〈ライアーのおてくにっく〉8. 弾き方のこと
〈ライアーのおてくにっく〉投稿は、
久しぶりだよ。
弾き方のおてくにっくを
よく聞かれるので、
ちょっとここに記しておこうと思う。
ライアーは、ピアノとは違う。
なぜなら、ライアーは、
ピアノではないから。
当たり前かぁ。
私のライアーおてくにっくは、
ハープの弾き方とチェンバロの弾き方、
そしてバイオリンの弓を
基本にしている。
私は、スザンネ・ハインツに師事し、
ミュンヘンの南ドイツライアーオーケストラに
所属していた。
スザンネは、ライアーについての
具体的なおてくにっくやメソッドはなかった。
療法をする時は、作品を弾くわけではない。
ライアーの場合は、
即興やインターバル、旋法を使ったりする。
まだその頃の私は、
ライアーおてくにっくは、
重要視しなくても別にいい、
時たま、何か作品を弾ければいい、
と思っていた。
しかし、音楽療法には、
音色こそが、命だと考えるようになった。
作品を弾くよりも、1つ1つの音に、命があり、
それが、
療法に繋がるのだと考えるようになった。
私の師事したハープの先生は、2人いる。
クレール・ピガニオール(Claire Piganiol)は、
バーゼルに住む、若い古楽ハープ奏者だ。
クレールからは、
中世特有の、
ミミズ音符や四角音符などで記された、
美しいカラー絵の楽譜の読み方や
さまざまなオルヌモンと即興を学んだ。
で、未だ、あの音符たちは、読めない。
そして、
エレナ・ポランスカ(Elena Polanska)。
エレナが亡くなる半年前、
彼女の晩年に、テクニックを習った。
それはいわゆる、音の出し方だった。
私は、エレナの前で、
1音を出すのに、毎回、約30分以上かかった。
指のどこに弦を掛けるのか、
どういう形で、どの向きに弦を鳴らすのか。
指先の位置、指の当てる弦の感覚、
呼吸やお腹と、とても繊細な仕事で、
非常に時間がかかった。
耳だけではなく、
身体を澄ませて聴くこと。。
身体で静けさを聴き、
音の立ち上がりを聴き、
音の生まれを聴き、
音の死にゆくさまを聴く。
それは、本当にミリもないような
細かさだった。
しかし、その、ミリもない細かさは、
確かに音色を変えた。
この経験は、
私が、ライアーで作品を弾く時にも、
さまざまな楽器で音楽療法をおこなう時にも、
基本となっている。
私の指は、太くて大きく、
バロックの2段ハープや3段ハープの弦は、
残念ながら、
うまく掛けることができなかった。
指先は、ほっそりして可愛いお手てが、
こういった弦楽器には、向いている。
指を誰かと取り替えるわけにはいかないし、
文句言っても仕方ないので、
なんとか、弦の角度を探り、その動きによって、
音を出さないといけなかった。
そして、もうひとつ、
ライアーやハープなどの楽器に限らずなのだが、
手のひらの力を抜かないといけない。
力を抜くと、自然に赤ちゃんが、
寝ている時の丸い手の形になる。
力が抜ける、ということは、
必要な時に、必要な部位の力が一瞬入れて、
音を出すことができる、ということだ。
手は、丸みを帯びる。
柔らかく弦の上に置いて、
楽器を構えた時には既に、
リラックスした状態なのだ。
緊張する時は、指が震えて、
突っ張って伸びてしまうので、
なかなかいい音色を出すのは、難しい。
丸く柔らかな手の動きは、
呼吸と共に動くことができる。
動かす時は、手のひらを柔らかく使い、
以前のnoteブログに記したように、
「グランドピアノの蓋のようにして、
共鳴させるように」弾くと、
きれいな丸い音が出る。
丸い音の中身には、シンがある。
ライアーに限らず、
他の楽器でも、いい音色が出ると思うよ。
知りたい人に、
伝えさせてもらえたら、と思う。