見出し画像

「ベイビー・ブローカー」見てきた感想。

 是枝監督の「ベイビー・ブローカー」を見てきました。話題の映画だし、興味深々でいきましたが、驚いたことに、この映画は、韓国風味どころか、韓国映画でした。全員が韓国俳優で、場所も韓国で、韓国の話題を取り上げていました。(もちろん、日本にも赤ちゃんポストはあるけれど)
 そして、この映画は、以前韓国映画で「パラサイト・半地下の家族」が賞を取って有名になったけれど、その時の偉大な有名な俳優さんなどを起用していました。だから、雰囲気も同じ、底辺生活も同じ、役者はものすごい演技派ばかりで、問題意識という点では、確かに鋭く、さすが是枝監督だと目が離せないほど引き付けられて物語は進んでいくのだけれど、ただ、私は、なんで、是枝監督は韓国映画を作ろうと思ったのだろうという疑問が頭から離れずに、下衆の勘繰りで、是枝さん、在日韓国人だったの? この映画でカミングアウトしたかったの? 故郷に錦を飾りたかったの?・・という思いまで沸いたけれど、ウイキでは。
 是枝監督は『東京都練馬区に生まれ、9歳から清瀬市清瀬旭が丘団地で過ごす。のちに旭が丘団地は『海よりもまだ深く』の主人公の実家として撮影場所にも使われた。鹿児島県生まれで奄美大島に渡った曽祖父、奄美生まれで台湾に渡った祖父、台湾生まれでシベリア抑留を経験した父という家系に生まれた。母親が映画好きだったため、幼いころから池袋の映画館でさまざまな映画を鑑賞』
と出ていたから、曾祖父、祖父、父と、日本国内というより、世界を意識した環境があったのでしょう。

 芸術作品を作るには、どこで生まれようと、どこに住もうと、どうでもいいことで、内容は、韓国の赤ちゃんポストに捨てられた赤ちゃんを、まあ、盗んで子供のいない家庭に売るという話で色々展開があり、疑似家族的なところも描いたり、そして、最後にはどんな子供も、生まれてきてくれてありがとうという結論を引き出しているところは、さすがにうまく描かれていると思いました。

 ただ、私はその時に、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の「真実」だったかな? その映画を思い出しました。私の記憶のカトリーヌ・ドヌーヴは、押しも押されもしない大女優で、とても華やかで、とても堂々としていて、憧れにも似た素晴らしさがあったのですけれど、是枝監督の描いたカトリーヌ・ドヌーヴは、題名にもある通り、大女優が自伝を書き、どちらかというと黄昏ていく話なので、仕方ないと言えば仕方ないのですけれど、その華やかさは、あまり表現されなかったと思いました。あるとすれば、年老いた女優の足が、いかにも細くてまっすぐで美しくて、さすが往年の大女優と感動したところくらいでした。
 もちろん、話自体は込み入っていてさすが是枝監督という感じだったと思うのですけれど。欲を言えば、せめて昔の(今もかな)大女優の華やかな輝かしい若き日の一面を短くでもいいから、見たかった。描いてほしかった。(描いていたのかな? 私には感じられなかっただけかな)それが、大女優に対してのリスペクトなのではないだろうかと思ったものでした。
 まあ、是枝監督は、時代が違い、カトリーヌ・ドヌーヴの華やかさの記憶がなかったのかもしれないけれど、その作品では、壮大さもあまりなく、部屋も大方小さくて、カトリーヌ・ドヌーヴを小さい空間に押し込めてしまっている気がしたものでした。

 ともあれ、是枝監督は幼少期から28歳くらいまで苦労を重ねたようで、だからこそ、今の社会への目が研ぎ澄まされてきたのは間違いのないことだろうと思うし、多分、すごく真面目で努力家で、組合的な会社運営がなされるテレビマンユニオンに属したり、今や、早稲田や立命館大で教鞭をとっているらしいから、少々左的観点もあるのかはわからないけれど、だからこそ、社会への問題提起の作品を作り続けられるのかもしれないと思います。
 是枝監督の「万引き家族」にしろ、今回の「ベイビー・ブローカー」にしろ、韓国映画の「パラサイト・半地下の家族」にしろ、本当に同じ風味の映画のように思います。
 人間は、小説にしろ、映画にしろ、美術にしろ、自分の味を噓なく遺憾なく徹底的に追求して、それを表現するわけだから、自分をごまかしてはいい作品は作れないだろうから、今回の是枝監督の作品も、徹底的に自分を追求しさらけ出して社会を追及して得た結論で、成功したのだろうと思います。

 一介の巷の主婦が、小生意気に辛口の感想を書いてしまい、自分としては穴に入らなければいけないほど恥ずかしい限りであって、書けば書くほどぼろが出る訳だけれど、私の願いは、是枝監督が、このようなねちっこさ、粘着性の作品から、日本人として、貧しくとも清く、潔さが出てくる作品を作ってくれたなら、これぞ映画の神様(今でも既に物凄い映画の神様なのは確かなのだけれど)、映画の極みと声を限りに叫びまくり絶賛しまくるのだけれど・・。
 映画の何たるかも知らない素人のお前なんかに批評されたくないわという皆々様の御もっともな御意見がガンガン(ガンガンなんて来ないか? 完全に無視されるだろうけれど)響いてくる可能性もなくはなく、奇特な誰かが文句を言って非難ごうごうになって、私が文字も書けなくなる前に、無知で中途半端で出まかせな小感想はそそくさと終わりにして、退散することにします。
 映画を見ただけで、無知で内容もないのによく書くわ。(反省)
 自分では何を書きたかったのか、さっぱりわからなっています。
 是枝監督、素晴らしいです。
 日本の映画界をこれからも背負って行ってください。
 自由勝手気ままな言論空間、ありがとうございます。
 本当に、私、何を書きたかったのだろう??
 


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?