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今月の1冊~2020.11

とっても忙しかった11月。
外にいることが多かったような気がします。
いろんな人と話をしたり、自然の中の空気に触れる時間が長かったりすることもあって、逆に頭の中はファンタジーというか、妄想も多かったような気がします。
たぶんこどもの時の空想の記憶がそのまま大人になったいまもわたしの中では残っていて。それが鮮やかに披露された11月でした。

読む本は数あれ、ぐっとくる1冊にはそんなに簡単に出会えない。
そんな中でも毎月1冊もしあれば2冊、自分のなかでこれは・・と思ったものの感想を書いていこうと思います。
本の要約ではないと思うので気になる方は是非ご自身で読んでください!

今月は
吹上奇譚 第二話 どんぶり  吉本ばなな著  

実は10月に第一話は読んでいて、本当はその勢いで読んでしまおうとしていたのをぐっと思いとどめて熟成していた本です。なんとなく惰性で読まない方が、、と何かの予感だったのですが11月に読めてよかったなとやっぱり思います。

昔からいろんな言い伝えのある、田舎の小さな町を舞台に、主人公と、その不思議な家族をとりまく日常が描かれています。どってことない地味な暮らしのはずなのですが、みんなちょっとずつ変わっていて、心になにかを抱えながら、絶妙な距離で支え合って生きている姿が、とっても素敵なのです。神様とか伝説とか、人間でないものを信じるのかとか、そんな世界なのですが、ほの暗く、でも明るい世界で、彼らは悩みながらひとつずつ幸せを実感していました。忙しく生き急いでいると絶対に見逃してしまいそうな小さなサインを大事にだいじに感じとっている様子が、忙しい私の手をそっと止めてくれるような、そんな本でした。

小さい頃は気づけていたことが、だんだん大きくになるにつれ気づけなくなっているなと思います。わたしにとって、この小さい頃にきづけていたことは、忙しかったりとか、何かに夢中で、気づく必要がないことなのかもしれないけれど、でもふっと肩のちからを抜きたいとき、自分の原点を確認したいときに大事なことなのです。これを説明するのは本当に難しいのですが、まさにこの本の世界のひとたちが大事にしている空気というか温度というかそんな感じのものです。探してもでてこなくて、求めたらもっと見えないもの。でも本当はいつもそばにあるもの。最近のわたしは忙しさでそれが見えなくなっていたんだと思います。だからこの本を11月に読みなさいってことだったんでしょう、きっと。考えないで、感じて。求めないで、受け入れる。その中で、自分の色を再確認するみたいな感じ。

吉本ばななさんの本は本当に大好きで、全部読んでいて、いつもちょっとだけせつなくて、あたたかな空気をわたしに運んでくれます。何もかもが良い状態じゃなくても大丈夫で、でも素敵な兆しはいつもある。そんなやわらかな希望をくれるから、スバラシイ。
大好きです。本当に。

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