計画的偶発性理論と認知科学コーチング
これまでの人生・キャリアを通じて、たまたま出会った偶然からチャンスに恵まれ、そのチャンスによって素敵なご縁が生まれたり、仕事の成果につながったり、更に別のチャンスにつながったりする場面が何度もありました。
これは「計画的偶発性理論」と呼ばれるもので、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの中で述べている「connecting the dots」でも同じことを言っています。
僕はいま認知科学ベースのコーチングを学んでいるのですが、このコーチング理論を活用することによって計画的偶発を積極的に呼び込むことができるのではないかと感じています。
この記事では計画的偶発性理論と認知科学コーチングについて考えてみたいと思います。
計画的偶発性理論
計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)は、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア理論で、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるため、その偶然の出来事を計画的に設計していくことが重要であるとされています。
特にVUCAとも言われる変化の激しい現代において、企業も個人も将来を見通せないと時代になっていますので、予めキャリアを計画してもその通りに進むことは非常に稀なことです。
一昔前まで、youtuberやプロゲーマーなどが職業になるとは全く想像もつきませんでしたが、このような新たに生まれる職業は予め計画することはできません。
計画的偶発性理論では、以下の5つの行動特性を持つことが重要だとされています。
1.好奇心(Curiosity):新しいことに興味を持ち続けること
2.持続性(Persistence):失敗してもあきらめずに継続すること
3.楽観性(Optimism):何事もポジティブに考えること
4.柔軟性(Flexibility):こだわらず、信念、態度、行動を変えること
5.冒険心(Risk Taking):リスクを恐れずに行動を起こすこと
常に新しいことに興味を持ち、興味を持った事にはどんどんチャレンジする。多少失敗しても諦めないし、常にポジティブ。このような行動特性を持つ人は、多くのチャンスに出会いチャンスをモノにしています。
ネットサーフィンの如く、好奇心の赴くままにチャンスからチャンスへ飛び移って、のちに後ろを振り返ってみると高みに登っているのです。
connecting the dots
「connecting the dots(点と点をつなげる)」は、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ「Stay Hungry. Stay Foolish.(ハングリーであれ。愚か者であれ)」の中で述べられたジョブズ自身のエピソードです。(スピーチの全文(英語/日本語)はコチラ)
彼はリード大学に通っていたのですが、次第に高い学費に見合う価値が見いだせなくなり半年で退学してしまいます。
退学したことによって興味のない授業を受ける必要がなくなり、興味の赴くままいろいろな授業に潜り込むようになります。
その中でも当時、全米で最も優れているといわれていたカリグラフ(西洋書道)の授業で、伝統的で芸術的な文字の世界のとりこになりました。これが10年後に最初のマッキントッシュを開発したときに役立つことになるのです。
もし彼が退学を決心していなければ、カリグラフの授業に潜り込むことはなかったし、美しいフォントを持つコンピュータは誕生しなかったかもしれません。
スティーブ・ジョブズも興味の赴くままに行動した結果、予期せぬ偶発的な出来事に出会い、いくつもの予期せぬ出来事がのちにアップル社の成功につながったのです。
彼も計画的偶発性理論の5つの行動特性を持っていたに違いありません。
予期せぬ偶発を積極的に呼び込むには?
前回の記事「マインドとゴール達成の仕組み」で認知科学ベースのコーチングについて解説しましたが、この認知科学コーチングによって予期せぬ偶発を積極的に呼び込むことができるのではないかと感じています。
ゴールを設定しない計画的偶発性理論とゴールを設定する認知科学コーチングは一見すると相反するように思えますが、ゴールを達成するためのアプローチはとても似ています。
計画的偶発性理論は予めゴールを設定するのではなく、5つの行動特性(好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心)を発揮することで、自身の好奇心に従い積極的に行動を起こし、目の前に現れたチャンスをモノにしながら、まだ見ぬゴールに必要な「点と点」を獲得していくアプローチです。
認知科学コーチングは予めゴールを設定することによって、RAS(Reticular Activating System:網様体賦活系)とスコトーマの原理によりゴールに必要な情報が認識できるようになります。
必要としている情報が認識できるようになるので目の前にチャンスが現れたようにも見えるでしょう。このチャンスをモノにしながらゴールへとアプローチしていきます。
また、ゴールは1つだけでなく仕事や趣味、人間関係、健康、家族などオールライフで設定します。
すると、趣味のゴールに向けてやっていたことが仕事のゴールの役に立ったり、人間関係のゴールに向けて構築していた人脈から仕事のオファーがあったりと、ますますチャンスに出会う頻度もあがってくるのです。
Invent on the way
認知科学コーチングでは「Invent on the way」という考え方がとても重要です。「Invent on the way」はシンプルに言えば「やりながら考える」ということですが、方法を発明しながらゴールへアプローチしていきます。
認知科学コーチングでのゴールは現状の外側に設定するので、当然のことながらゴール達成の方法やプロセスなどは想像もつかない状態からのスタートとなります。
真の欲求である「want to」で現状の外側にゴールを設定しゴールに対するエフィカシーを高めることによって、脳が非常にクリエイティブに働くようになりゴール達成への道筋がみえてくるようになります。
脳がクリエイティビティを発揮すると、ゴール達成に向けた良いアイデアがどんどん出てくるようになります。あれをやってみよう、これもやってみよう、あの人に会いに行ってみよう。
やりながら「考える」というよりも、脳が「はじき出す」ようになるのです。
計画的偶発性理論では「計画的偶発」と言っていますが、認知科学コーチングではそれを単なる計画的な偶発ではなく、脳の機能やクリエイティビティを活用することによって積極的に創造していくことができるのです。
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