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4月景気動向指数・改定値で「改善」に。景気の基調判断上方修正のサプライズ。生産・出荷関連指標の基準改定の影響。5月も「改善」継続か。―日本経済の主要経済指標予測(2023年6月30日)―

5月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は3カ月連続の減少か(7月7日発表)

4月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比で▲4.4%と2か月連続の減少になりました。ちなみに名目消費支出の前年同月比は▲0.5%で13か月ぶりの減少です。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+4.1%でした。
ゴールデンウイークが月末に始まったことによる旅行費増加などで、教養娯楽サービスが実質+13.1%の増加になりました。また、外出増に伴い、外食が実質+12.9%の増加になりました。鉄道運賃、航空運賃などの交通は実質+27.4%の増加になりました。
一方、携帯電話通信料で低廉な料金プランへ移行した人の増加で、通信が実質▲8.3%減少しました。18歳未満人員の減少傾向などで補習教育が実質▲28.9%減少しました。母の日が前年に比べ遅かったことなどから「切り花」が実質▲26.5%減少しました
財・サービス別の前年同月比をみると、財は、実質▲3.4%と2か月連続の減少、サービスは、実質▲1.9%で13か月ぶりの減少になりました。
5月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲2.9%程度と3カ月連続の減少になると予測します。前月比は0.0%程度とみました。
家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は2月+3.9%、3月+3.8%、4月+4.1%、5月+3.8%と推移しています。デフレーターは、5月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に対しては4月から0.3ポイントの増加要因になります。
関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の5月前年同月比は+28.4%で4月の+18.5%から増加率が9.9ポイント高まっています。一方、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の5月の前年同月比は+1.3%と4月+3.4%から2.1ポイント増加率が鈍化しました。また、5月の全国百貨店売上高・前年同月比は+6.3%で4月の+8.6%から2.3ポイント増加率が鈍化しています。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、5月速報値+5.7%で、4月+5.1%から0.6ポイント伸び率が改善しています。
景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、1月44.2、2月50.2、3月50.1、4月50.7、5月50.7と推移しています。
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※23年5月は筆者予測

5月の景気動向指数・一致CI前月差は4カ月ぶりに下降に転じる見込みだが、下降幅は小幅で「改善」の判断継続か(7月7日発表)

景気動向指数では、一致CIを使っての基調判断が機械的に行われています。当月の一致CIの前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も踏まえ、行われます。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方へのor下方への)」「悪化」「下げ止まり」の5つがあります。
4月速報値での景気の基調判断は、5カ月連続で、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」でした。
しかし、4月景気動向指数・改定値で景気の基調判断は景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正されるサプライズが生じました。
6月20日に発表された鉱工業指数・4月確報値で15年基準から20年基準に変更が行われ、併せて通常2月確報値で行われる年間補正が2カ月遅れで同時に実施されたことで、生産・出荷関連の一致CIの採用系列のデータが過去に遡って変更されたためです。
例えば、15年基準から20年基準になったことで、第一系列の生産指数(鉱工業)・季節調整値は20年以降のコロナ禍で月別では5月の数字が大きくなったなどの変化がみられます。

4月の一致CIは速報値の99.2から改定値は97.3に大幅に下方修正されましたが、前月差は+0.2から僅かな下方修正で+0.1とぎりぎり上昇は維持されました。4月速報値では一致CI 3カ月後方移動平均の前月差は+0.86と7カ月ぶりのプラスでしたが、4月改定値では3カ月後方移動平均の前月差は+0.77に下方修正されました。一方、過去の数字である2・3月の前月差が、2月+0.10、3月+0.17と上昇に変わりました。そのため、4月で3カ月後方移動平均の前月差の3カ月連続上昇が成立しました。
基調判断が「改善」に戻るとしてもその時期は23年後半になると、4月速報値までは判断されていましたが、4月改定値段階では、「一致CI 3カ月後方移動平均の前月差の3カ月連続プラスかつ、一致CIの前月差プラス」という、景気基調判断が上方修正の条件が満たされていたことになりました。このため、景気の基調判断は、22年12月から23年3月まで続いた「足踏み」から、22年3月から11月まで継続していた一番良い判断の「改善」に戻りました。
なお、景気動向指数は、7月7日公表予定の23年5月分速報値から、CIの基準年が15年から20年に変更され、過去のデータも遡及改訂される予定です。
一致CIを使った景気の基調判断が速報値と改定値で異なる判断になったのは、21年9月から続いていた「足踏み」の判断が22年2月速報値でも継続されていたものが、生産・出荷関連データの年間補正などがあった22年2月改定値で「改善」に戻って以来、2度目です。
5月の一致CIは前月差▲0.3程度の若干の下降と予測します。一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・5月速報値・前月比は▲1.6%の低下となりました。全体15業種のうち、生産用機械工業など3業種が上昇、自動車工業など12業種が下降となりました。
速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の4系列が前月差プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の4系列が前月差寄与度マイナスになるとみました。
5月の先行CIは前月差+1.6程度の上昇になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の6系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※23年5月は筆者予測

5月の先行DIは44.4%と4カ月ぶり、一致DIは31.3%と3カ月ぶり50%割れか。

5月の一致DIは31.3%程度と3カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を下回ると予測します。5月の一致DIでは、データが利用可能な8系列中、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数の2系列がプラス符号に、輸出数量指数1系列が保合いに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の5系列がマイナス符号になると予測します。
5月の先行DIは44.4%程度と景気判断の分岐点の50%を4カ月ぶりに下回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数の5系列がマイナス符号になるとみました。

5月・6月も景気基調判断は「改善」継続の可能性が大きいか

次回5月でも景気の基調判断は2カ月連続で「改善」になると予測します。景気拡張の動きが足踏み状態になって いる可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるための条件、「当月の前月差の符号がマイナス」は満たしても、もう一つの条件、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(7月7日に2020年基準の新しいものが発表される予定)以上」になるほど前月差が大幅な下降になることは、5月の一致CIの前月差が小幅な下降のため考えにくいと思われます。
さらに6月でも景気の基調判断は「改善」が維持される可能性が高いと思われます。一致CI採用第1系列の生産指数(鉱工業)の先行きを製造工業予測指数でみると、前月比+5.6%の大幅上昇の見込みです。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、6月分の前月比は先行き試算値最頻値で+3.4%の上昇になる見込みです。90%の確率に収まる範囲は+2.1%~+4.8%と、どの数字もそれなりの上昇幅になっています。
生産指数からみて、一致CIの前月差がプラスになる可能性が大きいと思われます。また万一、前月差がマイナスになっても一致CIの3カ月後方移動平均(前月差)の2カ月累計が新たに発表される標準偏差になることをもたらすほど、6月前月差が大幅マイナスになる他の系列はないのではないかと思われます。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。