発達支援:会話のルールでわかったこと
前回は『協調の原理』について記事を書きました。
今回は、前回の協調の原理をもとに、私が日常的に言葉の練習をしている
対象者の具体例を記事にします。
前回の振り返り
その前に『協調の原則』の復習を入れましょう。
次の4つでしたね。
1.質の公準
2.関係性の公準
3.量の公準
4.様態の公準
大切なのは、話している人は、聞いている人が求めているものを
適切に理解した上で話さないと、会話は成り立たないですよ
というお話でしたね。
ある日のかかわり
ST→言語聴覚士
Pt→対象児
「」→話している内容
””→STが考えている内容
Pt「おはよーねぇねぇ、見て見て!」
ST「おはようございます。どうしたの?今日はおもちゃを持ってきたんだね。」
”珍しいなぁ、買ってもらったのが嬉しくて、見せたかったのかな?”
Pt「うん。」
ST「これは何ていうの?」
”おもでゃの勉強しなきゃなぁ”
Pt「シンカリオン」
ST「かっこいいねぇ」
”さて、どうやってシンカリオンで遊ぼうかな”
ST「これは誰に買ってもらったの?」
Pt「んーっと、・・・お休みに買ってもらったの」
ST「そっかー、お休みの日に買ってもらったんだね。嬉しいね」
”あれ?『誰』が理解できんかったかな?それとも人の名前が言いにくい?”
Pt「うん!(オモチャで遊ぶ)」
ST「これはパパが買ってくれたの?」
”まずはPtに激甘なパパから聞いてみるか”
Pt「違うよ」
ST”なるほど、『誰』の疑問詩は理解できていたのかもな”
「んーそしたらおうちの人?」
Pt「ブ、ブー」
ST”違ったかぁ、もっと関係性を広げてみるか”
「じーじ?ばーば?」
Pt「そだよぉー!じーじ!」
ST「そっかそっか、お休みの日に、じーじにシンカリオンを買ってもらったんだ。じーじ、ありがとうだね」
”Ptに激甘なのはじーじもだったのか”
さて、このやりとりは私と対象児のやり取りの一例です。
STが「誰に買ってもらったの?」と尋ねている質問に対して
Ptは考えた後、「お休みの日に買ってもらった」と答えています。
協調の原理から考えると
話す人は、話題に沿った話をしましょう。自分勝手に話題を変える
ことは、いけませんよと言うルールの『関連性の公準』に合っていない事が分かります。
関わりの中で考えた事
『関連性の公準に合っていないのはなぜだろう』と考えた私は
・『誰』という疑問詞の理解が難しいのか?
・『誰』を『いつ』と思い違いしたのか?
・買ってもらった人はじーじだが、名前が出てこないのか?
・「じーじ」と言おうとしたら、「お休みの日」と言い間違いしたのか?
・一緒に住んでいる人なのか?それ以外の人なのか?
・もしくはそれ以外のことなのか?
・絵や写真を使うか?
・最終的には同室している保護者さんに聞いてみよう
など思いをめぐらせました。
※実際は心理検査の結果などが頭の中にあるので、ある程度予測しながら対応しています。
大切なことは『協調の原理』の合わないから、いけないのではなく
なぜ、協調の原理から外れてしまったのか?をしっかりと考える事が
大切なのだと思います。
そして、表現ができる手段が限られているお子様には、口頭で話すことを
強要しないことが必要です。
『頷き-首ふり』で答えれる質問や『絵や写真で見せる』なども経験を表現する手段の一つです。
子どもに『言葉での表現が上達してほしい』という保護者の気持ちは痛いくらい伝わってきますし、どうにか力になりたい思いもあります。
しかし、子どもに言葉で伝える事を求めすぎるあまり、子どもが話す事を嫌いになることもあります。
これからも大切にしたい事
子どもが経験したことを伝えたくても、伝えれない辛さを想像して
嬉しかった、楽しかった思い出や気持ちをどうやったら共有できるか?
お子様に関わる言語聴覚士として、とても大切なことだと再確認しています。
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