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「美術館に行く感覚で」奏者視点で語る現代音楽の楽しみ方 ポイント4つ

「よく分からない」が鉄板の現代音楽。実際奏者はどのようなことを考えながら取り組んでいるのか、今回はヴァイオリニストの髙橋奈緒とソプラノの櫻井愛子のゆるい対談を通して、現代音楽をより楽しめるポイントご紹介。とっつきにくいようで実はそうではないニッチな世界の裏側を、大学同期ならではのぶっちゃけトークと共にお届けします。この記事を読んだ後、きっと知らない音楽の世界に踏み出したくなるはず!

【公演情報】
公演名:AKIYAMA Quartett the first concert
日時:2021年9月18日(土)14時開演(終演予定時刻: 16時)
場所:早稲田奉仕園スコットホール(東西線 早稲田駅から徒歩5分)
入場料:3000円(全席自由)購入リンクはこちら

秋山カルテット2021チラシ表_page-0001

秋山カルテット2021チラシ裏_page-0001

この演奏会のきっかけについてはこちらをご覧ください→楽譜は本番5日前に完成?!奏者の現代音楽との出会いから新曲初演時のドタバタエピソードを大暴露

ポイント① 音色の違いを楽しむ

髙橋奈緒(以下髙橋):学部4年の時に、五嶋みどりさんの現代音楽のマスタークラスを受講して、その時サントリーホール大ホールで秋山君(作曲家・ピアニストの秋山友貴)とサーリアホ(カイヤ・サーリアホ、フィンランドの現代音楽の作曲家)を演奏したのですが、それが本当に思い出深いです。そのマスタークラスは五嶋みどりさんの3日間の演奏会シリーズの一環で、私はすべてのコンサートに通ったのですが、とにかく説得力に圧倒されました

櫻井愛子(以下櫻井):説得力ってどういうことですか?

髙橋:何というか、例えば一曲ずつの音色が全然違って。音色に差をつけることって非常に難しいのですが、その違いに驚きました。「え、これ本当にヴァイオリンの音なの?」って思うほど。機械のような音だったり、動物の鳴き声や人間の声、、、地球上で使われている言語とはまた違うもので会話しているようにも感じました。

櫻井:聴いていて飽きないという感じですか?

髙橋:そうです。

ポイント② 演奏している動きを楽しむ

髙橋:あとビジュアルもかっこ良かったです。五嶋みどりさんが舞台に立っだけで、その空間にいる人を惹き付けて離さないというか。そもそも根本的に持っている音色の美しさは大事だと思うのですが、その上で、興味を引かれる佇まいなんです。もうなんだか、演奏してる動きが面白い、ダンスを見ているような気分になりました。

櫻井:五嶋みどりさん、やっぱりすごい!生Midori、とっても羨ましいです。


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【ちょこっと紹介:五嶋みどり】
現代におけるトップヴァイオリニストの一人。多彩な演奏活動の傍ら社会貢献にも余念がなく、その生き様はとにかくスーパーかっこいい。「題名のない音楽会」で司会を務めていた、マッチョすぎていつもスーツがパツパツのヴァイオリニスト、五嶋龍は異父弟。

ポイント③ 「分からない」でOK、空気感を何も考えずただ楽しむ

髙橋:現代音楽って、音の感触や空気感を自由に楽しめるところが魅力ですよね。調性音楽(注:何調なのか判別することができる音楽)は、やっぱり和声・旋律・リズムの所謂音楽の三大要素に支配されるところが大きいと思うんです。現代音楽は和声はじめそのような学術的な枠から外れて、100人100通りの感じ方ができると思っています。

櫻井:でも、やっぱりどうしても現代音楽を「自由に聞く」って難しいですよね?

髙橋:いきなりですが、音楽って絵画に通ずるものがあると思うんですよね。私は美術館巡りが好きでよく足を運ぶのですが、できるだけ予備知識を入れずに行くときもあります。シーンとした静かな空間で、作品そのものを楽しむために。ただ絵を眺めて「綺麗な色だな」とか「なにこのザラザラ」という率直な感想や、「なんだか切ない」とか「楽しそう」といった、自然に湧き上がる気持ちを汲み取る。そして帰りに気に入った絵のポストカードを買って、ちょっとカフェに寄り道して余韻に浸る。現代音楽も同じように楽しむことができるのではないかなと考えています。音の美しさやテクスチャー、声と楽器の音色の拮抗や混ざり合いを感じたり、、などなど楽しみ方は本当に様々です。感じ方は人ぞれぞれ、答えはありません。そこがまた面白いところだと思います。

ポイント④ どのような演奏会を目指しているかを知る

櫻井:やっぱり現代音楽聞くときは、大抵「よく分かんない」ってなって、それがずーっと続くから苦痛だったりするって誰かに言われたことがあります(笑)

髙橋:今回のコンサートは、無調(何調か判断できない曲)だけじゃなくて、調性音楽も多く取り混ぜたプログラムになっていますよ!!

櫻井:普段無調の曲を聴くことはそうそうないと思うから、知らない音楽をつまみ食いする感覚で楽しんでいただきたいですよね。ちょっとずつ、聴く人の心の中に眠っている感性を呼び起こすような演奏会にしたい。分からないなりに、「面白い」って思ってもらえるような演奏ができるように頑張ります。

髙橋:私は音から匂いや色、手触りが感じられるような音楽を紡ぎたいと思っています。


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【ちょこっと紹介:カンディンスキー《印象Ⅲ(コンサート)》】
この絵はロシア出身の画家ワシリー・カンディンスキー(1866~1944)がオーストリアの近代作曲家A. シェーンベルクの音楽に触れた感動を表したもの。カンディンスキーは絵で主題やモチーフといった具体的な対象物の造形を示すことをやめて、点、色彩、形、線といった要素のみを描き、対象物の美を無添加に表現することを目指した。

(編集:櫻井愛子、髙橋奈緒)


これからのコラムでは、9月18日の演奏会を更に楽しんでいただけるような内容を随時更新予定です。お楽しみに!

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