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今月の1冊~2020.10

これまでの積み重ねの末、色んなことが動き出した10月。
そういえば、、、、と思い出すような何かもあったり、
久しぶりの再会を果たすことができたり。
本もなんだか意外なラインナップで読み進んだ気がします。ちょっと前だったら絶対読んでいないような本たちがたくさんあった気がします。
これまでの大切な出会いも、新鮮な出会いもどちらにも感謝する日々。


読む本は数あれ、ぐっとくる1冊にはそんなに簡単に出会えない。
そんな中でも毎月1冊もしあれば2冊、自分のなかでこれは・・と思ったものの感想を書いていこうと思います。
本の要約ではないと思うので気になる方は是非ご自身で読んでください!

今月は
私の名は赤  オルハン・パムク著  

舞台は16世紀末のイスタンブール。オスマン帝国が衰退し、まさに新しい世界になるのか?ならないのか?というような混沌とした、そして希望があるようなないような世界。そんな世界で装飾写本というものの絵画をめぐってさまざまなことが巻き起こる・・・
トルコという西洋と東洋がまじった世界で、絵画においても東洋絵画と西洋絵画の思想のぶつかりあい、宗教という思想のぶつかりあい、個人のそれぞれの想いなど色々な違いが錯綜し、人々がまさに生きていくシーンが描かれています。この状況で自分は何を信じるのか?なにを良しとするのか、そんな命題を日々突きつけられるようなそんな日々。理想もあれば欲もある。好きも嫌いも。とにかく2項対立が多い世界で、生き延びようとしている感じがリアルに描かれています。

そしてこの話にでてくる精密画という芸術。他の文化から新しいものを取り入れることを拒絶する一方で、絵師によってはひっそりと反抗をみせている、それを新しいと思うのか、それとも裏切りととるのか・・・この精密画という宇宙をめぐって、人々が思い悩み、恋をし、ねたみ、賞賛する。東西の文化の断絶と融合をめぐって、プロである絵師の葛藤が鮮やかに描かれています。
アートの端っこに携わっているものとしては、この葛藤が実にあこがれるものでもあり、悩むべきものでもあると逡巡してしまいます。自分の哲学については、ゆるぎないものとして日々なんらかの表現に挑む一方で、これではだめだ、もっと次の世界にいきたいとおもうその心こそが、この本には西洋と東洋というとてつもなく大きなサイズで描かれていました。私があの世界にいたら、何を選び取るのか、どう生きるのか。運命には抗えないとわかっていながらも、人間は死ぬ間際まで何かを求めて考え続けるのでしょうか。

オスマンの時代には想像もつかないくらい、自由に行き来でいるようになったこの世界で、改めて世界はひとつなのか、それとも断絶されているのか、そして人間は何を考え、何を求めていくのか、自分の哲学を見直していきたいと思うのでした。

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