9月景気動向指数・一致CIは2カ月ぶり前月差上昇へ。基調判断は「下げ止まり」継続だが、10月で「上方への局面変化」になる可能性が高まりそう。―日本の主要経済指標予測(2024年10月31日)―
9月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲2.5%程度と2カ月連続減少を予測。(11月8日発表)
8月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比▲1.9%と2か月ぶりの減少になりました。
外出の増加などで、飲酒代、和食などの「外食」は実質・前年同月比+10.1%増加しました。贈与金など「交際費」は実質・前年同月比+15.2%増加しました。また、米、カップ麺などの「穀類」は実質・前年同月比+14.9%増加しました。米の実質・前年同月比+34.5%は比較可能な2001年1月以降、過去最高の増加率です。
一方、自動車購入などの「自動車等関係費」が実質・前年同月比▲23.2%の減少になりました。台風や一部自動車メーカーの生産・出荷の一時停止の影響などが出ました。旅行需要の落ち着きの影響などで、国内パック旅行費、外国パック旅行費などの「教養娯楽サービス」は実質・前年同月比▲7.0%の減少になりました。設備器具などの「設備修繕・維持」は実質・前年同月比▲12.2%減少しました。
実質・季節調整済み前月比は、実質+2.0%と2カ月ぶりの増加になりました。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は+3.5%になりました。
財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲3.8%と18カ月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲1.0%と2カ月ぶりの減少になりました。
9月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲2.5%程度と8月の▲1.9%から減少率が拡大すると予測します。前月比は▲0.4%程度と 2 カ月ぶりの減少になるとみました。
家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+2.5%、2月+3.3%、3月+3.1%、
4月+2.9%、5月+3.3%、6月+3.3%、7月+3.2%、8月+3.5%、9月+2.9%と推移しています。デフレーターは、9月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては8月から0.6ポイントの増加要因になります。
関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は8月▲3.2%の減少から9月は+0.8%の増加と4.0ポイント改善しました。前月比は+0.7%です。一方、全国百貨店売上高・前年同月比は8月+3.9%から9月+2.3%へと1.6ポイント鈍化しています。また、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の前年同月比は8月+3.8%から9月+1.0%へと増加率が2.8ポイント鈍化しました。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、9月速報値+0.5%で、8月+3.1%から増加率が2.6ポイント鈍化しています。
景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断 DI・季節調整値は、23年10月 50.4、11月49.8、12月50.0、24年1月47.9、2月49.3と推移してきましたが、3月48.3、4月46.2、5月43.8と2カ月連続で低下したあと、6月46.6、7月45.9、8月47.5、9月47.4と一進一退で推移しています。
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。
9月景気動向指数・速報値・先行CIとも一致CIは、ともに2カ月ぶり前月差上昇を予測。(11月8日発表)
9月速報値の一致CIは前月差+1.7程度の上昇と予測します。前月差上昇は 2 カ月ぶりです。
一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の5系列が前月差寄与度プラスになり、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・9月速報値・前月比は+1.4%と、2 カ月ぶりの上昇となりました。全体15業種のうち、自動車工業など10業種が上昇した一方、生産用機械工業など5業種は低下という結果になりました。
9月の先行CIは前月差+2.8程度と2 カ月ぶりの上昇になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全9系列が前月差寄与度プラスになると予測します。
9月の先行DIは66.7%程度、一致DIは62.5%程度を予測。どちらも景気判断の分岐点50.0%を上回りそう。
9月の一致DIは62.5%程度と2カ月ぶりに景気判断の分岐点の50.0%を上回ると予測します。9月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の5系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業 1 系列が保合いに、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列がマイナス符号になると予測します。
9月の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の 50%を上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の3系列がマイナス符号になるとみました。
11月8日公表の9月速報値では景気の基調判断「下げ止まり」継続か。
景気動向指数の景気の基調判断が「下げ止まり」から直接「改善」に上方修正されることはできず、「上方への局面変化」を通過しなくてはなりません。「上方への局面変化」は「7カ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分以上、かつ、当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。
9月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は5カ月連続「下げ止まり」の見込みです。
9月一致 CI が予測通り+1.7だとすると、前月差はプラスで、かつ7カ月後方移動平均前月差も +0.47程度と3カ月連続プラスにはなりますが、3カ月の累積が+0.81程度にとどまり、1標準偏差分は+0.88なので「上方への局面変化」に上方修正される条件を満たしません。
12月6日公表の10月速報値で、景気の基調判断が「上方への局面変化」になる条件は。
9月分が予測通りで、かつ過去の数字が変わらないと仮定し、10月速報値の一致 CI の前月差が+0.6のプラスになると、7カ月後方移動平均前月差3カ月累積プラスが+0.89と1標準偏差の+0.88を上回り、この場合に景気判断が「上方への局面変化」になります。
なお、鉱工業生産指数の9月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の10月前月比は+8.3%で、経産省の先行き試算値最頻値は同+5.1%、90%の確率に収まる範囲は+3.6%~+6.6%と、かなりしっかりした数字になる見込みです。他の採用系列の動向にもよりますが、好調な見通しの数字をみると、「上方への局面変化」に判断が上方修正される条件である一致 CI 前月差が+0.6以上になる可能性が高い状況です。
なお、この場合、10月の一致 CI前月差が+1.6以上になると、一致CI前月差がプラス、3カ月後方移動平均の前月差が9月・10月と2か月連続でプラスになるので、1月10日発表の11月速報値で、一致CIが前月差プラスにさえなれば、3カ月後方移動平均の前月差が3カ月以上連続してプラスとなり、景気判断が「改善」に戻る可能性が出てきます。但し、製造工業生産予測指数の11月前期比はマイナスなので、今後の採用指標の動向に要注目です。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。