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7月家計調査・実質消費支出・前年同月比は3カ月連続の減少か。7月景気動向指数・一致CIは2カ月ぶり前月差上昇。基調判断は「下げ止まり」継続か。―日本の主要経済指標予測(2024年8月30日)―

7月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲2.0%程度と6月から減少率は拡大し、3カ月連続の減少を予測。(9月6日発表)

 6月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比▲1.4%と、2カ月連続の減少になりました。
 
 前年に比べ気温の高い日が多かったことに伴うエアコン需要の増加などで、エアコン、電気冷蔵庫などの「家庭用耐久財」は実質・前年同月比+62.8%増加しました。外出の増加などで、和食、ハンバーガーなどの「外食」は実質・前年同月比+10.7%増加しました。また、民営家賃などの「家賃地代」は実質・前年同月比+6.3%増加しました。
 
 一方、外壁・塀等工事費が増加した前年からの反動減の影響などで、外壁・塀等工事費などの「設備修繕・維持」が実質・前年同月比▲39.5%の減少になりました。低廉な料金プランへ移行した人の増加の影響などで、携帯電話通信料などの「通信」は実質・前年同月比▲8.3%の減少になりました。「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の値引き単価の縮小の影響などで、「電気代」は実質・前年同月比▲9.1%減少しました。
 
 実質・季節調整済み前月比は+0.1%と3カ月ぶりの増加になりました。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は+3.3%になりました。
 
 財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲0.5%と16カ月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲2.1%と2カ月連続の減少になりました。
 
 7月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲2.0%程度と6月の▲1.4%から減少率が拡大し、3カ月連続の減少になると予測します。前月比は▲2.8%程度と2カ月ぶりの減少になるとみました。
 
 家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+2.5%、2月+3.3%、3月+3.1%、4月+2.9%、5月+3.3%、6月+3.3%、7月+3.2%と推移しています。デフレーターは、7月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては6月から若干の増加要因になります。
 
 関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は6月▲6.1%から7月は+5.5%へと10.6ポイント増加率が拡大しました。前月比は+1.3%です。一方、全国百貨店売上高・前年同月比は6月+14.0%から7月+5.5%へと8.5ポイント鈍化しています。また、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の前年同月比は6月+4.7%の増加から7月▲1.0%の減少へと5.7ポイント増加率が鈍化しました。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、7月速報値+2.6%で、6月+3.8%から増加率が1.2ポイント悪化しています。
 
 景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、23年10月50.4、11月49.8、12月50.0、24年1月47.9、2月49.3と推移してきましたが、3月48.3、4月46.2、5月43.8と3カ月連続で低下しましたが、6月は46.6まで一旦戻しました。しかし、7月は45.9に低下しました
 
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※24年7月は筆者予測


7月景気動向指数・速報値・先行CIとも一致CIは、ともに2カ月ぶり前月差プラスを予測。(9月6日発表)

 7月速報値の一致CIは前月差+2.9程度の上昇と予測します。前月差上昇は2カ月ぶりです。
 
 一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列が前月差寄与度プラスになり、商業販売額指数・小売業の1系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
 
 一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・7月速報値・前月比は+2.8%と、2カ月ぶりの上昇となりました。全体15業種のうち、石油・石炭製品工業が低下した以外、残りの14業種は上昇という結果になりました。
 
 7月の先行CIは前月差+0.5程度と2カ月ぶりの上昇になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、東証株価指数の5系列が前月差寄与度プラスに、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※24年7月は筆者予測

7月の先行DIは33.3%程度、一致DIは62.5%程度を予測。

 7月の一致DIは62.5%程度と景気判断の分岐点の50.0%を上回ると予測します。7月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列がプラス符号に、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の3系列がマイナス符号になると予測します。
 
 7月の先行DIは33.3%程度と7カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、東証株価指数の3系列がプラス符号に、新規求人数 、新設住宅着工床面積、日経商品指数、消費者態度指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になるとみました。

9月6日公表の7月速報値では景気の基調判断「下げ止まり」継続か。

 景気動向指数の景気の基調判断が「下げ止まり」から直接「改善」に上方修正されることはできず、「上方への局面変化」を通過しなくてはなりません。「上方への局面変化」は「7カ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分以上、かつ、当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。
 
 7月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は2カ月連続「下下止まり」の見込みです。
 
 7月一致CIが予測通り+2.9だとすると、前月差はプラスで、また7カ月後方移動平均前月差も0.03程度とぎりぎりで2カ月ぶりにプラスになりますが、プラス幅が小さく「上方への局面変化」に上方修正される条件を満たさないためです。
 
 また、7月一致CI が景気後退の可能性が高い「悪化」になることもありません。「悪化」の条件は、「原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスになること」です。予測通りだと3カ月後方移動平均の前月差は+0.30程度と2カ月ぶりにプラスに転じ、かつ前月差の符号がプラスになるからです。

10月7日公表の8月速報値で、景気の基調判断が「上方への局面変化」になる条件は。

 過去の数字が変わらないと仮定し、8月速報値の一致CIが+2.8のプラスになると、7カ月後方移動平均前月差2カ月累積プラスが1標準偏差の+0.88を上回る+0.89になり、この場合に景気判断が「上方への局面変化」になります。
 
 なお、鉱工業生産指数の7月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の8月前月比は+2.2%で、経産省の先行き試算値最頻値は同▲0.9%の見込み、90%の確率に収まる範囲は▲2.3%~+0.6%の見込みです。これらをみると、「上方への局面変化」に判断が上方修正される条件である一致CI前月差+2.8以上になることはやや難しそうです。
 
 3カ月後方移動平均の前月差が7月でプラスに戻るとみられることで、一致CI前月差がマイナスになっても。8月で景気判断が、景気後退の可能性が高い「悪化」になる可能性はないと思われます。
 
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。