチャード三世」を鑑賞した彼女は、悪名高きリチャード3世も実際は自分と同じように不当に扱われてきたのではないかと疑問を抱き、歴史研究にのめり込むように。1485年に死亡したリチャード3世の遺骨は近くの川に投げ込まれたと長らく考えられてきたが、フィリッパは彼の汚名をそそぐべく遺骨探しを開始する。

「あなたを抱きしめる日まで」のスティーブ・クーガンが主人公の夫を演じ、ジェフ・ポープと共同で脚本も担当。

ロスト・キング 500年越しの運命 : 作品情報 - 映画.com

■不当な評価を受けた人が自分の価値を立証する物語（ネタバレ注意）

この物語は不当な評価を受けた主人公のフィリッパがシェイクスピアの舞台を見た時に、リチャード3世が脊柱側湾症であり、残虐であることに違和感を感じて、本当のリチャード3世を調べていく物語です。

どうやらイギリスではシェイクスピアの戯曲があまりにも有名なために、「リチャード3世＝残虐」であるという定説が生まれてしまいました。

けれども、実際の彼がそうだったという証拠はひとつもありません。しかも、リチャード3世が脊柱側湾症だったということから、「障害を持つ人＝性格が悪い」というような偏見まで生み出しました。

しかし、同じように、持病持ちで会社から不当な扱いを受けたフィリッパはそのことに納得ができずに、リチャード3世にシンパシーを感じて彼の名誉を回復するために奮闘します。

物語の中でフィリッパは、リチャード3世の幻影を見て会話をするのですが、それは彼女が生み出した幻影のために、実際のリチャード3世がどうであったか真実については何も答えてはくれません。

それでも、彼に導かれるように物語は進んでいきます。

最後がもやっとする人がいるかもしれませんが、それでも最後の最後でフィリッパが彼女の本懐であるリチャード3世の名誉を回復させたところを見て号泣しました。

リチャード3世もさぞ天国で喜んでいることでしょう。

そして、フィリッパ自身の名誉も得られたことに泣きました。

歴史の定説をひっくり返すカタルシスだけではなく、不当な評価を受けて人生に行き詰まった女性が、同じように歴史の闇に葬られて歪曲して不当な評価を受けた歴史上の人物の名誉を回復させたというドラマとしても素晴らしいです。

究極の歴女の物語だと思います。

■成功すれば英雄、成功するまで変人

人生が行き詰まっていたごく普通の主婦がリチャード3世の遺骨を発見するという実話を元にした映画です。

ごく普通の主婦が歴史にのめり込んでいき、やがて行方知れずとなっていたリチャード3世の遺骨を発掘するまでのストーリーは、まさにプロジェクトＸのようなカタルシスがあります。

それをサリーホーキンスが好演しています。

我々はもう彼女が成功していることを知っているから、彼女の努力を応援するし、物語も安心して見ることができますが、当の本人は本当にあるかもわからないリチャード3世の遺骨を見つける最中は、さぞ不安だったと思います。

作中でもみんなが最初から応援してくれたわけではなく、変人扱いされるし、プロジェクトの打診を片っ端にしても断られるし、一度は心が折れそうになってしまいます。

それでも、彼女は諦めずに発掘をした結果、リチャード3世の遺骨を見つけることができましたし、こうして映画化もされました。

世の中は本当にそんなもので、成功するまでは世間は変人扱いをするわけですし、成功した途端に手のひらを返してもてはやします。

でも、結果が出るまでの暗い道のりを手探りで進んだことこそ讃えられるべきと自分は常々思います。

世間は結果が出るまでバカにするし、冷たい目を向けるし、「ましになりなよ」と余計なアドバイスをしてくるし、いつ成功するかもわからない中で、そんな心ない言葉を向けられながらも、夢に向かって挑戦を続けるのは本当に大変です。

創作界隈においても、公募で一次落ちを繰り返していた応募者がある瞬間に、新人賞を総なめすることもありますし、ある日突然作品が売れることもあります。

また、一度消えたと思われた作家が復活することもあります。

宮崎駿監督も初監督作品の『ルパン三世　カリオストロの城』で大こけして、数年間干されていましたし、押井守監督も『天使のたまご』の大失敗で干されていました。

新海誠監督も『君の名は。』で大ヒットするまでは、マイナーなアニメ監督でした。

大きな結果を出したからこそ、世間では天才だの巨匠だのともてはやしますが、それまではただの変人扱いですし、話しすら聞いてもらえません。

世間なんてそんなものなので、自分の夢を諦めることはないし、逆に言えば、どんな無謀な挑戦をしている人に対しても悪く言ってはいけません。

馬鹿にした相手がいつか芽が出て大きな結果を出した時に、自分が痛い目にあいます。

話はそれてしまいましたが、そんなことをあらためてこの映画を見て思いましたとさ。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。