今月の1冊~2020.12
もう2021年も最初の月が終わろうとしていますが、振り返りつつの2020年12月。
師走の名の通りに忙しかったです。だからあまり覚えていなくて。
でも人生初のクロスバイク!!に乗りました。そしていきなり20キロ。
不安しかなかったのですが、無事成し遂げることができてホッとしています。その話はまた今度。
読む本は数あれ、ぐっとくる1冊にはそんなに簡単に出会えない。
そんな中でも毎月1冊もしあれば2冊、自分のなかでこれは・・と思ったものの感想を書いていこうと思います。
本の要約ではないと思うので気になる方は是非ご自身で読んでください!
今月は
心は孤独な狩人 カーソン・マッカラーズ / 村上春樹
村上春樹さんが訳した小説。耳がきこえないひとりの男性が主人公。静かに暮らす彼の日常には、いつも誰かが話をしに訪ねてくる。話にくる人々は悩み、時には憤り、悲しみながらも彼に話をすることで小さな生きる希望をみつけて生き続ける。舞台はアメリカ、そして黒人差別が当たり前だった時代で、今では想像もつかないシーンではありますが、人の悲しみや生きる希望、そしてそこに現れる隣人の存在は今もまったく色あせることなく、まさに現代のわたしたちのリアルをうつしだしているかのようでした。
彼は、話す人の口元を読み解くことができるので、だれかの話しを理解することは問題ないのですが、声を発することはないです。代わりに確実に言いたいときだけメモを見せる。それが彼のスタンダード。
だから、彼に話をしにいったとしても、相槌はあったりもしますが(それはその時による)なにか解決策を教えてくれるとか、一緒に思いっきり何かを言ってくれるとかそういうことはないのです。それでも、彼の部屋にはそれこそいろんな人がふらっと立ち寄っていきます。そしてたくさんの話しを彼にしていきます。みんな気づいているのです。彼だけが、自分の話を本当の意味で聞いてくれているということを。
話したい時って、たぶん誰かに聞いてほしいから話すんですよね。なにかを言ってほしいわけでもなく、なぐさめてほしいとか、ほめてほしいとかそんな気持ちが全くないわけではないと思うのですが、話したことをそのまま受け止めてほしいから話すんじゃないかなと思います。
コミュニケーションをとりたいというものとはちょっと違うと思うんです。こういうときの話したいって。コミュニケーションであれば確実にフィードバックが欲しいし、何かに向かって進んでいく感じが必要になる。でも話したいというのは、あくまでも自分の中のはなしで、その時の感情とかすべてを声にのせて外にだしたいというのが近いんだと思います。そしてその時は、ただただ受け止めてくれるとい存在がとても大切になってくる。そんな感じなんだと思います。このお話ではその「受け止めてくれる」存在がまさに彼なわけで。様々なおもいを持った人々は、彼だけは「受け止めてくれる」と思っていたのでしょう。
そして、「この受け止める」ってとても難しい。聞いてしまうと、何か反応してしまうし、聞かなかったら、そもそも話を聞くということにならない。本当に聞くだけ。そんなことが出来るのはとてもすごいことだと思います。
最近だと、コミュニケーションという意味ではとなりの誰かに話してみたり、インターネット上でなにかを投稿たり、実にたくさんのフィードバックをもらえる機会が増えたなと思います。でも、話を聞いてもらうという行為が許される場所ってほんとに少ないなと思います。時間の流れがはやいせいなのか、聞く方も、で、結論は?とかこうしたほうがいいよなんていうことを言いたくなってしまうことが多いんじゃないでしょうか。みんな、知っているんですけどね、ただただ話したいとおもう瞬間があることを。だから、飲みに行ったときとかに、見ず知らずの人になんとなく話してしまった、みたいな経験があったりするのだと思います。近しい人だと、なにか言われちゃうからなんだと思います。
なんとなく最近は、いかに発信していくかに偏っているんじゃないかなと思います。この本の彼のようにいかに聞くかにも、もう少し目をむけられたら良い感じゃないかなと思いました。言いたいこと、みんなあるとおもいます。そんな心の声をそっと受け止める、それは、自分がすぐにどうこうなるわけではないですが、周りの人が少しだけ幸せになって、やがてそれが自分にもほんの少しだけまわってくるような、そんな気がしています。その瞬間にはもしかするとなにも起こらないかもしれないけれど。気づいたらきっとゆるやかな波が起こるか、優しい風が吹くのかなと思います。